イスラエルのサイバーセキュリティ:SNSに写真が大量にアップされている時代の「アンチ顔認識」

D-IDのMascha Blender氏とCEOのGil Perry氏

 2018年5月には安倍首相がイスラエルを訪問。「靴のデザート」ばかりが話題になっているが、日本はイスラエルとサイバー攻撃対策をはじめとする産業分野のサイバーセキュリティ強化や技術革新分野で協力を推進している。

 イスラエルは世界有数のサイバーセキュリティの先進国で、サイバーセキュリティ産業は同国にとっても重要な輸出産業の1つだ。そのイスラエルからサイバーセキュリティに関するサービスや製品を提供している企業が2018年5月に東京で開催された「Japan IT Week」(情報セキュリティExpo)に集結した。

 現地のイスラエル輸出国際協力機構(The Israel Export & International Cooperation Institute:IEICI)が選出した14社の企業が今年も出展した。IEICIはイスラエル企業との事業提携や海外進出などの窓口になっており、サイバーセキュリティ専用のセクターもある。

顔認識技術から身元を保護

 今回、出展していたイスラエルの企業の中でも目を引いたのが「D-ID」だ。同社は生体認証データベースを保護する技術を保有する企業で2017年1月に設立されたばかり。目に見える変化を加えることなく、写真や動画を顔認識アルゴリズムから保護する技術を提供。

 現在、多くの企業などが顔認証でビルや組織への入退館などを行っており、「個人の顔」が認証のパスワードになってきている。一方で、SNSなどであらゆる写真がアップされており、ネットには個人の顔写真があふれている。それらの写真はオープンなものが多く、SNSには会社名から卒業した学校、家族構成なども細かく書いており、誰でも見ることができる設定にしていることが多い。それらの写真を勝手に活用して、顔認識技術で各企業の従業員の偽IDを作られてしまったり、写真データベースを書き換えられてしまうこともありうる。個人の顔は、機密性の高い情報の1つだ。同社では銀行や保険会社などの顧客の写真、病院の患者、各企業の従業員の写真などが書き換えられたり、顔認証で悪用されないようにするための生体認証データベースを保護する技術を提供しているそうだ。「情報としての顔認証、写真の保護は日本でも確実に重要になってくる。当社が提供するのは『アンチ顔認識』、簡単に顔認識されないための技術」とD-IDのMascha Blender氏は述べていた。

イスラエルのサイバーセキュリティを支える8200部隊ではSNSへの写真アップは禁止

 同社のCEOのGil Perry氏はイスラエル参謀本部でサイバー諜報活動やサイバー攻撃・防衛を担っている8200部隊の出身者だ。他にも同社の共同創業者はみな8200部隊出身だ。イスラエル軍の中でも精鋭のサイバー部隊で、8200部隊出身者の多くがサイバーセキュリティやAIなどの分野で起業している。イスラエルでは高校卒業後に兵役の義務があるが、優秀な上位1%のみが8200部隊に配属されるそうだ。配属の際にはプログラミングや数学、ハッキング技術、語学などが優秀な成績である他にチームワーク、協調性、リーダーシップなど人間的な面でも評価される。イスラエルの多くの家庭では、この8200部隊に配属されるためだろうか、子供たちに数学などを必死に勉強させる。イスラエルのサイバーセキュリティ産業を支えている多くが8200部隊の出身者だ。

 同社でも8200部隊での経験と培った技術力が活かされているようだ。なお8200部隊では、FacebookなどSNSへの写真のアップを禁じられていたそうだ。D-IDのMascha Blender氏は「FacebookなどSNSに多くの写真がアップされているが、多くの人がSNSへの写真のアップが危険だということに気が付き始めている」と語っていた。

D-IDのMascha Blender氏とCEOのGil Perry氏(イスラエルブースにて)
D-IDのMascha Blender氏とCEOのGil Perry氏(イスラエルブースにて)