今、アートで沸騰するダイバーシティ。(その2:パフォーマンス・アート報告)

車椅子ダンサー神原健太さんのステージ Photo:NPO法人Ubdobe

ダイバーシティはパフォーマンス・アートでジャンプする

2016リオパラリンピック閉会式で披露されたフラッグハンドオーバーセレモニーは半年経った今も、その美しさをまざまざと思い出します。パラリンピックのスポーツ競技に人間の極限への挑戦に感動。その締めくくりであり4年後へのハンドオーバーとしての崇高な美しさに溢れていました。そしてこのパフォーマンスは一つのイベント作品である以上に、日本のダイバーシティなアートの今を紹介し、知らなかった美と調和への参加とノーマライゼーション(全ての人が一体となるギャップのない社会化)の醸成を呼びかけたのです。ダイバーシティは躍動するアーティストの汗と笑顔とともにジャンプしています。この記事では知る人ぞ知る、じつに層の厚いアーティストと支える状況について報告します。

リオパラリンピック閉会式 NHK公式映像より

今、注目すべきアーティストたち

車椅子ダンサー 神原健太さん
車椅子ダンサー 神原健太さん

最初に紹介するのはリオパラ動画の8分20秒あたりから登場する神原健太さん。瞬時に畳まれる車椅子。その上で披露した、華麗で力強いダンスはこのステージで輝きを放っていました。リオの直後に行われた調布市のイベント、Think Handicap 「障害の知らないを知る、考える、体験する」のパネルディスカッションでご一緒しました。神原さんは請われての飛び入り参加。思いと実現することのすべてを語り、パフォーマンスも披露してくれました。その時に感じたのは、障害を乗り越える感動ではなく、表現者としてかっこいいという感慨。二分脊椎症のカラダを空中に掲げた造形と柔軟な一連の動作。それが圧倒的な個性となって観るものを魅了するのです。大手コンピュータ会社のシステムエンジニアをしながらのパフォーマンス活動歴はまだ2年。多くのコラボステージにもチャレンジ。これからさらに思いもかけない美の追求が見られそうです。

医療福祉系ダンスパフォーマンス「THE UNIVERSE ~DAY LIGHT~」

次に紹介するのは聴こえなくても踊り、歌うアーティストたちです。聴覚器に障害があっても、輝く感性を持つ彼らの素晴らしさを紹介します。

手話パフォーマー 高木里華さん Photo:齋藤陽道
手話パフォーマー 高木里華さん Photo:齋藤陽道

手話パフォーマー高木里華さんはろう学校デザイン科を卒業し、10年のOL生活の後、手話歌創作と出会い、パフォーマー集団で活動。さらに専門学校でダンスを学びました。培った技術を天性の音楽性と演出力との融合でアートに昇華していきます。幻想世界からコメディータッチまで感性の豊かさで、聴こえない歌曲や物語が観えるモノとなり、魅せてくれます。ステージに登場すると、その美しい姿が立つだけでドラマが始まっています。

高木里華&THE KEY PROJECT 「何の為に…」

RIMI&おやじ手話ダンサーズ
RIMI&おやじ手話ダンサーズ

RIMIさんは奇形難聴障害の手話パフォーマー。障害者と一般者が一体となれる歌とパフォーマンスの舞台世界を創り出しています。写真のバックダンサーはRIMIさんのファンであり、サポーターであり手話を駆使して踊るおやじたちのチーム。RIMIさんの指導のもとで磨いた手話ダンスは、愛とやる気を届けています。

三郷市さつき祭り2016から

手話パフォーマー RIMI 芸能生活20周年感謝チャリティーライブ手話パフォーマーRIMIの芸能生活20周年感謝チャリティーライブ 絆 ~KIZUNA~は4/9(日)赤坂区民センターで開催。20年で到達した、見せて、聴かせる舞台を体感するチャンスです。

高木さんとRIMIさんには共通点があります。お二人とも東京ディズニーシーのライブショー「レジェンド・オブ・ミシカ」に出演していました。見事な手話パフォーマンス。手話とは知らずに美しいパントマイムと思っていた方もいるでしょう。今はもう上演されていませんが、このようなステージを用意したり、障害のある方へのエンタテイメント溢れるホスピタリティの完成度でTDRはパフォーマンスアートの守護神です。

手話は日本語でありつつ、日本語そのものではない言語。聴こえない人に見える声です。そしてその所作に込められた素晴らしい美しさ。お二人に続く若きパフォーマーたちを紹介します。

しゅわップringミユキさん
しゅわップringミユキさん

しゅわップringミユキさんは手話タップダンサー。新年度から日本タップダンス協会のノーマライゼーション推進担当理事に就任しました。力強いタップとともに、ダイバーシティな展開を構築してくれる頼りになる人材です。自身は聴者であり、失聴者の仲間とともにエネルギッシュなステージ作りにまい進。同時に普及活動としてのYouTube番組「しゅわップring TIME♪」を制作。5周年を迎えています。

ミユキさんと慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科が開発したKARADATAPとのコラボなど、先進技術との取り組みももうすぐ花開きそうです。

左:水戸真奈美さん(手話シンガー)右:貴田みどり(ろう者ダンサー・女優)Photo:(株)プラスヴォイス
左:水戸真奈美さん(手話シンガー)右:貴田みどり(ろう者ダンサー・女優)Photo:(株)プラスヴォイス

POPS歌手の水戸真奈美さんは優雅な手話と豊かな声をコラボさせる表現者であり、ユニバーサル・エンタテイメントのプロデューサーにも挑戦しています。「命、生きる力」は東京公演に続いて昨年は仙台で「手が未来を詩う」を上演。ろう俳優で演出家の庄崎隆志さんとともにダイバーシティな個性ある出演者、ダンサーを起用し、UDトーク、音声解説、抱っこスピーカーなど情報保障・感動共有ソリューションでの観客サービスにも工夫を凝らした、まさにユニバーサルエンタテイメントを創り出しています。

ろう俳優・演出家 庄崎隆志さんPhoto:(株)プラスヴォイス
ろう俳優・演出家 庄崎隆志さんPhoto:(株)プラスヴォイス

題材は広島の被爆、東北の震災というつらい現実の過去を超えていく命の強さ。それを支えて、包み込む人のぬくもりという永遠不変の欠かせない熱さ。ユニバーサルエンタテイメントとしての仕立てと取組だからこそ伝わる力が倍増しているのです。バックステージを支えるスタッフ、技術のすべてと熱意が手をつないだ絆そのものです。

来たるべき世代と活かすべき経験とダイバーシティ・アート業界ビジネス

紹介したアーティストはほんの一部に過ぎません。しかしダイバーシティな才能が目指すステージはまだまだ少なく、芸術性の高さでの評価もこれからです。その1、1.5で報告した美術は作家とともに有形の作品が社会に出ていき成長し、コレクター市場を創り出していきます。それに対してパフォーマンスアートは共有される無形のひと時の提供。言ってみればこれは祭りへの参加です。それゆえにビジネスに乗せることが難しい。古典の時代から音楽や演劇はパトロンによる資金援助で成り立ってきました。ワグナーの劇場などもそうです。現代も実は企業協賛と入場料の二本立てでの採算化。10年前ならCDやDVDというセル市場がありました。現在は動画サイトやSNSでの共有がスタンダード化。活躍の場も劇場からフラッシュモブのような路上の一瞬まで。対価を得るにはどうすべきか、同資金調達するか、それを考えるプロデュース能力が重要です。

IT業界の中枢で30年にわたって活躍し、社会とソリューションの未来図を先読みする教祖、井下田久幸さん(ドルフィア株式会社代表取締役)。今、井下田さんが注力している若い才能、上田若渚さんは愛知県で生まれ育った17歳。全盲の歌姫と呼ばれる彼女は、活躍の場を渇望しています。

明るい笑顔と鮮やかな歌声。全盲の歌姫上田若渚さん
明るい笑顔と鮮やかな歌声。全盲の歌姫上田若渚さん

井下田さんはクラウドファンディングで資金調達し、昨年10月東京表参道のアイビーホールでのコンサートを実現しました。次は2017年12月24日のクリスマスイブ。13時から目黒パーシモンホール(1200人収容)での本格的公演。実現のための手腕がものをいう時となります。かつての全盲の天才少年、木下航志さんは現在27歳。和製スティービーワンダーと呼ばれる存在に育ちました。

井下田久幸さんと上田若渚さん 2016年10月のコンサートにて
井下田久幸さんと上田若渚さん 2016年10月のコンサートにて

クラシックの世界は全盲の自立した音楽家の宝庫です。ピアニストの辻井伸行さん、バイオリニストは梯剛之、最近では白井崇陽さん、川畠成道さんなど多くの才能が開花しています。井下田さんが支える若渚さんがどんな大輪の花となるか、楽しみです。彼女は東京パラリンピックの陸上競技出場も目指しているのだそうです。走れ、アーティスト!歌え、明日の翼!

エンターテイメントの老舗、東京の明治座では昨年秋から画期的なダイバーシティエンタテイメントが上演されました。開演は20:30という日本ではかつてなかったナイトライフスタイル。外国人観光客そして聴覚障害のある観客に対応するダイバーシティ対応に音響通信によるデバイス制御ソリューション「Another Track」を採用。

観客は自分のスマホやタブレットに専用アプリをダウンロード。自分のOS言語で翻訳された字幕を見つつ、さらに舞台に向けるとファンタジーなCG効果を演出し、それを入れ込んだ写真を保存することもできるのです。メガネ型ディスプレイ「モベリオ」でもこの演出と字幕をダブル活用。会場ホールではロボホンが音声ビーコン制御で正確な位置情報連携での販売店舗案内、歓迎スピーチをこなしていました。残念ながら3月31日が千秋楽。今後のさらなる展開を企画中。この技術はすでにユニバーサル薪能として成熟されており、技術面でのサポートはかなりの充実段階に入ったと言えるでしょう。この技術があれば観客だけでなく、アーティストにも役立つはずです。メガネ型端末でタイミングや音程サポート情報を送れば、難聴、失聴者、多国籍演者のアクションをサポートできます。技術が進めばコンタクトレンズや骨伝導発振デバイスなら観客には見えない装着が可能になるはずです。

聖なる祭り。心躍り、人踊る祭り。ハレの日と日常とアート。

Warm Blue2017活動メンバーのみなさん Photo:(株)プラスヴォイス
Warm Blue2017活動メンバーのみなさん Photo:(株)プラスヴォイス

明日、4月2日は世界自閉症啓発デー。毎年、世界中を青く染めるアクションが実施されます。東京では渋谷や表参道を中心にアーティストが集結。一般市民もみんなで「青いものを身につけて」参加します。あなたも是非。

Warm Blue2017ホームページ

祭り、フェスティバル、ライブなど毎週末に開催されるイベント。そこで披露されるパフォーマンス。被災地や地域興しにも祭りイベントは欠かせません。しかしともすると疲労感にさいなまれることにもなります。パフォーマンスアートが活きるイベントであることが、その懸念を吹き飛ばす時代の風となることを願っています。次回の記事はアクションという観点でダイバーシティをとらえたハレの日と日常のつながりをレポートしたいと思います。お待ちください。

アートで沸騰するダイバーシティ その1はこちらです

アートで沸騰するダイバーシティ その1.5はこちらです