Twitter「ヘイト行為や攻撃的な行為を減らすための新ルール」策定:どこまで効果があるのか
Twitterは2017年12月19日に、暴力行為や人種間対立をあおる「ヘイト」行為の抑止を目的として利用規約(ポリシー)を変更した。
Twitterは全世界で約3億人以上が利用しており、世界規模での情報発信のツールとなっている。日本でも約4,500万人が利用している。Twitterでは以前から、暴力、暴言、脅迫、差別的な言動は禁止しており、それらの削除要請を行っていた。今後、Twitterで暴力や暴力行為を賛美したり、差別的言動を繰り返し、削除要請に応じない場合には、アカウントが永久に停止されてしまう。また、ヘイト表現をともなう画像も不適切とし、投稿を禁じる。具体的には、人種、宗教、性的指向、民族や出身地を理由に敵意や悪意を増幅させることを目的とするロゴ、シンボル画像を不適切とみなすそうだ。このポリシーは全世界共通のため、日本でも適用される。
どこまで抑止力があるのか
今回のTwitterの利用規約の変更はどの程度、効果があるのだろうか。
アカウント停止はイタチゴッコ
まずアカウントが停止されてしまったとしても、簡単にアカウントを作成することは可能だ。実際、現在でも一人で複数のアカウントを持っている人も多い。つまりアカウントを停止されてしまったとしても、本人や別の人が新たにアカウントを作成して、再度同じような発言や投稿を繰り返されてしまっては、イタチゴッコだ。
特に海外では明らかにヘイトスピーチとわかる内容の発言を繰り返す人たちは、強い信念を持っている傾向が見られる。彼らにとってTwitterは情報発信の1つのツールに過ぎない。たとえアカウントを停止されても、本人や別の人が新たなアカウントを作成したり、Facebookなど他のSNSやブログなどを利用してでも発言を繰り返す傾向が見られる。
どこまでがヘイトスピーチ?
そして明らかにヘイトスピーチとわかる発言、見れば誰もが暴力行為と認める投稿はすぐに削除やアカウントの停止もできるだろう。投稿者の意図もわかりやすい。だが、最近では新しい用語や隠語も登場しているようで、なかなか判別しにくい投稿も多いようだ。かつてナチスドイツがユダヤ人を大量虐殺していたホロコースト時代でも「ガス室での処刑」と呼ばないで「特別措置」と言っていたように、一見すると差別やヘイトスピーチとわからない単語を用いての投稿もあるようだ。
さらに、ヘイトスピーチはどこまでがヘイトスピーチなのか不明な発言が多い。特に欧州では移民の増加に伴い、ヘイトスピーチの意識がなくとも、移民増加に対する日常の不安、不満をSNSに書き込み、それに同調する人も多く、それらの書き込みは、あっという間に拡散されていく。また他の民族、人種の異なる文化や習慣に対する些細な気持ちも、それが助長すると差別や隔離に繋がることもある。
そしてヘイトスピーチはマジョリティ(多数側)がマイノリティ(少数側)に対して憎悪を表すことがほとんどだったが、現在の欧州や米国では移民・難民が増加し、社会のあらゆるところに入り込んでいる。経済的には弱者かもしれないが、社会の中では、もはやマイノリティの存在ではなくなっている。
実際に欧米では移民からの、生活や仕事に関する不平や不満もSNSには多く投稿されている。「日常の不平不満」や「異文化への戸惑い」は表現の自由の領域かもしれない。誰もがスマホから簡単に自分の気持ちをTwitterに投稿できるようになって久しいが、どこからが「ヘイトスピーチ」で、どこまでが「日常の不平不満」や「異文化への戸惑い」といった表現の自由なのか。その線引きはますます難しくなってきている。
今回のTwitterでのポリシー変更で、どの程度、暴力行為や人種間対立をあおる「ヘイト」行為の抑止に繋がるのだろうか。