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Google、インドの鉄道駅での無料Wi-Fiに有料プランも検討:24時間利用で40円

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

 Googleは2015年9月に、インド全土の400の鉄道駅に無料Wi-Fiを敷設することによって、インド人が高速インターネットへのアクセスを可能にすることを発表。同社ではそのプロジェクトを「Google Station」と呼んでおり、インド鉄道と通信事業者Railtelと協力して、実際に無料Wi-Fiを計画通りに敷設している。2016年には、主要な100駅でWi-Fiを敷設。2017年末までに、227駅でWi-Fiの敷設が完了し、2018年末までに400駅全てに敷設予定。またGoogleはインドでは駅だけでなくカフェなどでも無料Wi-Fiを提供している。

30分までは無料で、その後は速度制限へ

 現在はGoogleはインドの鉄道駅で無料でWi-Fiを提供しているが、今後有料プランも検討しているようだ。Googleが現在検討しているプランは、30分まで無料で利用が可能で、30分以降は減速する。いわゆる速度制限だ。無料プランでは広告が表示される。速度制限を気にしなければ、無料で利用し続けることが可能。

 有料プランであれば、時間に関係なく無制限に同じスピードで利用ができて、広告が表示されない。24時間利用で19ルピー(約40円)と1週間利用で149ルピー(約300円)のプランがある。

(Redditより)
(Redditより)

「有料プランで持続可能なWi-Fiサービスを提供する」

 Googleインドのスポークスマンも「現在、有料プランについては、テスト段階。だが無料プランは継続していく。計画の当初から、パートナー企業のRailTelとの長期的な目的は、持続可能なWi-Fiサービスを提供することだった。そのために有料プランは重要なビジネスモデルの1つだ」と現地メディアにコメントしている。

インフラ整備から次のフェーズへ

 人口約13億人のインドではここ何年かで1億人以上が初めてインターネットにアクセスできるようになった。Googleが提供する無料Wi-Fiのおかげで、毎日15,000人以上のインド人が、初めてインターネットにアクセスすることができるようになった。それでもまだ、インドでネットに接続できるのは約3億人だけだ。まだ10億人以上がネットにアクセスできない環境にいる。

 Googleとしても、どれだけGoogleのサービスを充実させても、インターネットへアクセスするインフラが整備されていなければ、Googleのサービスは利用してもらえない。Googleのサービスが利用されないということはGoogleにとっては広告収入の増加につながらない。Googleの収入の90%以上は広告である。「誰もがネットに接続できる」ことがGoogleの収入源である「ネット広告にとって最低限の条件」である。

 Googleは決して慈善活動で無料Wi-Fiをインドで提供している訳ではない。スマホが急速に普及しているにもかかわらず、まだ10億人以上がネットに接続していないインドという巨大市場での重要な先行投資だ。

新たな収入源としての期待

 Googleとしては有料プランも提供することで、広告収入だけでなく、通信料金も徴収することによって、新たな収入源に繋げていきたいところだ。特にパートナー企業のRailTelにとっては通信料は重要だ。2016年末時点で100駅に敷設していたが、当時1日に500万人が無料Wi-Fiを利用していた。しかもこれからもインドの鉄道駅でのWi-Fi利用者は増加することが想定される。

 さらに速度制限になると多くの人が、ネットへのアクセスの遅さにイライラして、追加料金を払ってしまう傾向が世界規模でみられる。鉄道駅での有料Wi-FiはGoogleにとってインド市場での大きな収入源になるかもしれない。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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