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アメリカ国家安全保障会議、AIの軍事への積極的な活用をアピール「人間よりも誤判断が少ない」

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

「倫理的な命令と判断が必要」

 アメリカ国家安全保障会議のAI(人工知能)に関する会合(The National Security Commission on Artificial Intelligence:NSCAI)は2021年1月に軍事におけるAI活用に関するレポートのファイナルドラフトを発表した。今後もAIの軍事への積極的な活用によって、アメリカ軍の優位性を高めるべきだと訴えていた。

 またオンラインで開催されたパネルディスカッションにおいても自律型殺傷兵器の危険性と利便性を考慮しながらも積極的に開発を進めていくべきだと議論がされていた。自律型殺傷兵器は人間の判断を介さないで標的を認識して、AIを搭載した兵器が判断して標的に攻撃を行う。パネルディスカッションには元GoogleのCEOのエリック・シュミット氏やロバート・ワーク元国防副長官らが参加。ロバート・ワーク氏は「AIを搭載した兵器は精確で人間の軍人よりも誤判断が少ないです。また標的の誤爆による人的被害や、誤爆による標的対象国との小競り合いが減少します。もちろん倫理的な命令と判断が必要になります」と語っていた。

 AI技術の軍事分野での活用で、自律型の兵器の開発は進んできている。人間の判断を介さないでAI技術を搭載した兵器自身が判断して標的に攻撃を行うことが非倫理的であると国際NGOや世界の30か国が自律型殺傷兵器の開発と使用に反対を訴えている。アメリカは反対していないで、むしろ積極的に自律型の兵器の開発を進めており、すでに海軍などがいくつかの兵器のプロトタイプも公開している。今回のパネルディスカッションでも自律型殺傷兵器の開発には反対しないで積極的に進めていくことを明言している。

 ロシアも軍事へのAI活用は積極的である。中国は自律型殺傷兵器の使用には反対しているが開発には反対していない。アメリカとしてはAIの軍事活用を積極的に進めることによって他の大国への抑止力にもつなげる必要がある。

 今回のアメリカ安全保障会議での議論について、キラーロボット反対キャンペーンのメリー・ウェレハム氏も「アメリカは自律型殺傷兵器開発に反対すべきです」と訴えていた。

▼アメリカ国家安全保障会議のAI(人工知能)に関するパネルディスカッション

▼今回のアメリカ安全保障会議でのパネルに異議を唱えるキラーロボット反対キャンペーンのメリー氏のツイッター

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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