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SDGsの姿勢「誰ひとり取り残さない」の「誰」は「何」を待っている?Part1

佐多直厚コミュニケーションデザイナー
(写真:アフロ)

 国連総会で採択された持続可能な開発目標SDGsは、17の目標とともに行動計画として6つの課題が2030アジェンダに提示されています。

1 貧困と飢餓に終止符を打つ

2 国内的・国際的な不平等と戦う

3 平和で、公正かつ包摂的な社会をうち立てる

4 人権を保護しジェンダー平等と女性・女児の能力強化を進める

5 地球と天然資源の永続的な保護を確保する

6 持続可能で包摂的な経済成長、繁栄の共有と働きがいある人間らしい仕事のための条件を、各国の発展段階・能力の違いを考慮に入れて作り出す

 課題への取り組む姿勢を象徴的に表したものが「誰ひとり取り残さない」です。最近よく耳にするようになりました。誰ひとり、確かにその通りなのですが、「みんな」という多数イメージと同様に、茫漠としてしまい、自分にかかわりの深いテーマと捉えにくく感じてしまいます。

 誰ってだれ?取り残される人を想像してみます。福祉、生活支援などのワードが頭に浮かぶ方も多いと思います。そして自分の周りにはそういう人はいない、遠い存在と思うかもしれません。アジェンダ課題6項目をもう一度眺めてください。取り残されるのは福祉、生活支援だけではないことが見えてきます。

例えば6の「人間らしい仕事のため」。

支えてもらうだけではなく、自分の夢を描き、実現したい。そして社会参画して支えあうやりがいを持つ。そういう「人間らしい仕事」で支える共生社会。その実現のためにしっかりと向き合って活動しているパイオニアを以下の4つのテーマで2回に分けてご紹介します。

1:情報社会で取り残さない~情報のカタチは文字、音声、画像、映像そして

2:高齢者の社会性を取り残さない~築いた人生がながく輝くように~

3:子供の公正な成長を~誰ひとり取り残さない大事なスタート

4:つまずきからの社会復帰を応援する

多様な活動のほんの一部ですが、これを知ることであなたにとっての「誰ひとり取り残さない」が身近になるきっかけになればうれしく思います。

1:情報社会で取り残さない~情報のカタチは文字、音声、画像、映像そして

●文字情報を視覚障害者など読めない、読みにくい人々へ。

 対応手法は触覚で読む点字、情報を読み上げて聴くサービス、システムなどがありますが、ご紹介するのは読み上げる機能の高度化、情報スピードそして使いやすさを追求している事業です。

音声コードUni-Voice

ページ右下隅にあるのがUni-Voiceコード(写真提供:JAVIS)
ページ右下隅にあるのがUni-Voiceコード(写真提供:JAVIS)

特定非営利活動法人 日本視覚障がい情報普及支援協会(JAVIS)が開発した進化系二次元コードです。わたくしは運用開始期のVIプラン作りからお手伝いしていますが、その目覚ましい成長には驚きを隠せません。利用者は無料アプリをインストールしたスマホほか専用端末でコードを読み取って音声情報にすることができます。一般的な二次元コードはウェブサイト情報へ飛ぶのですが、これはコードの中に情報そのものを格納し、通信環境になくても読むことができるものです。

体験デモページはこちら アプリ(無料)をインストールして試してください。

 スタートは自分の情報は自分で管理したい。いまや情報インフラへ展開。個人情報、預貯金、支払いなどの会計情報はこれまで他者の眼を介さねばなりませんでした。信頼関係が頼りですが、できれば自分で管理したい。その実績はすでにあなたの手元にあります。ねんきん定期便、マイナンバー通知書、水道料金のお知らせなどに入っています。さらにATM領収書やPOSレシート、医療機関領収書への導入も始まっています。コードの活躍は情報インフラにふさわしい拡張を続けています。日々刻刻と配信されるニュースを集約する情報サイトに併走する「読み上げるホームページ」とプッシュ配信の運営。観光地看板等アウトドア広報物、多種多様なパンフレット。GoToトラベル情報の配信等レジャー情報や地図アプリに連携したナビそして観光スポットへの誘導。作成運営したい自治体へは無償で作成アプリを提供、運営システムも充実しています。

 読めない人といえば、外国人の方々にも。これまでパンフレットも多数の言語バリエーション印刷が必要でしたが、ひとつまたは複数を載せることが可能です。一般的な二次元コードのようにウェブサイトへ飛ばせば、さらに多数言語同時搭載で省力化対応可能となります。自動翻訳ではなく、高度な翻訳専門会社が対応しているのも魅力です。利用者の生活がアクティブに激変しています。自らも発信する意欲も生まれ、JAVISサロンを通じて取り残されないアクションが進んでいます。

特定非営利活動法人 日本視覚障がい情報普及支援協会(JAVIS)ウェブサイト

Uni-Voice事業企画株式会社ウェブサイト

文字情報を自分の心地よい音声で利用するVOXX

 ウェルビーイングを事業とするREMEM(リメム)株式会社の技術です。こちらは印刷された文書に読み上げサービスを添わせていくことに特化しています。音声には先進の音声合成技術を使い、存在する音声を学習して利用することもできます。一般的な音声合成分野ではアニメのバーチャルキャラクターや今は亡き国民的歌手の新曲発表などアートとして魅力のあるコンテンツも生まれてきました。わたくしも一緒に関連技術利用を広く提案してきた石田尚人さん。彼の技術が最大活用されたこのVOXXでは誰でもが自分の心地よい音声で文書情報を手元に持てるようになっています。心地よい声で誰でも、いつでも聴けるサービスは株式会社メディアドゥの事業である視覚障害者向け電子図書館「アクセシブルライブラリー」として全国展開が始まっています。利用者は利用者カードに配されたQRコードをスマホなどで読むだけで専用のサイトに入ることができ、そこで音声図書を楽しむことができます。さらに合成の素材として個人の音声を使う技術が進化中です。例えば難病を患って、これから声が出せなくなる、そんな方の声を学習し、今後音声を失っても「自分の声」で発話することができます。心地よい音声はそれぞれに違う。それを自分のものにできる。展開が楽しみです。

VOXX利用概念図(写真・概念図提供 REMEM株式会社)
VOXX利用概念図(写真・概念図提供 REMEM株式会社)

VOXXウェブサイトはこちら

*「アクセシブルライブラリー」はデジタル庁good digital award 2022でグランプリを受賞しました。アワードサイトはこちら

*画像、映像のように音声の肖像権保護も必要になってきました。その確立が急がれています。

●聴こえない、聴き取りにくい。音の制限される環境も増えてきた。

 今年話題になったACジャパンの公共CM「寛容ラップ」では字幕、手話そして音声情報の情報保障を整えています。メインのラップや歌の掛け合い以上に手話通訳がカッコいいなと話題に。置き換えを超えた手話表現の豊かさとの良い出会いにもなっています。わたくしも情報保障監修参加の喜びを感じています。多様性テーマのドラマ、映画などで近年注目作が多い聴覚障害テーマ。それをきっかけに手話を学ぶ人も増えました。音声認識アプリの利用も急増。とりあえずインストールしてあるという人も多いと思います。こちらは音声を文字へ置き換え。対話としての言語の力は減りますが、つながりあうには文字は便利です。アプリの多くは自動翻訳で多言語にも対応しています。外国語、手話ともに習得の努力が必要ですが、アプリはつながるハードルを低くしています。

★音声認識アプリのお勧めはUDトーク

 ドラマでも活躍していた発話をスマホ画面で示す単独使用から、グループ連携使用さらにリモート会議やウェビナーまで対応し、誤変換の即時修正、議事録テキストデータ作成、タイムコード付き字幕データ作成ができる優れもの。わたくしもオン・オフあらゆるところで活用させていただいています。

UDトークホームページはこちら 無料版アプリのダウンロードも。

~情報社会で誰ひとり取り残さないために伝えるソリューション「情報保障」を当たり前にしましょう。~

情報取得で取り残されないための対応・技術の総称が「情報保障」です。常に情報保障はできている?と確認しましょう。対応しながら経験してきたことなのですが、一般人でも情報を読む方が得意な人、聴く方が得意な人がいます。情報保障は不得意な方の形態で提供される情報への理解を助け、活動運営を活性化します。

●「やさしい日本語」で情報保障すればさらに伝わる。

 これもこの数年で存在価値を高めている伝える会話技術です。わたくしも運営する研究会に賛同し、活用させていただいています。日本語は主語や結論が省略されたり、肯定・否定もあいまいに語られがちな超高文脈言語です。二重否定はその最たる例です。「やらないわけではない」これを翻訳アプリにかけてみると、相手は理解しにくそうにするでしょう。「できないかもしれない」「できないかも」この方が変換も伝わり方も良くなります。いいたいことをシンプルにすること。日本語の豊かな表現がそがれるとか、ニュアンスが伝えたいとか抵抗はあると思います。でも伝わる情報にすることが一番。一般社会においても音声認識と合わさってさらに活きたツールとなるのです。

参考:やさしい日本語ツーリズム研究会ホームページ

Part2では残り3テーマを紹介します。リンクはこちらです。

>記事関連情報

電通ダイバーシティ・ラボウェブサイト

PARADIS紹介ページはこちら

コミュニケーションデザイナー

金沢美術工芸大学卒。インクルーシブデザインで豊かな社会化推進に格闘中。2008年、現在の字幕付きCM開始時より普及活動と制作体制の基盤構築を推進。進行ルールを構築、マニュアルとしての進行要領を執筆し、実運用指導。2013年、豊かなダイバーシティ社会づくりに貢献する会議体PARADISを運営開始。UDコンサルティング展開。2023年7月(株)電通を退職後2024年1月株式会社PARACOM設立。 災害支援・救援活動を中心に可能な限りボランティア活動に従事。ともなってDX事業開発、ノウハウやボランティアネットワーク情報を提供。会議体PARADISの事業企画開発を担います。

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