Yahoo!ニュース

アメリカの刑務所、5年にわたってドローンでドラッグ・スマホなど禁制品を密輸

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:Dan Callister/Shutterstock/アフロ)

アメリカのUSA TODAYによると、アメリカの連邦刑務所や州立刑務所で5年にわたってスマホ、ドラッグ、ポルノ、銃火器などをドローンで密輸されていたことが明らかになったと報じている。これらは全て刑務所への持ち込みは禁止されている商品。アメリカ司法省の文書によると、ドローンを利用した刑務所への密輸は12回以上行われていた。いわゆる外部から刑務所内部にいる収容者への差し入れだが、誰がドローンで物品を配送していたのかは不明。

刑務所内に禁制品の持ち込みは連邦法で禁じられているが、刑務所付近でドローン飛行を取り締まる法律はないそうだ。アリゾナ州立大学の Troy Rule氏は「ドローンはかなり安くなっており、簡単に操作できるようになった。ドローンを利用した犯罪が増加していることは、ドローンが悪用できることに気が付いた人が多い証拠だ」とコメント。

成功報酬は1回約70万円

2015年3月にはカリフォルニア州ヴィクターヴィルの刑務所でドローンで2台の携帯電話が密輸されていたが、刑務所は5か月間気が付かなかったそうだ。カリフォルニア州アトウォーターやオークデール、テキサス州シーガビルの刑務所や矯正施設でも同様にドローンによる密輸事件が起きていた。また2016年にはメリーランド州の刑務所にドローンでドラッグとポルノを密輸していた2人の元受刑者が有罪判決を受けた。深夜にドローンで密輸するようで、成功すると1回につき6,000ドル(約70万円)の報酬を得られるとのこと。

ドローンが飛来してきたら、音がして警備員や看守が気がつきそうだが、成功するかどうかは別として、簡単に空から運ぶことはできる。またドローンの価格も安いことから、失敗しても配送側も何回でも実行できる。

連邦刑務所局スポークスマンのJustin Long氏は「ドローンによる刑務所内への密輸の脅威が増加している。司法省と協力して何らかの法的措置が必要だ」と述べている。また刑務所で25年以上勤務していたDonald Leach氏は「刑務所近辺でドローンを探知して撃墜するなど対策や早急な法的な整備が必要。今までも囚人が看守や訪問客に賄賂を渡して、禁制品を持ち込まれることがあったが、ドローンで空中から銃など危険物が刑務所に持ち込まれることは非常に危険で脅威」とコメントしている。たしかに禁制品の密輸だけでなく、ドローンで上空から刑務所が爆撃される脅威もある。

ドローンによる刑務所への違法な配達はアメリカだけでなくイギリスでも問題になっている。下記はBBCで報じられたドローンによる刑務所への深夜の密輸シーン。イギリスでは2017年4月に刑務所へのドローン対策部隊が創設されている。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

佐藤仁の最近の記事