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ロシア軍事高等研究財団「未来の戦争の兵器」としての自律型戦車「Marker」新モジュール公開

佐藤仁学術研究員・著述家
「Marker」(ロシア軍事高等研究財団提供)

ロシア軍事高等研究財団は2020年12月に「Marker(ロシア語ではМаркер)」と呼ばれる自律型戦車の新たなモジュールを公開した。ロシア軍事高等研究財団では2019年に既に自律型戦車「Marker」による戦闘イメージの動画を公開していた。無人の戦車が戦場で、自律的に標的を攻撃する映像だった。

「Marker」(ロシア軍事高等研究財団提供)
「Marker」(ロシア軍事高等研究財団提供)

「Marker」(ロシア軍事高等研究財団提供)
「Marker」(ロシア軍事高等研究財団提供)

 そしてこの度、新たな「Marker」のモジュールを公開した。新たな自律型戦車はロシアのチェリャビンスクの雪道で30キロの試験走行を行った。同財団によると、自律型戦車は森の中、渓谷、茂みの中のような障害物がある場所でも周囲の環境に応じて自律して動くことができる。そしてロシアは無人で自律型の「Marker」を"未来の戦争の兵器"として位置づけている。

  AI(人工知能)技術の軍事分野での活用は進んでおり、人間の判断を介さないで兵器が判断して標的を攻撃する「キラーロボット」と称される自律型殺傷兵器の開発も進んでいる。人間の判断を介さないで標的や人を攻撃して殺傷することが非倫理的、非人道的であると国際NGOやAI研究者、一部の国などが自律型殺傷兵器の開発と使用には反対している。

 ロシアやアメリカなど超大国は自律型殺傷兵器の開発や使用に反対していない。中国は使用することは反対しているが開発には反対していない。自律型殺傷兵器はまだ実際の戦場で使用されたことはない。ロシアは自律型殺傷兵器を「未来の戦争の兵器」として位置づけているが、超大国にとっては自律型殺傷兵器の所有は、核兵器の所有と同じように相手に対する抑止力にもなるから、実際に戦場で使用しなくとも開発は行っていくだろう。そしてアメリカやロシア、中国といった超大国だけでなく、イスラエルや韓国など他の国でもAI技術を活用した自律型殺傷兵器の開発は進められている。

▼ロシア軍事高等研究財団が公開している自律型戦車「Marker」の戦闘イメージ動画

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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