Yahoo!ニュース

2025デフリンピックTOKYOへ期待する「ダイバーシティでつながる社会づくり」その1

佐多直厚コミュニケーションデザイナー
PR施設開設イベントでアンバサダー川俣さんの手話「つながる」(写真:Michael Steinebach/アフロ)

2020オリパラTOKYOそして2024PARIS。さらに2025デフリンピックTOKYO。伸びゆく共生社会のシンボルイベントです。

 この夏にパリで開催されるオリンピック、パラリンピック。コロナ禍を耐えた東京大会から通常開催に戻る期待が高まっています。そして来年。2025年はTOKYO FORWARD2025。二つの国際大会が東京で開催されます。世界陸上と、この記事で取り上げるデフリンピックです。オリンピックと障害者スポーツ分野のパラリンピック。そしてデフリンピックはパラリンピックにはないデフ=聞こえない、聞こえづらい競技者の集う国際大会です。1924年パリで初開催。約100年後に日本初開催です。素敵なつながりを感じますね。

 デフリンピックとは?それはすでに多数の情報が公開されていますので、記事末尾のデフリンピックTOKYO基礎知識情報で情報ソースを紹介します。ぜひ知って、体験の場にも足を運んでみてください。この記事ではデフリンピックの特長とそこから見えてくる面白さや社会に変化をもたらすかもしれない意義をひも解きたいと思います。キーワードはすでに何度もでてきている「つながる」です。

2023 JDKF 空手道競技大会から 手話で指示する審判員と見つめる選手
2023 JDKF 空手道競技大会から 手話で指示する審判員と見つめる選手写真:長田洋平/アフロスポーツ

デフリンピックではデフ以外はマイノリティ。知っていますか?

 競技者、審判そして関連する運営はすべて見る情報だけで運営できるので、音声コミュニケーションは不要。国際手話やサイン表示で進行されます。それがわからない聴者は取り残されるマイノリティになってしまうのです。パラスポーツは障害のない審判や運営が支えます。例えばブラインドサッカーは視覚障害者(視覚制限をした選手も含めて)を視覚のある審判、コーチほかサポーティングスタッフ、運営体制が支えます。デフサッカーはそのすべてが聴覚障害者で動けるので、音声情報は不要。つまりここでマイノリティとなる聴者のために音声情報が提供されるのです。聴者にとって未体験の世界です。だれもとり残さないダイバーシティ社会づくりを、という概念を自分がマイノリティになる体験をすることでリアルな自分事にできるチャンスになります。ぜひ体験してみてください。それがデフリンピックとともにオリンピック、パラリンピックはみんなで高めあう時代へとつながります。参加することに意義がある。あなたにも。

陸上100走のスタートランプ体験コーナー 顔の下にあるランプが赤>黄>青でスタートです。@デフ陸上2023(写真:プラスヴォイス)
陸上100走のスタートランプ体験コーナー 顔の下にあるランプが赤>黄>青でスタートです。@デフ陸上2023(写真:プラスヴォイス)

デフリンピックTOKYOが多様なつながりを意識し、生み出すチャンスになる。

 多様性を超えるつながりを生み出すことを期待する取り組みがあります。これまでのデフリンピックでは聴こえない当事者団体で運用されてきました。東京大会は当事者団体と東京都そして国内競技連盟が連携、協働するという初めてのチャレンジです。東京都が掲げるTOKYO FORWARD2025はまさにそれを表す呼称です。

 多様な人材、組織の連携はそれぞれが活動するためのルール、知見そして言語が寄り添ってつながることが重要です。言語がもたらす思考、思想、発信までもが違います。ろう者の主たる言語である手話は日本語をそのまま置き換えているのではなく、独立した言語です。文法や助詞のような概念からして異なりますし、会話のルールも違います。聴者は複数の人が同時にまたはかぶせるように話すのが当たり前ですが、手話の話し手は必ずひとりで、みな集中してそれを読み取ります。同様に文字で伝達する場合も字幕が複数表示されたら、同時に読み取るのは困難になるものです。視ると聴くの受容の差であり、感じ方も変わります。察してもらいやすいように声の強弱や長短で表現する「聴く」。対して明快に伝えることがコミュニケーションである「視る」。そのように考えます。このような差は言語ではよくあることです。英語など他国語はストレートで構造が明快であるため、日本人はアタリの強さを感じてしまいますし、多言語に親しんだ人の日本語会話でもストレートな表現に驚き、時に自己中心的な人だと誤解してしまうことも。手話と文字伝達の文化に触れることはグローバルな思考文化にも通じるものですし、明快な伝達がつながりやすさを実感できると考えられませんか?

マイノリティをとり残さない情報保障が豊かなDEI社会を創り出す。

 音声を置き換える手話、文字情報。文字を置き換える点字、読み上げツール。言語翻訳。すべてつながるための置き換え、情報保障です。置き換えた情報を共有することで連帯や一体感を持てる。その時マイノリティは消え、多様で格差なく全員参加の「みんな」になれる。それが豊かなダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン*1(DEI)社会です。すでに情報保障は多くのメディアで運用されています。マスメディアではTV番組の字幕付は平均で60%を超えています。報道からエンタテイメントさらにライブ中継まで。手話通訳も併せて情報保障を当たり前にしようと奮闘しています。
参考:字幕番組率(令和3年度実績 NICT調べ)
TVコマーシャルの字幕も令和5年10月時点で16.7%、90社を超えてきました。
参考:字幕付きCM ポータルWEB
ACジャパンの公共CMでは字幕、手話そして音声監修の情報保障を整えたトライを運用中。2年前の寛容ラップ篇では手話が演技として高評価されました。
参考:令和4年度 寛容ラップ資料(ACジャパン 広告作品アーカイブ)

令和5年度 白紙の未来資料(同上)
動画配信や街頭のサイネージなどでも字幕情報付与が浸透しています。
 この普及を支えているのがデジタル技術の進化とサービスの構築です。ろう者が登場する映像作品で音声認識ツールが重要な役割を果たし、一般にも認知、利用が進みました。制作現場においても字幕作成のスピードアップと適正化そして使いやすさなど機能向上が図られています。デフリンピックTOKYOでも競技者、関係者の便利さとともに聴く情報取得との連携にも期待が高まります。

 令和5年11月に開催された2023World Games of Deaf Athletics Teams兼第20回日本デフ陸上競技選手権大会では、放送映像の制作会社、遠隔手話通訳システム、字幕情報システム事業社ほかサポート構築を目指す企業が参画。実況中継を現場のビジョン、ネット配信や文字情報表示システムで公開しつつ、手話、字幕アシストを希望者だれもが目的ごとにスピーディに利用するサービスを実現していました。デフリンピック本大会でのサポートをリアルに実感し、さらなる進化を期待しました。

デフ陸上大会の表彰風景 背景のトラック左上に「2分35秒61」の電光字幕が見えます(写真:プラスヴォイス)
デフ陸上大会の表彰風景 背景のトラック左上に「2分35秒61」の電光字幕が見えます(写真:プラスヴォイス)

参考:2023World Games of Deaf Athletics TeamsのPR映像
*1:ダイバーシティ=多様な存在 エクイティ=公正に インクルージョン=認め合って共に活動する  簡単に言うとみんなで、えこひいきなく、一緒にやるということです。

 つながる豊かな多様性社会。デジタル、ICTでグローバルにつながるにも情報と情報保障が重要です。続くその2はこちらをクリック。情報保障の意義と、その先にあるものは何か?を考えていきます。

★デフリンピックTOKYO基礎知識情報★

東京2025デフリンピック大会ポータルサイト
デフリンピックとはなにか。端的に知るポータルサイト。リンク情報も豊富です。

産経新聞ポッドキャスト|声で聴く スポーツ、ここが知りたい

全日本ろうあ連盟本部事務所長・倉野直紀理事へ「東京デフリンピックで理解広がれ」をテーマにインタビュー。聴いて知るデフリンピックのすべて。手話通訳士の方の音声で倉野さんの思いを聴いてください。

コミュニケーションデザイナー

金沢美術工芸大学卒。インクルーシブデザインで豊かな社会化推進に格闘中。2008年、現在の字幕付きCM開始時より普及活動と制作体制の基盤構築を推進。進行ルールを構築、マニュアルとしての進行要領を執筆し、実運用指導。2013年、豊かなダイバーシティ社会づくりに貢献する会議体PARADISを運営開始。UDコンサルティング展開。2023年7月(株)電通を退職後2024年1月株式会社PARACOM設立。 災害支援・救援活動を中心に可能な限りボランティア活動に従事。ともなってDX事業開発、ノウハウやボランティアネットワーク情報を提供。会議体PARADISの事業企画開発を担います。

佐多直厚の最近の記事