YouTube、月間視聴者15億人突破:世界中であらゆる動画のポータルに

(写真:ロイター/アフロ)

YouTubeへの月間ログインユーザー数が全世界で15億人を突破したことが明らかになった。Google傘下のYouTubeは、世界中の動画のポータルになっており、もはやYouTubeにアップされていない動画はないのではないかと思うくらい、あらゆる動画がアップされている。国内外のYouTubeを取り巻く環境と今後の動画の在り方を見ていきたい。

SVOD最大のライバルはYouTube

日本だけでなく世界中でNetflixやHulu、Amazonプライムといった有料動画配信(SVOD)が多い。いわゆる毎月300円~1,000円程度の定額で、スマホやPCなどで映画やドキュメンタリー、ドラマなどの動画が視聴できるサービスだ。広告収入が減少しつつあるテレビ局では、もはや番組制作に以前のように巨額の予算を投入できなくなっている。そのため若手芸人や売り始めのアイドル、タレントなどが出演できるテレビ番組は深夜といえども難しくなっている。そのような芸能人が多く出演するのがSVODやネットでの番組である。さらにそのテレビ局でもオンデマンド放送などを提供している。だが日本人には以前からテレビはCMが流れるので、無料で見るものという認識があり、ケーブルテレビのように月額料金を支払ってまで見ることはアメリカ人よりも加入のハードルが高い。

そのためYouTubeのような無料での動画は大量に視聴するが、有料のSVODを月額料金を支払ってまで見る人は、テレビに比べるとまだ多いとは言えない。またネットでの配信はその特徴から簡単に録画されてYouTubeにアップされてしまう。特にアイドルやタレントが出演する番組は、それらのファンらがタレントの知名度向上を狙って、積極的に動画をアップしてしまう傾向がある。そうなると、他のファンらは「毎月料金を支払わなくとも、誰かがYouTubeにアップしてくれるから、アップされたら見ればいいや」という気持ちになってしまう。特に若い学生などお金のない視聴者にはそのような傾向が強い。つまり、SVODの最大のライバルは無料で動画が視聴できるYouTubeだ。

そしてSVODらもYouTubeという巨大動画プラットフォームの存在を無視することはできなくなっており、YouTubeで番組紹介やドラマの一部を流すことによって、YouTubeからユーザーを誘導するような仕掛けを行っていることが多い。例えばNetflixでは配信作品を公式YouTubeチャンネルで紹介する「ネトフリのネタフリ」を月に1回公開している。

無尽蔵に増え続けるYouTubeの動画

2005年に設立され、2006年10月にGoogleに買収されたYouTubeでは中国以外の世界中の人々がアクセスして、様々な動画再生を楽しんでいる。

個人がスマホなどでアップした動画以外にも、世界中のドラマ、ニュース、音楽、映画、バラエティなどあらゆるテレビ番組がYouTubeにはアップされている。もはやライセンス違反のコンテンツを削除依頼をするために探して報告する方が手間になってしまっているので、YouTubeへのアップは認めざるを得ないというテレビ局も世界には多い。ドラマや映画だけでなく、リアルタイムに配信されたニュースや、SHOWROOMなどの動画の多くもアップされている。合法であれ非合法であれ、それが実体であるから、もはやアップされている動画が非合法云々の議論は世界中でもほとんどされなくなっている。

誰もがあらゆる動画をアップするので、どのような番組でもYouTubeで検索すると出てくる可能性がある。昭和時代の貴重な古い映像もアップされていることもある。ユーザーはYouTubeを基本的に無料で視聴することが可能であり、YouTubeは広告を収入源としており、YouTubeでの広告収入はGoogleの売り上げにとっても非常に大きなウエイトを占めている。YouTubeの世界中のユーザーによる1日あたりの合計動画視聴時間が2016年に10億時間を突破したことが明らかになった。これはユーザー1人あたりにすると毎日YouTubeを8.4分見ていることになる。さらに月間で15億人以上がYouTubeにログインしている。

スマホの普及により、YouTubeを至るところで視聴している人が世界中で増加した。暇さえあれば、スマホでイヤホンをしながらYouTubeで動画を再生している人が多くなっている。実際にYouTubeの視聴の60%がスマホやタブレットなどモバイルからのアクセスのようだ。またスマホの急速な普及に伴って、誰もがスマホで簡単に動画を撮影して、その場ですぐにアップすることができるようになったため、YouTubeの動画コンテンツは無尽蔵に増え続けている。

有名人もYouTubeで情報発信の時代へ

またYouTubeでは動画を視聴する多くの人々だけでなく、YouTuber(ユーチューバー)と呼ばれるYouTubeに個人で撮影した動画をアップしている一般人や有名人も多い。世界規模で見ると一般人でもYouTuberとして100万人以上の登録者数を抱えているチャンネルを持つ者も多くいる。日本にも多くのYouTuberがおり、それぞれがYouTubeに自身のチャンネルを持ち、ファンがついている。多くのタレントや芸能人も動画をアップしており、有名人にとってはメディア露出という意味でもYouTubeは重要なプラットフォームとなっている。

例えばNMB48というアイドルグループの吉田朱里は、YouTubeに「女子力動画」と呼ばれる自身のチャンネルを持っている。チャンネルにはメイクやファッションについての動画がアップされており、約29万人の登録者がいる。動画は吉田朱里本人が自分で機材を用意して撮影して、自分で編集し、自分自身でYouTubeにアップしているようだ。この「女子力動画」のおかげで吉田朱里は従来の男性ファンだけでなく女性ファンも多く獲得している。通常、アイドルが女性ファンと接することは少ないが、吉田朱里はYouTubeを介することで、一気に女性ファンを獲得できた。女性に支持されるようになると女子アイドルは強い。2016年末に開催された紅白歌合戦では、ファン投票により出演メンバーを選出するというNHKの企画があったが、その際にも投票数が伸びて、著名な選抜メンバーらと並んで念願の紅白歌合戦への出演権を獲得。さらに2017年6月に開催されたAKB48選抜総選挙では16位にランクイン。悲願の初選抜入りを果たした。これもYouTubeでのファン獲得の効果と考えられる。

広告以外の新たな収入源も:ライブ配信「Super Chat」

YouTubeは新たな収入源として広告だけでなく、YouTuberなどの個人によるライブ配信も視野に入れ始めている。YouTubeは2017年2月8日、スマホのYouTubeアプリからライブ配信が行えるサービスを提供開始した。ライブ配信自体は2011 年に発表後、多くのクリエイターに活用されてきた。だがこれまでは、例えば2014 年の FIFA ワールドカップのメンバー発表や、小惑星探査機の打ち上げ中継など大きなイベントなどが中心だった。今回はスマホから誰もが簡単にライブ配信を行えるようになる。まずはYouTubeのチャンネル登録者数1万人以上のクリエイターを対象に公開していく。ライブ配信後も配信された動画は通常の動画と同様に検索や再生リストなどから見ることができる。

また同時にYouTubeは、視聴者がライブ配信中に自分のコメントを強調して表示できる「Super Chat」というサービスも提供開始する。Super Chatは金銭で購入できる、いわゆるアプリ課金だ。自分のコメントの色を変えたり、一定時間(最大5時間まで)固定表示したりすることが可能で、視聴者は、この課金に応じることでライブ配信者を金銭的に支援することができる。課金は100円~5万円までで、それぞれの金額に応じてできる機能が異なる。日本を含む約20カ国のクリエイターがライブ配信を可能で、40カ国以上の視聴者が利用できる。

これらにより、YouTubeは従来の広告だけに依拠するビジネスモデルからの脱却と、ライブ配信を行い動画を多く提供してくれるクリエイターへの支援が、ユーザーは金銭を払うことにでクリエイターからの認知を得たり、クリエイターとのコミュニケーションを楽しんだりすることができるようになる。

このようにYouTubeはもはや広告に依拠しない新たな事業を展開しようとしている。その傾向は、YouTube動画冒頭に流れる広告の扱いの変化にも表れている。2017年2月18日にYouTubeは、動画の冒頭に流れるスキップできない30秒間の広告を2018年に廃止することを発表した。Googleによると、30秒広告の廃止はユーザーエクスペリエンス向上を目的としているということで、2018年以降はスキップできない広告は、30秒より短いものに変更される。

また、YouTubeでは2016年4月にスキップできない約6秒の「バンパー広告」を導入。日本人でもYouTubeで動画を見るときに5~6秒の広告を見たことがある人も多いだろう。この程度の秒数であれば我慢できるが、さすがに30秒も見せられるのは嫌だという人も多いだろう。これは完全にユーザー側の論理であり、広告収入が収益源であるYouTubeとしては広告配信は欠かせない。

YouTubeも当面は広告収入に依拠せざるを得ないだろうが、広告だけでなく、ユーザーから動画配信視聴のための利用料金を徴収するYouTube TVや、アプリ課金のSuper Chatなどが今後普及してくるようになると、現在のように広告だけに依拠しなくてもよくなるかもしれない。

アメリカでは有料動画配信にも進出「YouTube TV」:そのインパクト

YouTubeは2017年2月28日、YouTubeでのテレビ配信サービス「YouTube TV」の提供開始を発表した。ついにYouTubeがSVODに進出してきたのだ。月額料金35ドルで、6アカウントまで利用が可能で、スマホ、タブレット、PCのほかにGoogle Chromecastを接続したテレビで視聴できる。スマホはGoogleのAndroidだけでなくiOSにも対応。アカウントごとにカスタマイズした機能や容量無制限のクラウドDVR(デジタルビデオレコーダー)が提供され、最長9カ月間番組を保存可能。また同時に最大3本の番組のストリーミング視聴が可能。

Googleによると月額35ドルでの提供はケーブルテレビの半額程度とのことで、「YouTube TV」は今後アメリカのケーブルテレビやコンテンツ提供者に大きな影響を与えそうだ。まずは2017年内にアメリカの大都市から提供を開始していくとのこと。

「YouTube TV」ではABC、CBS、FOX、NBC、ESPN、FoxSports、NBCSN、USA、FX、Bravo、ナショナルジオグラフィック、ディズニー、Syfyなどアメリカを代表するようなスポーツ、ニュース、映画・ドラマなどのケーブルテレビでも提供されている約40のチャンネルをストリーミングで配信する。「YouTube TV」はテレビ放送ではなくネット経由なので、どこにいてもスマホやタブレットで視聴が可能。また既に月額9.99ドルで提供している有料コンテンツ「YouTube Red」のオリジナル映画やドラマなども「YouTube TV」で視聴できる。

アメリカではスマホが普及しはじめた2010年頃から、CATVや衛星放送の有料視聴サービスの契約を解除する人々が増えた。2013年から650万件も増加するなど拡大傾向だ。もはや動画配信は有料であれ、無料であれスマホやタブレットなどモバイルが主戦場だ。だがインターネットの急速な拡大とスマホ、タブレットの普及で大量の動画が氾濫するようになっても、一個人が視聴できる時間は限定されているので、ユーザーは自分の興味のある番組を提供しているチャンネル以外には金銭を払おうとしなくなっている。

YouTubeは無料で視聴ができるプラットフォームなので、気軽にアクセスできるため、アメリカ人だけでなく世界中の多くの人に利用されている。今日のアメリカのユーザーの視聴傾向を踏まえると、そのYouTubeが「YouTube TV」としてテレビのストリーミング配信を開始し、しかも既存のケーブルテレビの半額で提供してくることは脅威であり、その意義は大きい。

「YouTube TV」のアメリカ国外や日本での提供開始については明らかにされていないが、日本市場向けには日本市場にあったコンテンツの提供が必要なので、すぐには開始できないだろう。だが日本だけでなく世界中のコンテンツ提供者はYouTube (Google) のような集客力も資本力もあるプラットフォームを所有する事業者にはコンテンツを提供したいだろうから、コンテンツの収集にはそれほど時間もかからないだろう。現在、世界規模でYouTubeが無料の動画から、有料動画まで、あらゆる動画のプラットフォームとなり、入り口(ポータル)となろうとしている。その波はいずれ日本にもやってくるだろう。