Yahoo!ニュース

世界で18億人が利用、スマホ広告が絶好調のFacebook:全てのアプリを「動画ファースト」へ

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

Facebookは2016年11月2日、2016年第3四半期(7~9月期)の業績を発表した。Facebookを毎日利用するデイリーアクティブ利用者(DAUs)は、2016年9月時点、全世界で前年同期比で17%増の11億7,900万人。月間アクティブ利用者数(MAUs)は、全世界で同16%増の17億8,800万人だった。そしてFacebook利用者の67%の12億人以上がアジア太平洋地域やその他の新興国市場で、これらの市場ではスマホの普及によって大きく伸びている。

今期もモバイル広告が絶好調

第3四半期の売上高は前年同期比56%増70億1,100万ドルで、純利益は166%増(約2.7倍)の23億7,900万ドルと過去最高を更新した。売上のうち広告売上高は68億2,000万ドルでFacebookの売上の97.3%を占めている。ますますFacebookの売上が広告依存になっている。広告収入のうちモバイル向けの広告収入が84%を占めており、前年同期の78%を大きく上回った。

モバイルからのMAUも20%増の16億5,800万人、モバイルからのみアクセスするユーザーは前年同期比45%増の10億5,500万人。モバイルのみからアクセスするユーザーが初めて10億人を超え、MAU全体の59%を占めている。

急成長のインドでは1.5億人がFacebook利用

世界最大の人口をかかえる中国ではFacebookは利用できない。中国に次ぐ大国インドでは1億5,500万人がFacebookを利用している。FacebookのAdam Mosseri氏によると、インドでの利用者は1年間で22%増えているそうだ。世界では17%増なので、インドでの加入者増の著しさが伺える。

またスマホが急速に普及しているインドでは1億5,500万人の利用者のうち、94.8%にあたる1億4,700万人がモバイルからアクセスしているとのことだ。だがそれでもまだ約12億人の人口を抱えているインドでは、Facebookの人口普及率は12%程度だ。1人あたりの売上は決して大きくないインド市場だが、まだネットにアクセスできな人が多いインドでの成長はこれからも期待できる。Facebookは2016年5月にはハイデラバードに次いでインドでの2番目のオフィスをムンバイに開設しており、年末までにはグルガオンにもオフィスを開設する予定だ。

そのことはFacebookもよく理解しており、Adam Mosseri氏は「現在、最も重視しているのは(全世界でネットにアクセスできない)次の10億人がネットにアクセスすること。そして、インドがその大部分を占めているのは明らかだ」と述べている。

2016年Q3のFacebookの地域別MAUと比率 (公開情報を元に作成)
2016年Q3のFacebookの地域別MAUと比率 (公開情報を元に作成)
2016年Q3のFacebookの地域別1人当たりの収入(公開情報を元に作成)
2016年Q3のFacebookの地域別1人当たりの収入(公開情報を元に作成)

全てのアプリを「動画ファースト」へ

CEOのMark Zuckerberg氏は今回の決算について「今期も好調だった。Facebookは全てのアプリを『動画ファースト(video first)』にしていく。今後10年のロードマップは着実に進んでいる」と、動画を最優先していくことを明らかにした。また「今まで以上に誰もが動画を撮影してFacebookでシェアするようになった。だから誰もが簡単にクリエィテイブな動画で表現できるような新たなツールを開発しているところだ」とも述べた。同氏は以前から『動画がFacebookのサービスの中心( video is at the heart of all our services)』と動画サービスの重要性を強調していた。これからも動画サービスの強化を図っていくことだろう。

Facebook Liveの利用者は2016年5月から4倍にも伸びて、3か月前に開始したInstagram Storiesは毎日1億人以上が利用しているとのことだ。Facebookはあくまでもプラットフォームに徹しており、NetflixやAmazon Primeのようにコンテンツを制作して有料で配信することはしてない。そのような制作や販売などにコストはかけていない。Facebookとしては「個人であれ、企業であれ誰もが動画をアップできるプラットフォーム」を提供しており、そこからの莫大な広告収入で売上をあげている。この構図も当面変わらないだろう。

(Mark Zuckerberg氏のFacebookページより)
(Mark Zuckerberg氏のFacebookページより)
学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

佐藤仁の最近の記事