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オランダ、世界初「音楽が流れる道路」住民からのクレームで撤去

佐藤仁学術研究員・著述家
(BBC)

スピード違反の抑止に期待されていたが

 オランダのフリースラント州の道路沿いに、自動車のスピード違反への注意勧告のために音楽が流れた。時速40マイル(約65キロ)を超えて走る自動車が通過すると、フリースラントの州歌が流れる。音楽を聞いたドライバーが「スピードを出し過ぎている」ということに気が付いて、速度を落とすというものだった。

 フリースラント州のインフラ文化大臣のSietske Poepjes氏は「この道路は、同州のレーワンデルン市が2018年の欧州の文化都市に指定されたことをプロモーションするために導入した」と述べていた。

 世界初の「音楽が流れる道路」として注目されていた。本当に音楽によって、自動車は速度を落とすのか、効果があるのだろうかと結果も期待されていた。

効果が出る前に近隣住民からのクレームで撤去

 だが、この世界初の試みだった「音楽が流れる道路」は自動車の速度低下の効果よりも先に、近隣住民からのクレームが多く、撤去されることが決まった。たしかに動画を見ると、音楽はうるさい。近隣住民にとっては音楽というよりも騒音だ。道路では24時間、自動車が通るので、深夜にも音楽が流れる。

 しかもスピードを出している自動車は、この音楽(騒音)を避けるために余計にスピードをあげるようだ。近隣住民は眠れないと言っている。自動車でスピードを出している人に気がつかせることが目的だから、音量も大きい。住民にとっては常時、大きな音楽を聞かされたら堪らないだろう。

 導入と撤去の費用が合計で8万ユーロ(約1000万円)かかったとフリースラント州のスポークスマンは述べている。同時に「これはドライバーがどのような反応し、速度低下するか実験するものだった。でも私自身が近隣住民だったら、たしかに不快だ。撤去したので、再び静かな街になる」ともコメント。「音楽が流れる道路」、導入前に住民からのクレームは予想できなかったのだろうか。

▼世界初のオランダでの「音楽が流れる道路」と撤去を報じるイギリスのDaily Mailニュース

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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