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英国、ホロコースト生存者の証言を保存:3Dで再現、インタラクティブな会話も

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

第二次大戦時にナチスドイツが600万人以上のユダヤ人を大量に虐殺したホロコースト。そのホロコーストを生き延びることができた生存者たちは、現在でも証言者として、博物館などで当時の様子を学生らに語っている。だが彼らも高齢化が進んでいき、生存者の数も年々減少している。

ホロコースト生存者のMartin Stern氏(National Holocaust centre)
ホロコースト生存者のMartin Stern氏(National Holocaust centre)

ホロコーストの生存者と3Dでインタラクティブな会話が

そこでイギリスのホロコースト博物館(The National Holocaust Centre & Museum)では、以前からホロコースト生存者らが元気なうちに、証言を記録する取組み「The Forever Project」が行われている。インタビューを撮影して3D化して再現しようとしている。10人の生存者を撮影する予定で、彼らがカメラの前で、講演会などでよく質問される1,400以上の質問に回答。これによって、将来にわたってホロコースト生存者らの話をバーチャルながら、インタラクティブな会話が再現できるようになる。現在、撮影と3D化が進んでいる。

初めての撮影者となったSteven Frank氏はホロコースト時代にはチェコのテレジン収容所に収容されていた。「生存者がどのように生き抜いてきたかを伝えることができる力強いツールだ。現在のような偏見や不寛容に満ちた社会にとっては非常に重要な試み」と述べている。

イギリスのホロコースト博物館では20年間で50万人以上の学生が訪問。近い将来、若い学生と対面するのは人間ではなく3Dになる。3Dでも学生からの質問に回答してくれる。

下記の動画では3Dの撮影シーンも出ている。

ホロコースト博物館が作成した「Forever Project」の動画。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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