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タイ、LINE「王室風刺のスタンプ」で警察が不敬罪で捜査・販売中止

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

LINEはタイでも人気がある。そのタイのLINEで「タイ王室を風刺したスタンプ」が販売されていた。

タイ王室風刺スタンプを削除

今回のスタンプはユーザーがデザインして販売していたスタンプで0.99ドルで販売されていた。タイでは国王、女王など王室の批判や誹謗中傷は不敬罪で違法とされている。タイでは不敬罪では最長15年の禁錮刑となる。特に2014年5月からの軍事政権は不敬罪の取締まりを強化している。例えば国王の合成写真を作成してSNSなどにアップして逮捕されている。

警察がLINEの調査に入り、2016年4月7日にはLINEが自社のFacebookで謝罪し、スタンプは販売中止された。LINEにはスタンプ作成の審査ガイドラインがあり「モラル」の箇所で「宗教、文化、民族性、国民性を攻撃し、または特に不快感を与えるもの」と出ている。今回のスタンプも、日本人にとっては微笑ましい絵柄に見えるが、タイ国民にとっては不快なものだったのだ。LINEはユーザー作成のスタンプは事前に審査しているが、今回のスタンプがタイ国民を不快にして、大きな問題に発展するとは想定していなかったのだろうか。

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問題になったスタンプ(ANDREW MACGREGOR MARSHALL)
問題になったスタンプ(ANDREW MACGREGOR MARSHALL)

かつてLINEはインドネシアでもムスリムにとってタブーである同性愛のスタンプを提供して、インドネシア国民に不快感を与えたとして謝罪したことがあった。これからもLINEはグローバルに展開していくためには、このような「ローカル・ルール」に対応していかなければならない。

タイでのLINE人気を支えていたスタンプ

全世界でLINEは2億1,000万人が利用しており、日本以外ではインドネシア、タイ、台湾で人気が高く、タイでは約3,300万人がLINEを利用している。タイでLINEの人気がある要因としてスタンプのキャラクターの人気があった。タイではLINEのキャラクターがかわいくて若者らに大人気である。町の中でもお店や大学などで日本人にもお馴染みのLINEのキャラクターをよく見かける。ドラえもんやキティなどに並ぶ人気のキャラクターになっている。

そのタイでも最近ではFacebookのメッセンジャーの利用者が急増している。今までLINEでメッセージのやり取りをしていたが、メッセンジャーに移行しているタイ人がたくさんいる。メッセンジャーでも多くのスタンプを用意しており、LINEである必要がなくなったのかもしれない。

メッセージのやり取りはLINEであれ、Facebookのメッセンジャーであれ、使い方もユーザーエクスペリエンスにも大きな違いはない。ただスマホではLINEとメッセンジャーの大差がないが「LINEはパソコンで使い難く、メッセンジャーはパソコンでも利用しやすい」というタイ人も多い。

LINEのキャラクターはタイで人気。チュラーロンコーン大学の卒業パーティの案内にも登場
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学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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