南カリフォルニア大ショア財団「ホロコースト生存者と死後でも対話」フロリダホロコースト博物館に提供
第二次世界大戦時にナチスが約600万人のユダヤ人を殺害した、いわゆるホロコースト。現在でも欧米やイスラエルなどではホロコーストの悲劇を繰り返さないため、またホロコースト教育を行うためにホロコースト博物館が多く設置されている。アメリカのフロリダ州にあるホロコーストセンターは南カリフォルニア大学ショア財団と連携してフロリダのオーランドにあるホロコースト博物館での展示コンテンツ製作を行っていくことを明らかにした。南カリフォルニア大学(USC)にあるショア財団は、ホロコーストを題材にした映画『シンドラーのリスト』の映画監督でユダヤ人のスティーブン・スピルバーグが寄付して1994年に創設された。ショア財団ではホロコースト時代の生存者の証言のデジタル化やメディア化などの取組みを行っている。戦後70年以上が経過し、ホロコースト生存者の高齢化が進み、当時の記憶も薄れていき、体力的にも証言を取るのが難しくなってきており、これまでにも多くの証言を集めて来たが、今後あと10年が勝負である。
ホログラムで永遠にホロコーストを語り継いでいく
また南カリフォルニア大学ショア財団ではホログラムでの生存者とのインタラクティブな対話の技術開発にも積極的で、同大学ではこの取組を「Dimensions in Testimony」プロジェクトと呼んでいる。ホロコースト生存者がホログラムや3Dで目の前に現れて、AIによってインタラクティブにホロコースト時代の体験について質問に答える仕組みだ。あたかも、目の前にホロコーストの生存者がいるように、質問に対してリアルタイムに答えらえれる。「ホロコースト時代をどう過ごしていたの?」などといった学生や見学者からの質問にホログラム化された生存者がリアルタイムに回答してくれる。ホロコーストの生存者らが高齢化しても、亡くなってからでも、ホログラムで登場して未来の世代にホロコーストを語り継いでいくことができる。今回のフロリダのホロコースト博物館でも提供を予定している。
ロサンゼルスにあるスタジオで18台のカメラであらゆる角度からホロコースト生存者らを撮影してホログラムは製作される。撮影も1週間以上で1000問以上の質問が繰り返される。そのためホロコーストの生存者の誰でもがホログラムで記憶をデジタル化することができるわけではなく、撮影にも相当な体力を要する。また製作コストも1人のホロコースト生存者を撮影して3Dとホログラムで表現するために250万ドル(約2億7000万円)かかる。それでも、ホロコースト経験者の記憶と体験を未来に語り継いでいくために、欧米のユダヤ人らは積極的にホロコーストの記憶のデジタル化を進めようとしている。
進むホロコーストの記憶のデジタル化
今回のフロリダでのホロコースト博物館でのコンテンツ製作での協力についてショア財団のシュテファン・スミス氏は「ホロコースト生存者らの辿って来たストーリーを共有していくことは重要です。ホロコースト生存者の証言と彼らのストーリーの共有がホロコースト教育にとっても最も効果があることが最近の研究でわかってきました」とコメント。
またフロリダのホロコースト博物館のパメラ・カンチャー氏は「南カリフォルニア大学にコンテンツ製作で協力して頂くことによって、世界中の何百万人もの生徒、先生、学者らがホロコースト教育のリソースにアクセスできるようになり、ホロコーストを次世代に伝えていくことができることを嬉しく思っています」と語っている。オーランド市長のバディ・ダイヤー氏は「オーランドは人権と正義を重視するコミュニティです。ホロコーストの悲惨な歴史とそれを経験した人々のストーリーを次世代に伝えていくことは私たちの市にとって重要な役割となります」と語っていた。