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乙武氏「歩きスマホ」に言及「車椅子は構造上、真横の動きが苦手」

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:アフロ)

 駅でも道路でもあらゆるところで、多くの人がスマホを操作しながら歩いている、いわゆる「歩きスマホ」。2018年4月に、乙武洋匡氏が自身のTwitterで以下のような投稿をしていた。

 乙武氏は、車椅子の構造を説明。真正面から「歩きスマホ」をしている人が来ても「危ない!」と声で注意するしかないにもかかわらず、そのたびに不愉快な想いをしているとのこと。

視野が極端に狭くなり、自己中心的になる「歩きスマホ」

 「歩きスマホ」をしている人たちは、スマホでニュースやLINE、FacebookやTwitterのチェック、動画や音楽の視聴、ゲームなどをして、スマホの画面ばかり見ながら歩いている。特にスマホは文字や画面を簡単に大きく出来ることから年配の方でもスマホを見入って歩いている人が多い。

 「歩きスマホ」は自分が思っている以上に、視界が極端に狭くなる。そもそも神経も目もスマホの画面に注意しているので、周囲がほとんど見えてない。また視界が狭くなっているだけでなく、スマホの中のニュースやLINE、Facebook、動画などに夢中になっており神経がスマホの中に集中しているので、咄嗟の判断ができない。そのため自分の前に突然、障害物や人が現れるとぶつかって、自分が怪我をしたり、相手に怪我をさせてしまうこともある。車椅子の人以外にも、例えば高齢者や視聴覚障碍者にぶつかり加害者になってしまう恐れもある。特に視聴覚障碍者の方は目の前から来る人が「歩きスマホ」をしているかどうかはわからないので、避けることもできない。

「自分だけは絶対に大丈夫」はない

 さらに「歩きスマホ」をしている人は『自分はスマホの中のニュースやLINE、動画視聴で忙しいんだから、あなたが道を空けて』と自己中心思考になりやすいので、「歩きスマホ」をして自分が相手にぶつかっても、相手が邪魔で悪いと勝手に思い込んでしまい、イライラしてしまう傾向がある。そのため乙武氏が指摘するように「チッ」という顔をする。「歩きスマホ」をしている人は自己中心的な思考でスマホの中の世界に没頭している。それを突然、さえぎられるので、目の前に車椅子の人や視覚障碍者、高齢者が現れてもそのような態度をとりやすい。他者への思いやりや想像力など「歩きスマホ」している時には考えることができない。

 「歩きスマホ」をしている人が、向こうからぶつかってきたのに舌打ちされた経験を持っている人もいるだろう。駅や車内での乗客同士のトラブルに発展してしまう。

 それだけでなく実際には視界が狭くなっているにもかかわらず『自分は絶対に大丈夫、スマホを見ているけど、ちゃんと周囲も見えている』と思っている。これは完全な思い込みだ。

 ここ数年、鉄道会社や携帯電話事業者が「歩きスマホ」の注意喚起をしてきたが、一向に減らない。むしろ増加している。事故やトラブルに巻き込まれたり、加害者になってしまうまで「歩きスマホ」はやめられないのだろう。だが、線路に落ちて事故になったり、相手に怪我をさせて加害者になってしまってからでは遅い。決して「歩きスマホ」では『自分はしっかり見えているから安全』『自分だけは大丈夫』ということはない。他者への思いやり、想像力を持ちたいものだ。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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