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真田広之が「SHOGUN 将軍」にかける情熱。「日本の時代劇通に納得してもらえるものにしたかった」

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
「SHOGUN 将軍」のプレミアに出席したキャストとフィルムメーカー

 戦国時代の日本をしっかりと当時らしく、かつハリウッドのスケールで描くドラマシリーズ「SHOGUN 将軍」のプレミアが、現地時間13日、ロサンゼルスのアカデミー映画博物館で行われた。

 建物に入る前の屋外広場には、着物や鎧を着せたマネキンが小道具と共に配置され、まるで昔の日本にタイムトリップしたよう。タレントたちが歩くカーペットは赤ではなく黒で、その周囲は桜で囲まれている。期待の大作がついに完成したことを祝福する気分がたっぷりだ。

 原作は1975年に出版されたジェームズ・クラヴェルによるベストセラー小説。舞台は1600年の日本。ある日、吉井虎永の領地に、外国人の乗った船が漂着する。航海士は、ジョン・ブラックソーンという名のイギリス人。日本のことを何も知らない彼の登場は、すでに緊張感に満ちていた状況を、複雑にかき回すことになる。

 製作はディズニー傘下のFXプロダクション。撮影はカナダのブリティッシュ・コロンビアで行われた。日本の家屋や街並み、衣装、せりふなど、どこを取っても不自然さがなく、ハリウッド作品を見ていることを忘れてしまうほどだ。一方、アクションシーンのクオリティなどはさすがで、まさに両方の良いところが合わさった形。それを実現させたのは、主演俳優としてだけでなく、プロデューサーとしても長年情熱を注ぎ続けてきた真田広之。

「原作をリスペクトしながらも、2024年版として、オリジナルな脚本にしたいとも思いました。原作はブラックソーンの青い目を通して1600年の日本を紹介する形が取られていますが、今や日本の文化はかなり世界に知られていますし、日本人の目線も入れて、日本のキャラクターや文化をできるだけ深くリアルに描こうと、最初に(ショーランナー/脚本家の)ジャスティン・マークスと話し合ったんです。それで今回は、かつら、衣装、小道具、所作指導の先生、すべて日本から呼びたいと思い、スタジオもそれを認めてくれました。彼らやバンクーバー、ハリウッドのクルーがお互いに尊敬し合い、教え合って、作品を作っていったんです」(真田)。

会場前の屋外スペースも、作品に合わせて日本的な雰囲気に
会場前の屋外スペースも、作品に合わせて日本的な雰囲気に

 虎永の野心的な家臣、樫木藪重を演じる浅野忠信、虎永が信頼する武将、戸田広松を演じる西岡徳馬も、日本をここまできちんと描いたハリウッド作品ができたことへの喜びを隠さない。

「僕たちでも日本の時代劇にはわからないことがありますし、アメリカやカナダの人たちにしたら、さっぱりわからないと思うんですよ。でも、そこを真田さんがちゃんとサポートしてくれて。日本人が見られる時代劇にするのは、至難の業だったと思います。それは真田さんが時間をかけて実現しようと思ったこと。感動しました」(浅野)。

「僕にとっても、それが一番の願いでした。バンクーバーで真田君に会った時に、『真田と俺で日本の武士道っていうのはこういうものだと(世界に)見せたい。だからこれを受けたんだ』って言ったんですよ。今までのハリウッドの作品には『これ、日本じゃないよ。中国だよね』って思うものがあったので、そういうのは入れないようにしようと。真田は、そういうことがないように、全シーンを見ていますからね」(西岡)。

 実際、真田は、撮影が終わってからも1年半をかけて、編集にも立ち会い、屋根の形や色から街並みの感じまですべてチェックをしたという。たとえ思いのままにすることが難しい状況があっても、できるかぎり本当のものを目指し続けた。

「すべてが揃っていたわけではないですが、料理と一緒。何か素材がなくても良い味が出せるとか、代用でその味になるとか、あるじゃないですか。とにかくオーセンティックな日本料理をお客様に届けたい。日本の時代劇通の人が見てくれて納得してくれるものを作りたいという思いが根底にあったので、そこは戦いながら死守しました」(真田)。

 世界はまもなくその料理を味わえる。

「SHOGUN 将軍」は、2月27日、Disney+の「スター」にて配信開始。

写真は筆者撮影。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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