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母子の異常な愛情?エリザベス・ハーレイ、息子の監督作でセックスシーンに挑む

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
エリザベス&デイミアン・ハーレイ母子(デイミアン・ハーレイのインスタグラムより)

 90年代、エスティ ローダーの看板モデルとして世界中に顔を知られたエリザベス・ハーレイも、もう58歳。だが、美しさは健在で、最近も彼女はビキニ姿の写真を誇らしげにインスタグラムに投稿している。

 そんな彼女は、次に、映画「Strictly Confidential」で若い女性を相手にセックスシーンに挑戦するという。驚きなのは、その映画の監督と脚本を務めるのが、彼女のひとり息子であるデイミアン・ハーレイだということだ。撮影は昨年末に終わっているようで、デイミアンは撮影にかかわった人たちに対するメッセージをインスタグラムに投稿している。中でも一番感謝しているのは、「美しく、すばらしい母」だ。

「彼女は、2010年、僕が初めて短編映画を作った時(僕は8歳でした)、僕が初の長編映画を作ることになったら出演すると約束してくれました。その言葉通り、ママは、この映画にゴーサインが出たとたん、すべてを放り出して、僕を助けるために美しいカリブ海に来てくれたのです。一緒にお仕事できて、夢のようでした」と、デイミアン。8歳だった息子にその約束をした時、それがエロチックスリラーになるなど、エリザベスはまさか予想していなかっただろう。それでも彼女はその役を引き受けたのだ。

「The Sun」が報じるところによると、この映画の主人公は、ミアという名の若い女性。自殺をした親友レベッカの命日を、ミアと大学時代の友人たちは、カリブ海にあるレベッカの実家で過ごすことになる。だが、レベッカの家族やほかの招待客と時間を過ごすうちに、ミアは、ここにはレベッカにまつわる大きな秘密があると感じ始める。そんな中で、ミアはセックスと裏切りに満ちた世界に引き込まれていく、という物語らしい。

(デイミアン・ハーレイのインスタグラムより)
(デイミアン・ハーレイのインスタグラムより)

 モデルのデイミアンにとって、これは監督、脚本家としてのデビュー作。20年以上前には「オースティン・パワーズ」、「悪いことしまショ!」などハリウッド映画に出演したエリザベスも、女優として活動を続けてきているとはいえ、最近の仕事はほとんど話題になっていない。だが、意外な形でのこの母子のコラボレーション作品は、公開となれば間違いなく人々の好奇心を掻き立てるはずだ。

「自分の子ではない」と言われDNA検査

 ここまで親密なのが普通かどうかはともかく、この母子の絆が強いのには、それなりの背景がある。デイミアンが命を授かった時から、この母子は多くのことを一緒に乗り越えてきたのだ。

 90年代、エリザベスとヒュー・グラントは人が羨むスーパーカップルだった。ヒューがロサンゼルスで売春婦を買って現行犯逮捕され、大恥をかかされた時も、彼女は彼を捨てず、寄り添ってあげている。しかし、2000年5月、ふたりは13年の恋に終止符を打つ。デイミアンの父となるアメリカ人の富豪で映画プロデューサーのスティーブン・ビングとカジュアルな関係を持つようになったのは、そのすぐ後だ。

ヒュー・グラントと。1996年
ヒュー・グラントと。1996年写真:ロイター/アフロ

 エリザベスの妊娠を知ったスティーブンは、自分の子ではないはずだと言い張り、DNA検査を要求した。検査の結果、自分の子だとわかると、スティーブンは、年に10万ポンド(今日の換算レートでおよそ1,800万円)の養育費を支払うと申し出る。だが、エリザベスは断固として受け取らず、息子をスティーブンに会わせることをしなかった。

 2002年のデイミアンの誕生からまもなく、エリザベスは実業家アルン・ナイヤルと交際を始め、2007年に結婚。夫妻とデイミアンは400エーカーのオーガニック農場で家族として暮らし始めるも、2011年、エリザベスが離婚を申請。その3ヶ月後、彼女はオーストラリア人元クリケット選手シェーン・ウォーンと婚約し、その翌年にはイギリスのヘリフォードシャイアに家を買った。だが、晴れの日を迎えないまま、2013年、ふたりは破局する。

シェーン・ウォーン、エリザベス・ハーレイ、デイミアン・ハーレイ。2012年
シェーン・ウォーン、エリザベス・ハーレイ、デイミアン・ハーレイ。2012年写真:Splash/アフロ

 そんな中、デイミアンは、母が主演するアメリカのテレビドラマ「The Royals ザ・ロイヤルズ」にゲスト出演して俳優デビュー。16歳になった2018年には、モデル事務所と契約した。2020年になると、ケイト・モス、ミランダ・カー、ジゼル・ブンチェン、カーラ・デルヴィーニュも所属するIMGモデルズに移籍をした。

実の父と、父のような存在だった人の死を乗り越える

 しかし、同じ頃、母子は大きなショックも経験するのだ。デイミアンの父スティーブンが、自宅であるロサンゼルスのコンドミニアムの27階から飛び降りて命を落としたのである。若い頃、祖父から6億ドルの遺産を引き継いだスティーブンだが、ドラッグ依存症の歴史があり、投資に失敗したせいで、亡くなった時の資産は30万ドルに目減りしていた。スティーブンには、息子デイミアンのほかに、既婚女性との間に生まれたキラという名の娘もいる。スティーブンは一度もデイミアンに会わないままだったにもかかわらず(キラには時々会ったらしい)、父が遺書からデイミアンとキラを削除しようとすると、必死になって闘ったと言われている。

スティーブン・ビングと。2000年
スティーブン・ビングと。2000年写真:REX/アフロ

 さらに、2022年3月には、エリザベスの元婚約者シェーンが心臓発作で亡くなった。悲報を受けて、デイミアンは、「SW(シェーン・ウォーン)は、僕が多感だった頃、父のような存在でした。彼は僕の知る中で最高の人のひとりでした。とても悲しいです」と、昔の写真とともにインスタグラムにメッセージを投稿している。

 そんなデイミアンも、もう21歳。立派な大人になり、映画監督になるという夢を実現させようとしている。その事実を誰よりも誇りに思っているのは、母エリザベスだろう。肝心の映画も、世に誇れる作品に仕上がるだろうか。いろいろな意味で、実際に見られる日が楽しみだ。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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