米英イスラエルのサイバー機関とテルアビブ大学、コロナ時代のサイバーセキュリティを議論:同盟の重要性

(写真:ロイター/アフロ)

 アメリカの国家安全保障局(NSA)とイギリスの国家サイバーセキュリティ・センター(NCSC)、イスラエルの国家サイバー総局(INCD)、イスラエルのテルアビブ大学の代表者4人が2020年8月に新型コロナ時代の新たなサイバー攻撃の脅威についてオンラインで議論を行った。

 イスラエルINCDのインガル・ウンナ氏は「新型コロナウィルスが感染拡大しており、ハッカーたちもリアルの世界で外出しないようになり、パソコンの前に座ったままで、ますますサイバー空間へ侵入しようとしています。イスラエルは公共機関も民間セクターもサイバー攻撃の脅威に晒されており、重要インフラがサイバー攻撃の標的にされることが多くなってきています」と語っていた。

 アメリカNSAのアンネ・ネウバーガー氏は「サイバー攻撃を仕掛けてくる敵がどのような目的をもって、何を標的にして、どういう攻撃を仕掛けてくるかを理解することが重要です。そして様々なサイバー攻撃の種類がありますが、それぞれの攻撃や犯罪が国民に対してどのような被害をもたらすのかを理解することが大切です。NSAではタイムリーにサイバー攻撃の脅威の情報を提供して、防衛に関する技術的なアドバイスもしています。またアメリカではNSAは国土安全保障省(Department of Homeland Security)とFBIとも綿密なコミュニケーションをしてサイバー攻撃の脅威に関する情報交換を行っています。サイバー攻撃対策では産業などセクター間の信頼関係も大切です。アメリカでは選挙関連の機関や組織へのサイバー攻撃は、重要インフラと同じ位置づけになっています」とアメリカ大統領選挙に向けてのサイバー攻撃も交えて語っていた。

 英国NCSCのシアラン・マーティン氏は「新型コロナウィルス感染拡大に伴って外出禁止で在宅勤務も増加し、多くの人がネットに接続するようになりました。それに伴ってサイバー攻撃やサイバー犯罪も増加していますが、国民がサイバー犯罪やセキュリティの技術的なことにパニックにならないようにすることが大切です」と語っていた。

 テルアビブ大学のサイバーディレクターを務めるベン・イズラエル氏は「市民のためのサイバー防衛はインテリジェンス機関や軍事、安全保障部門、法律機関が行うべきではないと思います。なぜなら多くの市民はそのような組織や機関を信用していないからです。特に新型コロナウィルス感染が拡大して、多くの人がスマホでネットにアクセスしている現在では、新型コロナウィルス関連で人々の心の隙間を狙うような心理的なサイバー攻撃、サイバー犯罪の対応が重要になります」と語っていた。

重要なサイバー同盟

 アメリカ、イギリス、イスラエルはサイバーセキュリティにおいても連携している。いわゆるサイバー同盟である。特に今回の議論でも英国NCSCはイスラエルからサイバーセキュリティの戦略について多くのことを学び、イスラエルのサイバーセキュリティ対策を高く評価していた。アメリカ、イギリス、イスラエルは各国でほぼ同等のサイバー能力を保有している。また基本的に民主主義という価値を共有している。「安全を確保するためには自己強化が、それが不可能な場合、同盟の形成が必要になる」と政治学者のケネス・ウォルツは述べている。

 これはサイバーセキュリティにおいても同じである。サイバースペースの安全保障の維持と強化は一国だけではできない。サイバー攻撃はどこから侵入してくるかわからない。自国のサイバースペースを強化するのは当然のことだが、自国だけを強化していてもネットワークでより緊密に接続されている同盟国や他の国々を踏み台にして侵入されることがある。そのためにも、安全保障協力の関係にある同盟国の間でサイバースペースにおける「弱い環」を作ってはいけない。そのため多国間で協力しあいながら、相互でネットワークの強化、サイバー攻撃対策の情報交換、人材育成に向けた交流などを行っていく必要がある。マルウェア情報やサイバー攻撃対策の情報交換だけでなく、平時においてもこのようなパブリックでの議論を行うことも信頼醸成に繋がるので重要である。