アメリカ軍、AI搭載のロボット戦車開発へ:攻撃の判断は人間
アメリカ陸軍研究所 (United States Army Research Laboratory:ARL)はAIを搭載し、標的の確認、情報収集、偵察、人間の指示によって攻撃ができるロボット戦車の開発をしていることを明らかにした。現在、開発中のロボット戦車のコンセプトはAIを活用して、人間の軍人が攻撃の判断を行うための情報収集や偵察を行っていくこと。高度なAIのアルゴリズムと搭載されたセンサーで人、画像や障害物などを認識し、ロボット戦車がほぼリアルタイムに分析が行えるようになる。具体的な導入時期は明らかにしていない。
アメリカ陸軍研究所のBrandon Perelman氏はFox Newsのインタビューで「アメリカ陸軍は、人が操縦する戦車と周囲の状況に応じて半自動で動くロボット戦車を配備していく。人が操縦する戦車は小型から大型まであり、将来的には様々なサイズのロボット戦車を組み込んでいく予定だ。我々は人間の知性の力とAI技術力を活用して新たな相互作用を発揮していく。ロボット戦車では人間が乗っていないので、戦場で軍人を保護する心配をしなくても良い。AIを搭載したロボット戦車による戦いは従来の人間同士での戦いとは全く異なる。今までは人間の軍人同士のチームメイトだったが、これからは軍人とAIでチームを組んで戦いに挑んでいくことになる」と語った。
AIの発展によって、人間の判断を介さないでAI自身が判断して標的を攻撃する自律型殺傷兵器の開発が懸念されているが、アメリカ陸軍研究所が開発しているAIを搭載したロボット戦車は、攻撃に際しての判断は遠隔地でロボット戦車からの情報を元に人間が判断して行う予定。「キラーロボット」とも称されるそのような自律型殺傷兵器は、人間が判断しないでロボットが判断して一般市民(非戦闘員)を殺すこともあるので道徳・倫理的な観点から開発しないようにとNGOらが呼びかけている。
軍事分野におけるAIの活用は進んでおり、今回のアメリカ軍が開発しているロボット戦車も、人間の軍人は戦車に乗っていない。Perelman氏が述べているように、戦場で戦闘に巻き込まれた軍人の保護が不要になる。そのため、軍人の「人間の安全保障」は確保されるようになる。アメリカでは戦場から帰還した軍人が社会復帰できずに社会課題になっているが、戦場に行く軍人の数が減少すれば、そのような問題も低減されるだろう。軍事分野におけるAI技術の普及は、従来の戦争の形態と人間の安全保障の枠組みを大きく変えようしている。