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ランス・レディックが死去。「ジョン・ウィック」のコンシェルジュ役

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
(写真:REX/アフロ)

「ジョン・ウィック」シリーズでホテルのコンシェルジュ、シャロンを演じるランス・レディックが亡くなった。

 広報担当者によると、自然死とのこと。しかし、彼は60歳という若さ。最近も今月24日に北米公開を控えるシリーズ4作目「ジョン・ウィック:コンセクエンス」のプロモーション活動に参加していたところだ。筆者自身も2週間前に取材させていただいたが、とても明るく、お元気そうだった。

 この取材で、レディックは、1作目でシャロンの役を得たのはギリギリだったという裏話を語ってくれている。週の後半にオファーを受け、週明けの月曜には現場入りをしたのだそうだ。役作りの時間はほとんどなかったが、「プリティ・ウーマン」のヘクター・エリゾンドを参考にした。

 この4作目には新しくドニー・イェンが参加するが、レディックは以前からイェンの大ファンだったとも明かしてくれている。とくにお気に入りの映画は「導火線 FLASH POINT」。クライマックスのファイトシーンは、映画のアクションシーンにおいて人生で一番好きなものだそうだ。

 メリーランド州ボルチモア生まれ。演技に興味を持ったきっかけは、高校時代、国語のクラスでみんなを前にシェイクスピアの「マクベス」を朗読したこと。しかし、彼の1番の情熱は音楽で、ロシェスター大学では作曲を専攻する。卒業後はミュージシャンのキャリアを目指してボストンに引っ越すも、なかなか思ったようにいかず、ウエイターや配達員のバイトで生活費を稼いだ。そんな中で演技に目を向けるようになり、1991年、イェール大学のドラマスクールに入学。同じ時に在籍していたポール・ジアマティとは、生涯の友人となった。

シリーズ4作目「ジョン・ウィック:コンセクエンス」の1シーン(Murray Close/ 2023 Lionsgate)
シリーズ4作目「ジョン・ウィック:コンセクエンス」の1シーン(Murray Close/ 2023 Lionsgate)

 映画デビューは1998年の「大いなる遺産」。「LAW & ORDER 性犯罪特捜班」「ザ・ホワイトハウス」など人気テレビドラマへのゲスト出演などを経て、2002年、HBOの犯罪ドラマ「THE WIRE/ザ・ワイヤー」でブレイクを果たす。2008年にはJ・J・エイブラムスの人気ドラマ「ロスト」に参加。同じ年、彼がレギュラー出演する「FRINGE/フリンジ」も始まった。2014年からは「BOSCH/ボッシュ」に出演している。

 映画では、ローランド・エメリッヒ監督、チャニング・テイタム主演の「ホワイトハウス・ダウン」、スパイク・リー監督の「オールド・ボーイ」、ダン・スティーブンス主演の「ザ・ゲスト」、ジェラルド・バトラー主演の「エンド・オブ・ステイツ」、「ゴジラVSコング」などに出演。「Destiny」をはじめ、ビデオゲームの仕事もこなしてきた。2007年にはミュージシャンとしてアルバム「Contemplations and Remembrances」をリリースしている。

 私生活では、2011年に結婚。妻ステファニーとの間に、娘イヴォン、息子クリストファーを持つ。

 ご冥福をお祈りします。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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