今、アートで沸騰するダイバーシティ。(その1.5 美術の輝き)

アールブリュット?アウトサイダーアート?それとも?オープニング Foster提供

大盛況のアートフェア東京を振り返って

3月16~19日、東京国際フォーラムで開催されたアートフェア東京はこれまで以上の盛り上がりでした。主催者発表では入場者数57,800 人(昨年対比 103%)過去最多であり、出展者、参加企業、後援の数、多彩さにも注目です。

3/21発表 一般社団法人アート東京プレスリリース

展示、ライブパフォーマンス、関連イベントとそこに集う人々の熱気は通常の美術展示イベントや販売会とは一線を画しました。わたくしが目を奪われたのは、熱気以上に入場者に共通する雰囲気です。多数の入場者が集まる展覧会、アートイベントに集まる人々が醸し出しているのは、美を学びたい、眼福を得たい等知的好奇心ですが、アート東京で感じるのは知ることや体験欲求を基盤に、作品を所有すること、作家を支援することで自分の日々と未来そして社会の価値に投資しようとする人々の感性でした。

オープン間もなく、早くもあちこちで商談成立。:筆者撮影
オープン間もなく、早くもあちこちで商談成立。:筆者撮影

資産購入のために来場するセレブから、まだ若い社会人が自分の毎日と新進作家に投資するために目を輝かせる姿まで、そこには欲望ではなく、純粋な「投資意欲」がありました。景気に大きく揺さぶられがちなアートコレクションですが、アート先進国としてその純粋な投資を途切れさせない日本になってほしいものです。そしてその中で真のアール・ブリュットの理解と市場化と自立する作家環境の成長が期待されます。アートフェア東京はその大事なメインイベントとなってきたと言えるでしょう。2018 年は3/8~3/11予定。アートのダイバーシティ成長が楽しみです。

その1美術市場報告の記事はこちらです。

今からアール・ブリュットに触れるなら

アール・ブリュットのリーダ工房ギャラリー インカーブ|京都の展示を観たかったという方が多くいらっしゃいました。インカーブと共鳴するギャラリー展示が開催されています。『アール・ブリュット?アウトサイダーアート?それとも?-そこにある価値-展』が東京・表参道 GYREで4月2日まで開催されています。

展示情報:主催Fosterウェブサイト

会場と展示パンフレット
会場と展示パンフレット

主催するFosterの杉本氏はアートナビゲイターとしてまたアーティストも包括する志ある生産者と生活者の出会いを演出するソーシャルデザイナーとして活躍しています。今回の展示においても作家の発掘とサポートそして作品そのものが成長するプロデュースに尽力しています。発掘された新進の作家人材たち。その中には70歳でスタートし、その瑞々しい感性に驚かされた作品もありました。作家たちに多く見られる強烈な筆圧と緻密な線描、リズムの集中。同じようで、個性的。実に多彩です。

展示作品と代表の杉本氏
展示作品と代表の杉本氏

発掘し、制作環境をサポートし、作品の本質を引き出すために額装、展示手法、プロフィール提示そしてパンフレットまで高いセンスでマネジメントされているからこそ、作品のパワーが輝きを放っています。みなさんにも経験があると思いますが、家族が描いた絵または書などをそのまま壁に貼るのではなく、額に入れるだけで、小さな宇宙ができます。作品との対話はそこから始まり、受け手の眼と保護が作品を育てるのですね。アール・ブリュットの作家とは自立した制作者でありつつ、さらに社会に提供する者です。作家によっては障害のためにその判断や承諾が難しい方もいます。ご家族、所属する施設や作業所の意向で作品を手放すことを拒否されることもあります。それは幸せを守るための強く、温かい気遣いです。でももう一歩進むことができたら、そのアートが社会に貢献し、制作環境を作家自身で整えて、さらに社会の構成者として納税さえできるようになるでしょう。その道は拓かれ始めたばかりです。少しづつ、少しづつ進みましょう。

その1でも紹介しましたが、「Art Brut・TAMA」は永井画廊立川ギャラリーにて4月29日(土)-5月7日(日)展示会を開催します。TV鑑定番組で活躍する永井龍之介氏がこの展示のために所有する作品倉庫を改造したとのことです。

*永井画廊立川ギャラリー 立川市富士見町1-25-24NISHIビル4階(JR青梅線西立川駅南口から徒歩5分)★展示情報はまもなく公開されます。

アール・ブリュット立川2016から 手前の作品は額装まで作家がこだわっています
アール・ブリュット立川2016から 手前の作品は額装まで作家がこだわっています

バリアを乗り越える技術支援

その1で紹介したパナソニックの視覚障がい者美術鑑賞実証実験。大きな期待が寄せられています。その1.5としては情報保障という視点で特筆したいチャレンジを報告します。視覚障害者の鑑賞とコレクションの可能性とともに、権利や財産権を守る仕組みが重要となります。そのソリューションのひとつとしてわたくしが注目しているのが二次元バーコード「Uni-Voice」ユニボイスです。見えないために大切な書面や金銭取引を他人の眼にゆだねることがこれまでは課題でした。ユニボイスはすでに年金定期便DM、マイナンバー通知書に採用され、個人情報を自分の携帯端末で確認できるようになっています。

国民年金対象者全員に送られる年金定期便DM 右下隅にあるのがユニボイス。(資料:ユニボイス事業企画提供)
国民年金対象者全員に送られる年金定期便DM 右下隅にあるのがユニボイス。(資料:ユニボイス事業企画提供)

音声コードUni-voiceウェブサイト<ユニボイス、視覚障害対応ユニボイスBLはスマホの無料アプリです。App Store 、Google Playでダウンロードしてください。>

この技術は正確な多言語対応も実現し、観光地での説明資料、看板にも導入されています。さら信号機のパネルでの交通情報アクセスなど

屋外案内情報にも活用され、都区内ではビーコンシステムと連携した情報発信・取得実証実験が開始されることになりました。

展示実例資料:札幌時計台資料館 (ユニボイス事業企画提供)
展示実例資料:札幌時計台資料館 (ユニボイス事業企画提供)

今後のプランとして重要事項の説明書、契約書、保証書などアート取引に関する書類を視覚障害者、外国人そのほか様々な文字の読めない方に対応できる文書作成システムそしてセキュアーなID、パスワード管理でコードが入っているだけの一枚の書面が書き込まれた情報をがっちりガードするシステム化を計画しています。テーブルに放置しても大丈夫な契約書。誰にとっても使える技術になることでしょう。

二回にわたって掘り起こしてきた美術市場のダイバーシティ。これはほんの一部に過ぎません。人工内耳のように、デバイスでとらえた映像を脳に送り込むヘッドセットの研究も国内外で投資開発が始まっています。たとえばオックスフォード大の残存視力の拡張技術。再び動態を捉えられる喜び。技術が成長し、全盲のコレクターが自分の愛する作品鑑賞できるなら。それは究極の理想です。

では次回その2は、パフォーマンスの世界のダイバーシティです。皆様、よろしくお願いします。