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ロッテルダム国際映画祭が開催。日本作品も複数上映

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
ロッテルダム映画祭は今年で53年目(筆者撮影)

 オランダはロッテルダムで、第53回ロッテルダム国際映画祭が開催されている。ヨーロッパはもとより、アジア、アメリカ、中近東からも、新鋭監督、ベテラン監督の作品が集まるこの映画祭には、日本の監督の作品も出品されている。

 オープニング作品として上映されたのは、ニュージーランド映画「Head South」。ジョナサン・オギルビーが脚本を書き下ろし、監督も務めるこの映画の舞台は1979年のクライストチャーチ。両親が別居し、兄はイギリスに引っ越して、父とふたりで暮らす高校生のアンガス。学校でも目立たず、ぱっとしない毎日を送っている彼は、バンドをやっているふりをし続けたところ、本当に舞台に立たなくてはいけなくなる。音楽と成長物語をミックスした、馴染みのあるタイプの青春ものだが、意外なラストが印象に残る。

オープニングを飾った音楽青春映画「Head South」(Dougal Holmes/IFFR)
オープニングを飾った音楽青春映画「Head South」(Dougal Holmes/IFFR)

 コンペ部門は、「タイガー・コンペティション」、「ビッグスクリーン・コンペティション」、短編が対象の「タイガー・ショート・コンペティション」の3種類。どちらの部門も、作品はすべてこの映画祭でワールドプレミアされる新作揃いだ。

「タイガー・コンペティション」は新進監督にフォーカスするもので、全14作品の中には日本作品田中稔彦の「莉の対」も含まれる。審査員はマルコ・ミュラーら。タイガー賞受賞者には4万ユーロ、審査員賞受賞者には1万ユーロが与えられる。「ビッグスクリーン・コンペティション」は、商業的作品からアートハウス系まで幅広い作品を集めたもので、受賞作はオランダでの劇場公開、テレビ放映が約束される。賞金3万ドルは、フィルムメーカーと配給会社が分かち合う。

 コンペ以外のラインナップも充実。たとえば、デンマークからオスカー国際長編映画部門にエントリーされながらも惜しくも候補入りを逃したマッツ・ミケルセン主演、ニコライ・アーセル監督の「The Promised Land」、昨年のヴェネツィア映画祭でお披露目されたレア・セドゥ主演、ベルトラン・ボネロ監督の「The Beast」、アンヌ・フォンテーヌ監督の新作「Bolero」など。日本作品では、濱口竜介監督の「悪は存在しない」や、松林うららの監督デビュー作などが上映される。クロージング作品はM・ライハン・ハリム監督の「ラ・ルナ」。昨年秋の東京国際映画祭でも上映されたが、今回はヨーロッパプレミアとなる。

 映画祭は2月4日まで。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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