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Googleの広告売上が好調なAlphabet:将来の期待値を反映して時価総額でアップル抜いて世界一

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

Alphabetは2016年2月1日、傘下のGoogleの2015年第4四半期(10~12月)の決算を発表した。Alphabet設立後としては2回目となるGoogleの業績発表である。今回からは、Googleと「それ以外の事業(Other Bets)」の業績を分けて発表した。

絶好調なGoogle、売上の90%以上は広告

Alphabetの2015年第4四半期の連結売上高は前年同期比18%増の213億2,900万ドルだった。Alphabetの売上の99%以上がGoogleだ。そのGoogleの売上高は前年同期比18%増で211億7,800万ドルだった。そして広告収入は同17%増の190億7,800万ドルで、Googleの売上の90%以上を占めており、従来からの広告依存のGoogleの売上構造は変わっていない。Googleの2015年通年の売上高は前年比14%増の745億4,100万ドル、営業利益は同23%増の234億2,500万ドルと絶好調である。

Google事業にはGoogleの検索やYouTube、Android、アプリ、クラウド、Google Play、ハードウェアなどが含まれる。特にモバイル検索やYouTube、プログラマティック広告が成長をけん引していることも、最近の決算発表と大きな変化はない。

Googleの売上と広告収入(Alphabet発表資料を元に作成)
Googleの売上と広告収入(Alphabet発表資料を元に作成)

「それ以外の事業」は大きな赤字

今回からAlphabetではGoogle以外の「それ以外の事業(Other Bets)」の業績も発表した。

「それ以外の事業」はGoogle Fiber、Calico、Nest、Verily、GV、Google Capital、Xなど多額の投資が必要な事業だ。「それ以外の事業」の売上は前年比26%増の4億4,800万ドルだが、営業損失は35億6,000万ドルで赤字である。前年の営業損失は19億ドルの赤字だった。2015年はGoogle Fiberの設備投資が大きかったそうだ。

「それ以外の事業」で赤字幅が膨らんだとしても、Googleの広告売上で相当に稼いでいるから、Alphabet全体で見たら小さなものであり、大きな影響を与えることはないだろう。

その他売上高と損失(Alphabet発表資料を元に作成)
その他売上高と損失(Alphabet発表資料を元に作成)

高い期待値を反映してAlphabetの時価総額、アップル抜いて首位

そしてAlphabetの決算発表後には、同社の時価総額は5,680億ドルとなり、アップルの約5,350億ドルを上回り、世界一となった。

時価総額はその会社への「期待値」のようなものである。AlphabetではGoogleの広告収入で稼いだ潤沢な資金を元に、様々な分野の多くの事業へ投資している。アップルは同社の売上の70%以上がiPhoneという「モノ作り」企業からいつまでも脱却していないことも不安視されている。

Alphabetには現時点では赤字ではあるものの、将来への期待が高く、投資家や株主に魅力的と思われる事業が多い。今回アップルを抜いて時価総額が世界一となったのも、Googleの将来の成長への強い期待が込められている。

Alphabetの売上は90%が広告収入というインターネット・メディア企業だが、Alphabet(Google)なら「将来、何か面白いことをやってくれるのではないか」という期待値が反映された時価総額世界一なのだ。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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