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マーゴット・ロビーの「パイレーツ」映画がボツに。ジョニー・デップ復帰の可能性は?

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
ジョニー・デップのキャプテン・ジャックはまた見られるのか?(写真:Splash/アフロ)

 キャプテン・ジャックが出ない「パイレーツ・オブ・カリビアン」。ジョニー・デップのファンが強い反感を示してきたこの新作プロジェクトは、結局ボツになった。

 主演予定だったマーゴット・ロビーによれば、その判断をしたのはスタジオ。現地時間14日に掲載された「Vanity Fair」でのインタビューで、ロビーは、「ずいぶん前から私たちには構想があって、それを練ってきた。全員女性でないにしても、女性が中心(の映画)で、違ったタイプのストーリーにしようとね。私たちはそれをとてもクールだと思っていたわ。でも、彼らはやりたくないと思ったみたい」と語っている。

 シリーズを手がけるプロデューサーのジェリー・ブラッカイマーは、今年初め、「パイレーツ〜」の今後について、ロビーが出るバージョンと出ないバージョン、ふたつの可能性を探索していると述べていた。だが、それは、デップと元妻アンバー・ハードの名誉毀損裁判が始まり、どちらが真実を言っているのかが明らかになっていく前の話。デップが勝訴した今、事情は当時と全然違う。

 デップのマネージャーの証言によれば、契約書こそ交わされていなかったものの、デップはシリーズ6作目で2,250万ドルのギャラをもらえることになっていた。だが、ハードがDV被害者として寄稿した意見記事が「Washington Post」に掲載されてまもなく、デップは、ディズニーにはもはや自分と一緒に「パイレーツ〜」を作るつもりがないと知ることになったのだ。

 その時に受けたショックについて、デップは、「ものすごく傷ついた。誰かに頭を後ろから殴られたみたいだった。ジャック・スパロウは、僕が何もないところから作り上げたキャラクターだ。僕自身の要素もたくさん入れたし、セリフやシーン、ジョークの書き直しもやった。あれだけ長いこと良い関係にあったディズニーは、まだ証明されていないのに僕を有罪と見た。それが理解できなかった」と述べている。さらにデップは、「キャラクターを消すにしても、正しい形でさようならを言うべきだ。シリーズにはいつか終わりが来る。でも、終わりにするなら、そのやり方がある。僕は、やめるべき時が来るまでやるつもりだった」とも、悔しさを語っていた。

 この裁判の前に行った供述では、「大金を積まれても『パイレーツ〜』にはもう戻らない」と矛盾することを言ってもいるのだが、それは無念さの裏返し。再びキャプテン・ジャックを演じてほしいと言われたら、デップはきっと喜んで応じるだろう。ファンも、それを求めている。長く続いていくにつれて勢いが衰えてきたとはいえ、2017年に公開された5作目は、全世界で8億ドル弱を稼いでいるのだ。シリーズがそこまで人気を得たのも、ひとえにデップが創造したこのユニークなキャラクターのおかげ。それに、この役を降板させられたことで起きた裁判で勝訴し、結果的に役を取り戻せたとしたら、まさに大団円ではないか。

ロビーは女性キャスト中心の「パイレーツ〜」映画を作ろうとしていた
ロビーは女性キャスト中心の「パイレーツ〜」映画を作ろうとしていた写真:ロイター/アフロ

 とは言え、ボツになったとロビーが語ったのは、あくまで彼女が出るつもりだったバージョンについて。ブラッカイマーのいうもうひとつのバージョン、つまりデップもロビーも出ない新作のバージョンがどうなったのかはわからない。ただひとつ言えるのは、「パイレーツ〜」を続けないという選択肢は存在しないということだ。全作合わせて世界で14億5,100万ドルも稼いだシリーズをスタジオが放置するなど、ハリウッドではあり得ないのである。デップが出るバージョンか、出ないバージョンか。ロビーが消去された今、スタジオはその二択の間で頭を悩ませているのだろうか。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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