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「パイレーツ・オブ・カリビアン」6作目、主演は話題の女優?ジョニデファンが騒然

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
「パイレーツ」6作目に主演かと噂のアヨ・エデビリ(写真:ロイター/アフロ)

 待ちに待たれた「パイレーツ・オブ・カリビアン」6作目の主演は、ジョニー・デップではなく、今大注目のあの女優。そんなニュースが、デップのファンを騒然とさせている。

 X(旧ツイッター)に「Unlimited L’s」というハンドルネームのユーザーが投稿したスクープによれば、ディズニーは「パイレーツ・オブ・カリビアン」新作の主演にアヨ・エデビリを検討しているとのこと。ドラマ「一流シェフのファミリーレストラン」でプライムタイム・エミー賞を含む数多くの賞を受賞し、昨年のヒット映画「ミュータント・タートルズ:ミュータント・パニック!」でエイプリルの声も務めたエデビリは、今、ハリウッドで最も勢いに乗っている女優のひとりだ。スタンダップコメディでキャリアを始めた彼女はこのシリーズに必要とされるユーモアのセンスも抜群。近年のハリウッドの多様化への努力という観点からも、意味をなす。

 しかも、彼女の役は、18世紀に実在したアイルランド生まれのアン・ボニーという女性の海賊をモデルにしたキャラクターとのこと。ボニーと、メアリー・リードという名のパートナーが逮捕された時には、女性にそんな凶暴なことができるのかと、世間を驚かせたそうだ。そのキャラクターは、たしかに興味深い。

 だが、そこは問題ではないのだ。以前からソーシャルメディアで「#NoJohnny NoPirates」と声を上げてきたデップのファンは、デップ以外の主演で「パイレーツ」新作を作るのは受け入れられないと、早くもボイコットを表明。「デップじゃないなら見ない」「ジャック・スパロウはデップが作り上げたキャラクター。誰にも取って代わることはできない」など、Xにはすでに多数の批判コメントが寄せられている。

エデビリが出るかもしれないのはスピンオフ

 それを受け、RPKのダニエル・リクトマンという男性が、その情報のソースは自分であると名乗り出て、自らの投稿で情報を修正した。彼によれば、エデビリが主演を務めるかもしれないのは「パイレーツ」6作目ではなく、スピンオフ。また、スピンオフ映画はこのひとつではなく複数が企画されており、エデビリはそのうちのひとつの主演にふさわしいタイプであるというだけで、必ずしも彼女と決まったわけではないとも明かした。

 ディズニーやプロデューサーのジェリー・ブラッカイマーはコメントをしておらず、この噂の真偽のほどはわからない。しかし、デップの元妻アンバー・ハードが「Washington Post」にDV被害経験者として意見記事を書いた後、ディズニーはデップを「パイレーツ」6作目から降板させ、シリーズを新たな方向に持っていくと語っている。正式な契約書は交わされていなかったものの、デップは6作目の出演料として2,250万円をもらえることになっており、ハードの記事のせいでデップがこの大事な役を失ったのかどうかは、2022年にヴァージニア州で行われたデップとハードのお互いに対する名誉毀損裁判の大きな焦点だった。

 結局、デップはこの裁判に勝ち、ハードに対するDVはなかったと証明。しかし、疑惑が晴れてもいまだにメジャースタジオは彼を起用することを恐れ、活躍の場はインディーズ映画への出演や監督、音楽、絵画、ディオールのCMへの出演などに限られている。証言の中で、デップは、たとえ真実が明らかにされたとしても、一度こういった疑惑をかけられてしまったら完全に元に戻ることはないと無念さを告白していたが、まさにその通りになったのだ。

 裁判の後、ディズニーにデップをまた「パイレーツ」に起用するつもりはあるかと聞かれたブラッカイマーは、「それは彼らに聞いてもらわないと。私が答える質問ではない」と言いつつ、「私はまた彼に出て欲しい。彼は友人で、優れた俳優。私生活がいろいろなところに入り込んでくるのは残念なことだ」とも述べていた。それは少しの希望を感じさせはするものの、はっきりした答とはほど遠い。

 そんな中、昨年秋には、「THE LAST OF US」「チェルノブイリ」などで知られる脚本家クレイグ・メイジンが、「Los Angeles Times」への取材で、6作目の脚本は完成していると語った。このシリーズを手がけてきたテッド・エリオットと一緒に考えたストーリーは本人いわく「とても奇妙」ながら、スタジオは意外にも気に入ってくれたのだそうだ。このインタビューは俳優のストライキ中に行われたもので、ストライキが終わればすぐ走り出すであろうと彼は匂わせていたが、今もまだ動きは見えない。その脚本にジャック・スパロウが登場するかどうかも、わからないままだ。

メインの話の次はどうなるのか

 デップが降板させられた後、ブラッカイマーは、次の「パイレーツ」映画には、マーゴット・ロビーが主演するバージョンと、そうでないバージョン、ふたつの企画を進行させていると語っていた。最近になってロビーがインタビューで「自分のバージョンがボツになった」と述べた時も、ブラッカイマーは「優先順位が低くなっただけ」と、その企画はまだ生きていると訂正している。

 つまり、「パイレーツ」のユニバースでは、今後、エデビリのようなタイプの女優やロビーが主演する映画が生まれてこようとしているということ。そうやって広げていける幅は、たしかにあるだろう。だが、デップのおかげで成功し、5作も作られてきた肝心のメインの話の次は、どうなるのか。5作目の公開から7年、勝訴から1年8ヶ月。デップのファンは朗報を待ち続けている。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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