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東洋大学、オープンキャンパスに来られない遠隔地の受験生もWebで相談可能に

佐藤仁学術研究員・著述家

 夏休みシーズンに入り、多くの大学では受験生向けにオープンキャンパスを開催している。ほとんどの大学が受験生にキャンパスまで来てもらっているが、誰もが大学まで訪問できるとは限らない。首都圏や大都市の受験生なら簡単にオープンキャンパスに行けるだろうが、そうでない受験生も多くいる。

Webで入試相談が可能な「TOYOWebサポート」

 東洋大学は、オープンキャンパスへの参加が難しい海外や遠隔地に住む受験生の情報格差を解消することを目的に、「TOYOWebサポート」の運用を開始した。Web会議システムの技術を利用した「TOYOWebサポート」では、自宅にいながらWebを通じて対面での入試相談をすることができる。

 5月中旬から、大学スタッフの派遣が困難な遠隔地の合同進学相談会の会場との接続や、海外在住の受験生との個別相談などで運用を開始し、活用場面を徐々に広げてきた。受験生はWeb上で希望日時などを選択し、相談内容などを入力して申し込みできる。

 受験生の相談に対応するのは、主に東洋大学の在学生スタッフ。高校生に近い目線から、自身の経験なども踏まえ、アドバイスを行うことができる。一人当たり30分の相談時間で、受験生からの問い合わせは入学試験の制度・内容についての質問が中心だそうだ。無料で何回でも相談できる。首都圏の学生でもオープンキャンパス当日に訪問できなかった受験生にとって有難いサービスだ。

 東洋大学によると、受験生向けにWebでインタラクティブな相談を行っている大学はほとんどないとのこと。これからの大学にとって、遠隔地の受験生とはWebでのコミュニケーションが中心になっていくだろう。

英語・中国語でも対応

 最近では大学のグローバル化も進んでおり、東洋大学にも海外からの留学生が多く入学している。全ての授業を英語で行う学科があることに加え、中国からの留学生も多い。そのため「TOYOWebサポート」では日本語だけでなく、英語と中国語での対応も行っている。日本語では留学生に伝わりにくいことも英語と中国語できめ細かくフォローしていく。日本人受験生だけでなく、海外からの留学生にとっても非常に有効で利便性の高いツールだ。

いち早くWebに注力してきた東洋大学

 東洋大学は、Webを活用して受験生の利便性を高める取り組みを数多く進めている。例えば、多くの大学が現在でも分厚い「紙の大学案内」を配布している中、2013年に紙の入学案内や願書を廃止。大学選びの段階から実際の入学に至るまで、大学と受験生とのコミュニケーションを一貫して行う入試情報サイト「TOYO Web Style」を立ち上げた。また2015年には同Webサイト上で大学の講義を動画で体験できる「Web体験授業」を公開。

 2016年には「Web体験授業」を発展させ、Web体験授業を課題として視聴し、Web会議システムを通じてプレゼンテーション等を行う「Web体験授業型入試」を実施している。これは、先の授業動画を視聴し、課題レポートにまとめプレゼンテーションを試験当日に行うという画期的な入試。受験生はインターネットや関連書籍を調べるなど、自分なりのやり方で課題解決の方法を模索する。プレゼンの発表は、大学で試験を受ける方法と「Web会議システム」を用いて自宅等で試験を受ける方法の、いずれかを選んで受験することができる。

TOYOWebサポート

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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