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自転車大国のオランダ、2019年に「自転車スマホ」禁止へ

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:アフロ)

神奈川県川崎市、「自転車スマホ」で衝突し77歳女性死亡「ぶつかるまで気付かなかった」

 昨年末に、神奈川県川崎市で、電動式自転車に乗りながらスマホ操作をしていた20歳の女子大生が、歩行中の77歳の女性と衝突、歩行者が死亡するという痛ましい事故が発生した。警察は女子大生を書類送検した。いわゆる「自転車スマホ」だ。しかもイヤホンをしながら、左手にスマホで、右手には飲料カップを持っていたようだ。

 「歩きスマホ」だけでなく、自転車運転中のスマホ操作「自転車スマホ」も非常に危険である。「自転車スマホ」をしている人も「歩きスマホ」と同様に、自転車を運転しながらも、気持ちはスマホの中のメールやSNS、ゲームまたはイヤホンの音楽にいっている。

 自転車に乗りながらのスマホや携帯電話の操作、いわゆる「自転車スマホ」は道路交通法や都道府県の条例でも明確に禁止されており、罰則も定められている。だが「自分だけは大丈夫。周囲がちゃんと見えているから問題ない」と自己中心的な思考に陥っていることが多いのか、日本では「自転車スマホ」をしている人を多く見かける。そして「自転車スマホ」でも「自分だけは大丈夫」ということは絶対にない。

オランダ、2019年に「自転車スマホ」禁止へ

 オランダ人にとって「生活の足」とも言えるのが自転車だ。オランダでは子供からお年寄りまで多くの人が自転車で通勤・通学をしている。町中のあらゆるところに放置された自転車も問題だが、「自転車スマホ」も問題になっている。オランダでは12歳から21歳までの3人に1人が自転車に乗りながらスマホの操作をしており、25歳以下の自転車事故の20%が「自転車スマホ」によるものだという調査結果もある。

オランダでの「自転車スマホ」禁止キャンペーン(World highways)
オランダでの「自転車スマホ」禁止キャンペーン(World highways)

 

 そのオランダでも「自転車スマホ」禁止に向けた動きが出ている。運輸水利管理省のCora van Nieuwenhuizen大臣が中心となって法案を作成しようとしている。法案が可決されるとオランダでは2019年から「自転車スマホ」が禁止になる予定。具体的な罰則などは明らかにされていない。同省では法案の調整以外にも、警察や社会セクターと協力して「自転車スマホ」禁止に向けたキャンペーンなどを行っている。

 オランダの自転車協会Fietsersbondは「自動車の運転時のスマホ操作は既に法律で禁止されているのに、3人に1人の運転手がスマホ操作をしている。法案が作成されたからといって、本当に『自転車スマホ』がなくなるとは思えない」と懐疑的だが、そのくらいオランダでも自転車に乗りながらのスマホ操作が多い。同協会によると、特に若者は自転車に乗りながらスマホの地図やナビゲーション機能を見ているとのこと。

▼オランダユトレヒトの通勤・通学時の自転車ラッシュ風景(BicycleDutch)

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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