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「コンビニに求められるのはワンハンドスイーツ」 ファミマスイーツのヒットの理由

笹木理恵フードライター
ファミマの「生チョコのもちもちクレープ」(税込170円)

ここ10年で、発展を遂げてきたコンビニスイーツ。今回は、ファミリーマートの商品開発の舞台裏に迫る。

約7割が季節限定商品。洋菓子を主体に、ワンハンドスイーツに強み

ふわふわ生地とクリームのシンプルなおいしさが味わえる定番商品「ダブルクリームサンド(ホイップ&カスタード)」(税込138円)
ふわふわ生地とクリームのシンプルなおいしさが味わえる定番商品「ダブルクリームサンド(ホイップ&カスタード)」(税込138円)

ファミリーマートのオリジナルスイーツ「Famima Sweets(ファミマスイーツ)」。2018年秋にリニューアルを敢行し、シュークリームやプリン、クレープといった定番商品を中心に、原材料や製法を刷新。パッケージデザインも現行のものに変更し、より「本格感」を高めた商品づくりを行なっている。

店頭に並ぶチルドスイーツは、常時30~35品。このうち定番商品は、シュー2品、クレープ、チーズタルト、スフレ・プリン、クリームサンド、和菓子2品等計10品ほどで、季節限定商品が売り場の7割程を占めている。新商品は毎週3~4品発売されるため、年間で150~200品の新スイーツを開発していることになる。

チルドスイーツのうち、6~8割を占めるのが洋菓子のカテゴリー。価格帯は100円台の商品が中心で、ワンハンドで食べられるスイーツが売上の大きな柱となっているほか、スフレ・プリンやプリンパフェのようなカップスイーツも250円程度が多く、300円を超えるスイーツはあまりないのが特徴だ。

デザート・アイスグループの商品開発担当は5人。うち3人がチルドスイーツ、2人がアイスを担当している。その一人、スイーツ担当の佐藤さんは、「初期のコンビニスイーツは、店舗に配送する際にくずれにくいカップスイーツが主流でした。そこからシューやエクレアなどのワンハンドスイーツが売れるようになり、和洋折衷のスイーツなど、コンビニならではのスイーツが数多く販売されるようになりました」と説明する。「ここ10年で見ると、高価格帯の商品も売れるようになってきましたが、ワンハンドで食べられるスイーツの人気が俄然高く、コンビニに求められるのはその部分かなと改めて感じています」(佐藤さん)

2つのスイーツが同時に味わえる「スフレ・プリン」(税込278円)。
2つのスイーツが同時に味わえる「スフレ・プリン」(税込278円)。

最近のファミリーマートのヒットスイーツの筆頭格は、昨年11月に発売された「スフレ・プリン」(税込278円)。ふわふわのスフレとなめらかなプリンを同時に味わえる商品で、ファミリーマートとしては高価格帯の商品であるにもかかわらず、長期的なヒットを記録。勢いにのり、2019年4月に「スフレ・プリン ストロベリー(2019年6月販売終了)」、同年6月に「まっ白ミルクのスフレ・プリン(販売中)」を発売し、3商品の累計販売個数は約1,300万個。「『スフレ・プリン』のヒットを受け、他のカップスイーツも発売してみたのですが、「スフレ・プリン」以上の売れ行きには至っていません。『スフレ・プリン』は、2種類のスイーツが同時に味わえるという点で、特別感があるのが売れた理由だと思います」(佐藤さん)。ちなみに「スフレ・プリン」は、購入者の7割が女性客。30~40代以降の層が多く、夜の時間帯によく売れるので、仕事が終わってからのご褒美や癒しとして食べられていると分析される。

食べごたえのあるボリュームも評判の「もちもち生地のチョコバナナクレープ」(税込298円)
食べごたえのあるボリュームも評判の「もちもち生地のチョコバナナクレープ」(税込298円)

一方、ワンハンドスイーツでは、シューやエクレアなどの定番に加え、クレープ2品、クッキーサンド、クリームサンドの人気が高く、ファミリーマートのスイーツの個性となっている。とりわけクレープは、三角のケースに入った高価格帯の「もちもち生地のチョコバナナクレープ」(税込298円)と、四角い100円台の「生チョコのもちもちクレープ」(税込170円)の2種類を販売。もちもちの生地に、クリームなどの具がたっぷり入った仕立てが好評で、看板商品として成長してきているという。

若い世代に和菓子を!洋風仕立てのどら焼き

中のクリームを見せる仕立てにした「モンブランどら」(税込198円/現在は販売終了)
中のクリームを見せる仕立てにした「モンブランどら」(税込198円/現在は販売終了)

ファミマは都心の店舗が多いこともあり、最近は、純粋な和菓子よりも和洋折衷のスイーツの評判がよいという。例えば、どら焼きは、粒あんにこだわったスタンダードなどら焼きなども出していたが、比較的年齢の高い層が主要顧客となっている。もっと若い世代にも気軽に購入してもらえるように、洋の要素をがっつり入れたどら焼きとして作ったのが、「モンブランどら」(税込198円/現在は販売終了)だ。どら焼きの生地の上に、マロンホイップとモンブランクリームを絞り、見た目の華やかさもアップさせた。「生地を折りたたんでも割れない生地の開発には苦労しました」と佐藤さん。さらに、円形の生地の先端に三角に切った生地をつけ、ボリュームをアップするとともに、表面のクリームが先端まで絞ってあってきれいに見えるように工夫している。9月10日には、次のバージョンとして「宇治抹茶クリームどら」が発売される予定だ。

洋風どら焼き第2弾として9月10日に発売予定の「宇治抹茶クリームどら」
洋風どら焼き第2弾として9月10日に発売予定の「宇治抹茶クリームどら」

今年の秋冬は、「気軽に、まいにち」をテーマに、日常的に食べられるスイーツを強化していく方針だ。「ハンドスイーツ部門では、クレープなど成長している商品はありますが、スフレ・プリンのような看板商品を作っていきたいので、引き続き強化していく予定です。それとともに、カップスイーツも充実させ、30~40代がちょっと贅沢な気分を味わえる商品にも力を入れていく方針です」と佐藤さん。スフレ・プリンの次なる一手が楽しみだ。

フードライター

飲食業界専門誌の編集を経て、2007年にフードライターとして独立。専門誌編集で培った経験を活かし、和・洋・中・スイーツ・パン・ラーメンなど業種業態を問わず、食のプロたちを取材し続けています。共著に「まんぷく横浜」(メディアファクトリー)。

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