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離婚申請から7年。ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリーがまだ揉めている

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
ハリウッドのパワーカップルだったブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリー(写真:Shutterstock/アフロ)

 2016年9月、アンジェリーナ・ジョリーが突然ブラッド・ピットに離婚申請をした時、ふたりの長男マードックス君は15歳だった。その後、韓国の大学に進学したマードックス君は、今や22歳の立派な青年だ。

 それだけの年月を経ても、ピットとジョリーは、まだ揉め続けている。先月末にも、ジョリーは、親権裁判を担当する判事たちにDVについてのトレーニングを義務付ける新たな州法を支持する手紙をカリフォルニア州知事に送った。結婚中、ピットからDVがあったとする彼女の主張を世間に思い出させる意味も持つのかと思われる行動だ。

 ハリウッドで最高のパワーカップルだったピットとジョリーは、一緒にいる間、お互いのことを「最高の父親」「最高の母親」と公に褒めちぎっていた。紙切れで愛の確かさは測れないと考えるふたりは、交際が公になってから9年経ってようやく、「子供たちが願うから」と正式に夫婦の誓いを交わしている。カップルが南仏に所有する、広大で美しい場所を、子供たちにお絵描きをしてもらったウェディングドレスを着て歩くジョリーは幸せそうに見えた。結婚後、ジョリーは、仕事で使う名前もアンジェリーナ・ジョリー・ピットに変更している。

 だが、それからわずか2年で、突然にして結婚生活は破綻。そこから長く、醜い争いが始まるのである。子供が6人もいることから、ジョリーとピットは結婚の話が出る前にも、万一別れたらどうするかについて決めていたと言われる。結婚が決まると、セレブの間では常識である婚前契約(pre-nup)も交わした。にもかかわらず、泥沼の状態になったのだ。

単独親権にこだわり続けるジョリー

 争いの最も大きな理由は、ジョリーが単独親権にこだわり続けることにある。アメリカでは共同親権が一般的な上、ピットは良いパパとして知られてきたため、離婚申請時にジョリーが単独親権を要求したことに、世間は驚いた。離婚申請の直前、プライベートジェットの中で酒を飲んだピットがジョリーと言い争いになり、止めに入ろうとしたマードックス君にうっかり体が当たったという出来事があったことはすぐそこに結びついたが、捜査の結果、ピットの容疑は晴れた。それでも子供たちは基本的にジョリーに引き取られることになり、ピットと子供たちの接触は監視付きの面会に限られてしまう。

 ピットは自分の行動を大きく反省し、これを機会にキッパリと酒を断った。そうやって努力を重ねた結果、2021年5月、ピットは裁判所から、すでに19歳で対象外のマードックス君を除く5人の子供について、50/50の共同親権を認められる。親権の半分を譲ることを拒否するジョリーは、ピットは親として信頼できる人物ではないと主張したが、心理カウンセラーを含む数々の証人はピットを支持する証言をし、ピットの念願はかなった。

2014年、子供たちを同伴して「マレフィセント」のプレミアに出席したジョリー
2014年、子供たちを同伴して「マレフィセント」のプレミアに出席したジョリー写真:ロイター/アフロ

 しかしジョリーはこれを受け入れたがらず、この裁判を担当した判事ジョン・アウダーカークがピットの弁護士とビジネス関係にあったとして、この案件から外すことに成功するのだ。それを受けて、50/50の共同親権の判決は流れ、裁判は振り出しに戻ってしまったのである。この裁判では、ジョリーの子供たち3人はジョリーに有利な証言をしてくれるつもりだったのに、アウダーカーク判事が許してくれなかったことにも、ジョリーは強い不満を持っていた。その経験も、ニューサム州知事に向けて新たな州法を支持する手紙を書く動機となったのだろう。

 だが、ピットとジョリーの揉め事は、親権以外にもある。ふたりが2008年に購入した南仏のワイナリーをめぐる争いで、こちらもまたかなり醜い。

ピットの情熱のワインの権利を無断でロシアに売却

 シャトー・ミラヴァルというこのワイナリーは、当時、ピットが6割、ジョリーが4割を払って購入。ピットはこのワイナリーに資金も労力も注ぎ込み、このブランドのロゼはアメリカで広く流通する人気商品となった。ふたりはこのワイナリーを2,700万ドルで買ったが、「Wine Spectator」によれば、現在の価値は1億6,000万ドル以上とのことである。

 ジョリーはこのプロジェクトにほとんどかかわっておらず、愛着もない。だが、そんな彼女は、昨年、何の断りもなく、自分のシェアをウォッカのストーリで知られる会社の子会社に売ってしまったのだ。その会社のオーナーはロシアの大富豪。彼らが半分をコントロールするとなると、ピットがこれまで一生懸命築き上げてきたブランドのイメージは大きな影響を受ける。

 それでピットは、この買収を食い止めるべく、ジョリーを訴訟。それを受けてジョリーは、自分の言い分を裁判所に提出した。それによれば、最初、ジョリーは自分のシェアはピットに売るつもりだったとのこと。だが、ピットはDVについて口外しないという秘密保持契約(NDA)を結ぶことを条件にしてきたため成立せず、ほかの買い手を探すことになったのだという。

 ジョリーは、具体的なDVについても言及している。ジョリーによると、場所は例のプライベートジェットの中で、ジョリーはピットに頭をつかまれて揺すぶられ、肩をつかまれてまた揺すぶられて、最後にトイレのドアに向けて押された。また、ピットは子供たちのうちの誰かとも言い争いになり、「パパが悪い」と言われると怒って追いかけ、子供を守ろうとしたジョリーは背中と肘を痛めることになったとも書いている。

2015年、子供たちを連れてロサンゼルス空港に到着したピットとジョリー
2015年、子供たちを連れてロサンゼルス空港に到着したピットとジョリー写真:Splash/アフロ

 一方で、ピットの弁護士は、NDAを持ち出してきたのはジョリーだったと反論している。ただし、その話が出てきたのは親権、離婚についての話し合いの中で、お互いについての悪口を公言しないというNDAに署名をしようとジョリーが提案してきたとのこと。ピットは合意し、そうジョリーに伝えたが、彼女からの反応はなく、そのままになった。ワイナリーのシェアを売る上でもNDAの話は出たが、あくまで買収内容についてであり、DVについてではないとも、ピット側は主張する。

一番下の双子が18歳になるまで親権争いを引っ張る

 ピットとジョリーが「Mr. & Mrs.スミス」の撮影現場で出会った時、ピットはジェニファー・アニストンと結婚していた。アメリカのスイートハートと呼ばれるアニストンから略奪し、アニストンのファンから嫌われるリスクまで負ったのに、今やジョリーは元夫は憎くてしかたがない存在のようだ。

 しかも、まだまだ憎むつもりでいるらしい。ピットの友人が「News Nation Now」に語ったところによると、ジョリーは、一番下の双子が18歳になるまで親権争いを引っ張るつもりだというのだ。双子は現在14歳なので、あと4年もある。そして、本当に4年も引っ張られたら、全部で11年も続いたことになる。すべてに決着をつけて、ふたりともが前を向いて歩いていける日が、それよりも早く来ることが待たれる。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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