Yahoo!ニュース

2023年流行ったスイーツは?フードライターがトレンドを振り返り

笹木理恵フードライター
「しろいし洋菓子店」のクッキー缶とパウンドケーキ ※筆者撮影

2023年はどんなスイーツが話題を呼んだでしょうか?フードライターが取材や体験を通じて、トレンドを振り返ります。

人気店が続々参入。焼きたての焼き菓子

焼き菓子をテーマにした催事やポップアップは、ファンの多い人気イベントに ※筆者撮影
焼き菓子をテーマにした催事やポップアップは、ファンの多い人気イベントに ※筆者撮影

ここ数年、パティスリーの店頭でもよく見られるようになった「当日焼きたての焼き菓子」。フィナンシェを筆頭に、カヌレやマドレーヌなどが山積みにされている光景は視覚的にも訴求力があり、焼きたてならではの食感や香りを楽しめると評判です。

焼きたてのフィナンシェは、遡ると2011年3月に誕生した「ノワ・ドゥ・ブール」(新宿伊勢丹)から注目を集めるようになり、その後、「ラトリエ ドゥ ヒロワキサカ」(神奈川・武蔵小杉/2018年8月開業)、「フキアージュ」(東京・調布/2021年11月開業)など人気パティスリーでも販売されるように。さらに、レストランから派生した予約制パティスリー「ドルチェタクボ」(2021年12月開業)の登場で、付加価値が一気に向上。時を同じくして、百貨店の催事やポップアップなどでも焼き菓子をメインに扱うことが増え、ファンが広がっていったと考えられます。

「パティスリー&カフェデリーモ麻布台ヒルズ店」では、店頭でフィナンシェなどを販売 ※筆者撮影
「パティスリー&カフェデリーモ麻布台ヒルズ店」では、店頭でフィナンシェなどを販売 ※筆者撮影

2023年は、「自由が丘ロール屋」(東京・自由が丘)や「シャンドワゾー」(埼玉・川口)などの人気店がリニューアルに際して焼きたての焼き菓子を取り入れたほか、パフェが人気の「パティスリー&カフェデリーモ麻布台ヒルズ店」でも新たなコンテンツとして焼きたてのフィナンシェを導入しています。焼き菓子はお菓子屋さんにとっても製造効率や利益率の面で優秀な商品であり、今後も取り入れる店が増えていくのではと予想しています。

ますます拡大!ヴィーガン/プラントベースのスイーツ&パン

ヴィーガンジェラート専門店「TUTTO」。お洒落なお店づくりも話題に ※筆者撮影
ヴィーガンジェラート専門店「TUTTO」。お洒落なお店づくりも話題に ※筆者撮影

コロナ禍の健康志向の高まりもあり、じわじわと増えてきていた「ヴィーガン」や「プラントベース」のスイーツやパン。昨今は大手や実力パティシエ・パン職人の参入も増えており、2023年5月には、製菓・製パン材料を扱うECサイト「cotta(コッタ)」が植物由来を中心とした新しいECメディア「cotta tomorrow(コッタトゥモロー)」を設立。植物性油脂や業務用チョコレートなどを製造・販売する不二製油と業務提携し、豆乳由来のバターやクリームなどを展開し、世に広く知られるきっかけを作りました。

また、毎週日曜のみ、ヴィーガンのパンを提供していた「モアザンベーカリー」から2023年6月、人気アイテムのドーナツに特化したヴィーガンドーナツの専門店「SUNDAY VEGAN」が誕生。ヴィーガンジェラート専門店「TUTTO 清澄白河」(2023年1月オープン)など、ファッショナブルな専門店も多数登場しています。

また2023年12月には、ファミリーマートから植物性由来の原材料を使用したスイーツやパンが登場。モンブランとショコラテリーヌは発売されて2週間ほどで終売店舗も出るほどで、反響の大きさがうかがえます。 

反響の大きかったファミリーマートの植物生まれのスイーツ&パン ※筆者撮影
反響の大きかったファミリーマートの植物生まれのスイーツ&パン ※筆者撮影

取っつきにくい印象のあったヴィーガン/プラントベースのスイーツやパンが受け入れられるようになってきた背景には、原材料の進化により美味しさが向上したことに加え、地球環境や食糧危機への関心が高まっていること、ライフスタイルとして積極的に選ぶ人が増えてきたことなどが挙げられます。2024年以降も、市場は拡大していくと考えられます。

「没入感」を楽しむ、オンライン限定ブランド

「しろいし洋菓子店」のクッキー缶とパウンドケーキ ※筆者撮影
「しろいし洋菓子店」のクッキー缶とパウンドケーキ ※筆者撮影

2023年、印象的だった出来事が、スイーツブランドのBAKEが10月に立ち上げた「しろいし洋菓店」。焼きたてチーズタルト専門店「BAKE CHEESE TART」や、バターサンド専門店「PRESS BUTTER SAND」など、「店頭でできたて」にこだわり店舗ビジネスを中心にしてきたBAKEが手掛ける初のオンライン限定のブランドで、舞台となるのは架空のパティスリー「しろいし洋菓子店」を1階に構える”マンション・インディゴ”。商品はクッキー缶などの焼き菓子がメインですが、アートをテーマにした世界観が非常に作りこまれており、架空の世界への「没入感」という新しい体験が楽しめます。今後はポップアップなどリアルとの融合も展開していくそうで、今後のお菓子屋の新しい形を示してくれそうです。

海外から人気!「クロワッサンロール」&「パンスイス」

「パンスイス」は、表面の層の美しさも人気の理由 ※筆者撮影
「パンスイス」は、表面の層の美しさも人気の理由 ※筆者撮影

2024年、ベーカリー業界でヒットしたのが、「クロワッサンロール」(「シュプリームクロワッサン、「ニューヨークロール」とも呼ばれる」や、「パンスイス」などの折り込み生地を使ったパン。「シュプリームクロワッサン」は、ニューヨークで人気に火が付き日本でも話題に。クロワッサン生地を円形に焼き上げて中にクリームを詰め、チョコレートなどを飾ったもので、縦にして並べるディスプレイもよく見られました。

一方「パンスイス」も海外から人気は、クロワッサン生地の断面を表面にして焼き上げたパン。層が際立つバリバリとした食感も人気の理由。中はチョコチップやカスタードクリームなど定番のほか、ナッツなどお店によっていろいろなバリエーションがあるようです。

2024年、最初の注目は「チョコクッキー」と「体験型スイーツ」

作り手の表現が多彩な「チョコクッキー」。カジュアルに楽しめるのも人気の理由 ※筆者撮影
作り手の表現が多彩な「チョコクッキー」。カジュアルに楽しめるのも人気の理由 ※筆者撮影

2024年、スイーツのトピックは、スイーツファンにとって待望の「サロン・デュ・ショコラ」の開催やバレンタインをはじめとするチョコレートから幕を開けます。年々、ボンボン・ショコラ以外のチョコレート菓子のバリエーションが広がっていますが、筆者的に注目しているのが「チョコクッキー」。専門誌でも数年前に特集を組んでいますが、生地と中のチョコレートの組合せで様々な表現が可能なので、ぜひ注目して楽しんでいただきたいスイーツの一つです。

体験型チーズケーキ「メルティマジック」※筆者撮影
体験型チーズケーキ「メルティマジック」※筆者撮影

また、ほかの業界と同じく、スイーツ業界でも「体験」が価値を生む時代になっており、「しろいし洋菓子店」や、その場に行かないと買えない焼きたての焼き菓子、つくりたてのパフェなどはその代表例と言えます。オンラインでも「仕上げを楽しむ」ような体験型のスイーツが登場してきており、2023年4月に発売された「メルティ マジック」は、自分で炙ってブリュレのように楽しめる新感覚のチーズケーキ。スイーツを食べる時間そのものを楽しめるような商品が、今後も増えて来そうな予感です。

フードライター

飲食業界専門誌の編集を経て、2007年にフードライターとして独立。専門誌編集で培った経験を活かし、和・洋・中・スイーツ・パン・ラーメンなど業種業態を問わず、食のプロたちを取材し続けています。共著に「まんぷく横浜」(メディアファクトリー)。

笹木理恵の最近の記事