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台湾総統選、韓氏:出生率が低い台湾では自律型兵器が抑止にもつながりうる

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

 2020年1月11日に中華民国(台湾)で総統選挙が行われる。2019年12月に民主進歩党の蔡英文氏、中国国民党の韓国瑜氏、親民党の宋楚瑜氏の3候補でのディベートが行われた。議論の焦点の1つに対中国との安全保障問題が上がった。

 その中で、韓国瑜氏は「台湾にとってのプライオリティは戦争を回避することであり、平和では誰も敗者にならないように、戦争でも誰も勝者にはならない」と訴えた。そして「台湾は出生率が低いという問題に直面している。そのためにも台湾は効率的に運用ができるスマートな自律型兵器の開発と導入が必要となり、それらが中国に対する抑止力につながりうる」と語った。

 台湾は世界でも出生率が低く、少子高齢化は日本以上に深刻である。そのため、人間の兵士(軍人)のリソースには限界がある。海峡を挟んだ大国と対峙しなければならない台湾としては、人間の兵士だけに国家の安全保障を依拠することは難しくなる。人間と違って長時間働いても疲れない、文句を言わないAI(人工知能)を搭載した自律型兵器を効率的に運用することが求められるだろう。そしてそのような兵器は使用方法や規模によっては、敵に対する抑止力にもつながる可能性も高い。抑止とは相手が攻撃してきた場合に、自分がそれに対して十分反撃する能力を持ち、相手にダメージを与えることができることを示せるもの。そうすれば、相手は自分に対して攻撃をしてこない。

 あらゆるデータや情報を収集して強化学習を通じてAI開発を推進している中国はアメリカと並んでこの領域では強国である。まだ実戦で活用されていない自律型兵器が、果たして台湾にとって抑止になりうるかどうかは不明である。また、人間の判断を介さないでAIを搭載した兵器やロボットが自ら判断して標的を攻撃することに対して倫理的な観点から反対する声も大きい。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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