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SNSでの「反ユダヤ主義の表現」30%増:世界ユダヤ人会議が調査『デジタル世界を安心な場所に』

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

 世界ユダヤ人会議(World Jewish Congress :WJC)が2018年1月のソーシャルメディア(SNS)における「反ユダヤ主義の表現」の調査を行った。「反ユダヤ主義の表現」とは、ナチスドイツを礼賛したポーズや写真、ホロコースト否定などの表現が含まれる。ホロコーストとはナチスドイツ時代に欧州のユダヤ人やロマら600万人以上を殺害したこと。

 調査結果によると、2016年1月に比べると、SNSでの「反ユダヤ主義の表現」が30%増加したことが明らかになった。1月27日が「国際ホロコースト記念日」であることから、1月は「反ユダヤ主義の表現」がSNSでも増加しやすい時期だ。

 2018年1月1日から24日の間に1日平均して108件のホロコースト否定の投稿を確認。ホロコーストを完全否定し、それらはユダヤ人による誇張だという投稿は2600件あった。また13200件のヒトラーやナチスのシンボル画像が投稿されていた。Facebook、インスタグラム、YouTubeでの「反ユダヤ主義の表現」は減少しているが、Twitterとブログは増加している。特にTwitterでの増加が著しい。

 

 SNSへの「反ユダヤ主義の表現」の投稿が多かったのはアメリカで、特にホロコースト否定の投稿が多かった。昨年末にトランプ大統領がイスラエルの首都をエルサレムと認定してからは確かにそのような表現が目立った。ドイツでのネオナチの画像や投稿は減少したが、ポーランド、スイス、セルビアでのネオナチ礼賛の投稿は増加していた。

「デジタル世界が誰にとっても安心・安全な場所にしていきたい」

 世界ユダヤ人会議のCEOのRobert Singer氏は「オンライン上では反ユダヤ主義の表現が簡単に拡散されるため、誰も信じてしまいがちだ。些細なことでも、それらが拡散していくことの問題を考えると恐ろしい」とコメント。

 また同氏は「現在は誰もがFacebook、Twitter、YouTubeを利用している。これら企業がヘイトスピーチに対して積極的に対応していく必要がある。各国の政府にも訴えて、デジタル世界が誰にとっても安心・安全な場所にしていきたい。SNS企業に迅速な対応を期待したい。世界ユダヤ人会議としては、ヘイトスピーチ関連の投稿は警察沙汰にしたくない。SNS企業はヘイトスピーチの投稿の監視と削除だけでなく、市民への啓発活動の義務もある。もう二度と恐怖を繰り返してはならない」と訴えた。

SNSで発覚された「反ユダヤ主義の表現」(世界ユダヤ人会議資料より)
SNSで発覚された「反ユダヤ主義の表現」(世界ユダヤ人会議資料より)
学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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