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メーガン妃とハリー王子が恋愛映画を製作。しかしスターは出てくれるのか?

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
(写真:Splash/アフロ)

 Spotifyから契約を切られ、大手タレントエージェンシーUTAのCEOジェレミー・ジマーから「結局彼女はオーディオの仕事をやる才能がなかったということですね。いや、何の才能もない」とまで言われてしまったメーガン妃が、次の動きに出た。これまでのノンフィクションの枠から飛び出し、夫ハリー王子と一緒に恋愛小説の映画化に挑戦するというのだ。

 夫妻が380万ドル(およそ5億4,000万円)で映画化権を買ったその小説は、カーリー・フォーチューンが書いた「Meet Me at the Lake」。30代で出会った男女の恋を描いていく物語で、主人公のひとりは子供の頃、親を車の事故で失くしているという設定。舞台は、ハリー王子と交際を始めた頃にメーガン妃が「SUITS/スーツ」のロケのため滞在していたトロント。ハリー王子は回顧録「Spare」で違法ドラッグを使ったことがあると告白しており、過去のインタビューでは夫妻ともにメンタルヘルスの問題に直面したことを語っているが、この小説にもドラッグやアルコール、メンタルヘルスの要素が出てくるという。つまり、夫婦にとって共感できる部分が多いストーリーなのだ。

 さらに、出版社は「Spare」と同じペンギン・ランダムハウスである。「New York Times」の売り上げトップ10に入るほど売れているのに、プロデューサーとしての経験が乏しいこの夫妻が映画化権を獲得できたのは、おそらくそのコネクションのおかげではないかと「The Sun」は推測している。「Spare」は300万部以上を売る大ベストセラーになったので、出版社が感謝をしているのは間違いない(もっとも、この回顧録はこの夏バカンス地で最も捨てられていった本でもあるのだが)。さらに「The Sun」は、トロント在住の原作者と、トロントで時間を過ごしたメーガン妃は個人的な知り合いだとも示唆している。メーガン妃とハリー王子が映画化を手がけるとなると、話題には必ず上がるので、それが本の売り上げにつながることを、出版社と原作者は期待しているのかもしれない。

セレブリティはこの夫妻と距離を置き始めている

 この映画の企画は、メーガン妃とハリー王子がNetflixと結んだ複数作品の製作契約のひとつとして進められるようだ。とは言え、現在ハリウッドでは脚本家と俳優のダブルストライキが起きており、実際に動き出すのは先となる。これらのストライキが終わるまでは、脚本家を雇って脚色を始めてもらうことも、候補の俳優とミーティングを持つこともできない。ストライキがいつまで続くのかは、まるで見えない状態だ。

 それに、Netflixがこのプロジェクトに乗り気なのかどうかもわからない。メーガン妃とハリー王子がSpotifyから契約を切られた後、Netflixは「私たちは(メーガン妃とハリー王子のプロダクション会社)アーチウェル・プロダクションとのパートナーシップに価値を見出しています。これからも数多くの作品を一緒に手がけていきます」とコメントしたものの、その前にはメーガン妃が製作するアニメーション作品の企画を中止にしてもいる。また、メジャースタジオや配信会社が、このストライキを言い訳に、過去に結んでしまった大型契約を解消して経費削減をするのではないかということは、ストが始まって以来、ずっと言われてきていることだ。

 Netflixがこの映画に「価値を見出す」かどうかには、誰が出演するのかも関係するだろう。これまでも、Netflix作品は、数多くの映画スターを惹きつけてきた。だが、果たしてこの映画に有名スターは出てくれるのだろうか。

 今日、ハリウッドで活躍する俳優や女優の多くはプロデュースも手がけていて、どんなに大変な仕事かよく知っている。Spotifyの契約を切られた時、メーガン妃はポッドキャストに出てきたインタビューを自分でやっていなかったこともあるとの報道も出て、怠け者のイメージがついてしまった。それとは別に、メーガン妃とハリー王子がチャリティ関係の仕事に費やすのは週に1時間だけということもわかっている。経験が浅いだけでなく、仕事への意欲や態度に疑問があるプロデューサーの下で働くことに、俳優は不安を持つのではないか。

 何より、最近、セレブリティは、評判の下がっているこの夫妻と距離を置き始めているようなのだ。独占テレビインタビューで全世界の話題をかっさらい、ハリー王子と一緒にApple TV+のドキュメンタリーシリーズを製作したオプラ・ウィンフリーですら、セレブリティが多数集まった今年の誕生日パーティにメーガン妃を呼ばなかった。その衝撃テレビインタビューの時にはメーガン妃を支持するメッセージをソーシャルメディアに投稿し、メーガン妃のポッドキャストにも出演してくれたセリーナ・ウィリアムズが先週行ったベイビーシャワーにも、メーガン妃の姿は見られていない。

メーガン妃とハリー王子の結婚式に出席したベッカム夫妻
メーガン妃とハリー王子の結婚式に出席したベッカム夫妻写真:代表撮影/ロイター/アフロ

 最近はまた、デビッド&ヴィクトリア・ベッカム夫妻との不仲ぶりについても詳しく報道されている。ベッカム夫妻はメーガン妃とハリー王子の結婚式に出席したが、摩擦はその前から始まっていたとのこと。ファッションデザイナーでコスメにも進出しているヴィクトリア・ベッカムが親切心からメーガン妃にメイクやヘアのアドバイスをしてあげたことがメディアに取り上げられ、メーガン妃がリーク元はヴィクトリアだと決めつけて激怒したのがきっかけのようだ(ベッカム夫妻は否定している)。その後もメーガン妃はヴィクトリアのブランドから服やバッグを無料で提供してもらいたいと要求したが、それがブランドの売り上げアップにつながることはほとんどなかったという。ベッカム夫妻はウィリアム王子、キャサリン妃と親しく、昨年末、デビッドは、ウィリアム王子が立ち上げた環境のためのアースショット賞授賞式に出席し、キャサリン妃の頬にキスをした。それも、メーガン妃とハリー王子には面白くなかったらしい。

イギリス王室や王室を支持する一般人を敵に回すリスク

 論議をかもし出し続ける夫妻の味方だと立場を表明するのは、セレブリティにとってリスクを伴う。事実、ウィンフリーや、ハリー王子との仲の良さを見せつけてきたジェームズ・コーデンの人気は下がっている。イギリス王室の悪口を言って金儲けをしてきたこの夫妻と仲良くすることは、イギリス王室や、王室を支持する一般人たちを敵に回すことになりかねない。自分の映画がイギリスでプレミア上映される時、ウィリアム王子とキャサリン妃が来てくれるのは最高の光栄だが、メーガン妃とハリー王子のお仲間とあれば、ふたりは出席してくれないかもしれない。有名なスターや監督にとって、それは避けたいところだ。

 ただし、無名俳優にはそんなことを気にしない人も多数いるだろう。そもそも選べる立場にある俳優はひと握りなのだし、ストライキでずっと仕事がなかった後とあれば、仕事のオファーはとりわけありがたいはずだ。出演を受けることになるのは、どんな俳優たちなのだろうか。その人たちにとって、この夫妻との製作経験はどんなものになるのだろうか。まずは、ストライキに終わってもらってからだ。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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