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EU制裁金で純利益28%減少でも絶好調なGoogle:着実に進むAIファースト

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

 Alphabetは2017年7月24日、傘下のGoogleの2017年第2四半期(4~6月)の決算を発表した。

毎度のモバイルとYouTubeが絶好調だが、EU制裁金で純利益28%減少

 Alphabetの2017年第2四半期の連結売上高は前年同期比21%増の260億1,000万ドル(約3兆円)で、純利益は28%減の35億2,400万ドル(約4,000億円)だった。Alphabetの売上の99%以上がGoogleだ。そのGoogleの売上高は前年同期比21%増で257億6,200万ドルで、営業利益は12%増の78億300万ドル。

 今期は、欧州連合(EU)の欧州委員会が6月に独禁法違反で24億2,000万ユーロ(約3,000億円)と過去最高額の制裁金を科した。このコストがかかってしまい、純利益は大きく減少したが、事業は絶好調だ。

 Googleを支える広告収入は同19%増の227億ドルで、Googleの売上の約88%を占めている。従来からの広告依存のGoogleの売上構造は変わっていないものの、以前は90%以上が広告の売上だったから、広告以外の売上が増加している。

 Google事業にはGoogleの検索やYouTube、Android、アプリ、クラウド、Google Play、ハードウェアなどが含まれる。特にモバイル向けの広告とYouTubeが絶好調なことも例年通りである。また「Google Home」や「Google Wi-Fi」などハードの売上も好調。

Googleの売上と広告収入(Alphabet発表資料を元に作成)
Googleの売上と広告収入(Alphabet発表資料を元に作成)
その他売上高と損失の推移(Alphabet発表資料を元に作成)
その他売上高と損失の推移(Alphabet発表資料を元に作成)

 「それ以外の事業」はGoogle Fiber、Calico、Nest、Verily、GV、Google Capital、Xなど多額の投資が必要な事業だ。売上高は前年同期比34%増の2億4,800万ドルだったが、営業損失は7億2,200万ドルの赤字。まだ赤字は続くだろう。

絶好調なYouTube、モバイル、クラウド。次はAI

 Googleの事業を支えているのは、YouTubeとモバイルでの広告だ。YouTubeは全世界で15億人以上に利用されており、あらゆる動画がアップされている。1人で1日平均60分の視聴がされているそうだ。もはやテレビを見る時間よりもYouTubeを視聴している時間の方が長い人も多い。サンダー・ピチャイCEOも「YouTubeは本当に世界規模で順調に拡大している(YouTube is scaling really well globally)」と語った。

 そしてGoogleは以前からAI(人工知能)への注力を宣言。以前は「モバイル・ファーストカンパニー」だったが、現在では「AIファースト・カンパニー」を掲げている。音声型スピーカー「Google Home」など既にプロダクトとして市場にも出ている。今回の決算でもピチャイCEOは、今後もますますAIに注力していくことを宣言。「新たな機械学習をGoogleマップ、YouTube、Gメール、Googleフォトに適用して強化していくことによって、もっとビジネスは拡大していき、収益に繋がる」とコメントしていた。

Googleは世界中からあらゆる情報・データを収集してますますAIを強化していき、Googleが提供しているあらゆるプロダクトやサービスに反映されている。さらに7月10日には「People + AI Research Initiative(PAIR)」という新たなAIの取組を発表。AIが人間にとって有益になることを目指した研究を行っていくことを明らかにした。

 またGoogleではアメリカで中小企業の人材採用の支援を行う新サービス「Hire」も公開した。企業がGメールやG Suiteを活用して、採用候補者を効率的に管理することが可能。Googleによると、1人採用のために平均52日、約4,000ドル(約50万円)かかるとのこと。Googleのサービスを活用して、これらコスト削減と業務の効率化を提供する。あらゆる所で、AIを基盤としたGoogleのサービスが着実に浸透しようとしている。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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