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ドイツGigasetからスマホが初登場:かつてドイツではSiemensの携帯電話は人気あったが・・・

佐藤仁学術研究員・著述家

ドイツの通信機器メーカーGigasetから初めてスマートフォンを販売される。2015年9月にベルリンで開催されてIFAでも展示された。

「Gigaset ME」シリーズで、以下の3機種を販売している。

「Gigaset ME Pro」(549ユーロ、約74,000円)

「Gigaset ME」  (469ユーロ、約63,000円)

「Gigaset ME Pure」(349ユーロ、約47,000円)

どれも欧州市場では高価なハイエンド端末である。

ドイツだけでなくイギリス、フランス、オランダ、ベルギー、スペイン、イタリア、ポーランド、トルコでも販売開始し、今年中には中国や他の欧州市場にも参入を目指している。

■かつてドイツや欧州でSiemensの携帯電話は人気があった

Gigasetは日本では馴染みがないが、ドイツのSiemensの電話端末事業を引き継いで、2008年に設立された。かつてのSiemensの電話端末事業があったミュンヘンに本社がある。Siemensの携帯電話端末事業は、2005年に台湾のBenQに継承されたので、Gigasetはコードレス電話、オフィス電話やソリューション事業を行ってきた。

BenQに事業が継承されてからはドイツ市場でも欧州市場でも存在感を無くしてしまったSiemensだが、かつてドイツや欧州市場ではNokiaに次いで人気がある端末だった。派手さはなかったが、小型で電話とショートメッセージするだけなら十分な端末だった。

2002年に世界の携帯電話販売台数は4億2,342万台で、そのうちSiemensのシェアはNokia(フィンランド)、モトローラ(アメリカ)、サムスン(韓国)に次いで4位で8.2%だった。2002年にSiemensは欧州を中心に全世界で約3,472万台を販売していた。

そして、2003年には全世界で携帯電話が5億2,000万台出荷された。メーカーのシェアは変わらなかったが、シェア4位のSiemensは約4,368万台販売していた。

2001-2003年の携帯電話出荷メーカー別シェア:ガートナー資料を元に作成
2001-2003年の携帯電話出荷メーカー別シェア:ガートナー資料を元に作成

■ドイツでの2015年のスマホ販売台数の予測は2,556万台、15歳以上で65%がスマホ保有

現在のドイツでの人気が高いのはiPhoneやサムスンのスマートフォンである。ドイツのIT業界連盟Bitkomの予測ではドイツでの2015年のスマートフォン販売台数は2,556万台、売上は2014年を7%上回る91億ユーロに達する。そして15歳以上のドイツ人のスマートフォン保有率は2015年の年末までに65%となる見通しを明らかにしている。

Gigasetのスマートフォンはバッテリーの充電の速さをウリにしており、10分で25%まで充電できるが、それでもかなり高い端末であり、ドイツでも簡単に購入できるものではない。それでも欧州市場ではiPhoneやサムスンなどの「欧州外のスマートフォン」ばかりなので、ドイツ企業で、しかもSiemensの流れをひくメーカーからのスマートフォンの登場ということもあり、メディアでは多少話題になっていた。かつてのSiemensブランドでドイツや欧州市場を席捲していた時のようにGigasetのスマートフォンは浸透するだろうか。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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