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キャメロン・ディアスが50歳に。「歳を取るのは大好き」

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 明るくて、可愛くて、いつも元気いっぱいのキャメロン・ディアスが、30日に50歳の誕生日を迎える。この特別な誕生日にどんなことを計画しているのかはわからないが、きっと、愛する夫や娘、友人に囲まれて、楽しい時を過ごすのだろう。

 ひとつ確実なのは、50の大台に乗ったことを、彼女は決して悲しいとはとらえないこと。筆者はちょうど10年前にディアスを単独インタビューしたのだが、「40歳になった日、どう感じましたか」という問いに、彼女はこう答えているのだ。

「すごく嬉しかったわ。私は歳を取るのが大好きなの。みんなその大切さをあまり理解していないと思う。逆戻りするのは無理なのよ。そのままの年齢でいることも無理。歳を取ることは避けられないの。私は、歳を取ることに感謝する。歳を取るにつれて知恵がつくし、自分についてもっと学べるから」。

 だが、多くの人は、自分が老いていく現実を受け入れられず、少しでも若く見せたい、痩せていたいと必死になる。そのことについても、彼女は、「みんな手軽な解決法を求めるわよね。痩せるためのサプリメントとか、砂糖や脂肪を含まないものを食べるとか。そのせいで逆に危険なものを口にしているかもしれないのに。整形する人もたくさんいる。ハリウッドだけじゃなくて、それ以外の人もしているわ」と、残念そうに語った。そんな彼女は、ヘルシーな食生活とワークアウトこそ、本当の若さを保つ秘訣だと考える。

「健康でエネルギーに満ちた人は、ルックスも自然にそうなる。私は内側からアプローチするの。ワークアウトをさぼったり、体に悪いものを食べたりしたら、元気が出なくて、頭もすっきりしない。ワークアウトの時間を確保できるように1日の計画を立てるのは、無駄ではないのよ。そして、それはずっとやり続けないといけない。やめてしまったら意味がない。私はずっとやり続けてきた。27歳でワークアウトを始めたから、13年やってきたことになる。今の私は22歳の時よりたくましくて、見た目も良くなった。普通は逆よね。そうやってずっと鍛えてきたから、急にハイキングに行くことになったりしても平気よ」。

 27歳でワークアウトを始めたきっかけは、アクション映画「チャーリーズ・エンジェル」に主演が決まったことだ。この映画の公開時にディアスをインタビューした時、ディアスは、それまでは運動や食事にまるで無関心だったと述べていた。原材料は何か、添加物が入っているかなど、何も考えずに食べていたのだという。この映画のためのトレーニングで目覚めたわけだが、かと言ってがちがちに厳しくしているわけではなく、「ピザは絶対食べないというわけじゃない。ただ、毎日はだめ」とも語っていた。

 以後、ずっと健康的な食生活を続けてきたディアスは、2013年に「The Body Book: Feed, Move, Understand and Love Your Amazing Body」、2016年に「The Longevity Book: The Science of Aging, the Biology of Strength, and the Privilege of Time」という本を出版している。また、友人キャサリン・パワーとともに、オーガニックワインのブランド「Avaline」を立ち上げた。

Avalineのインスタグラムより
Avalineのインスタグラムより

 2歳の娘を持つディアスは、家にいながらできるこのワインのビジネスにやりがいと満足を感じているようだ。一方で、映画の仕事は「二度とやらないとは言わない」とも述べていた。そしてついに、彼女はNetflixの「Back in Action」で女優に復帰することになったのだ。「エニイ・ギブン・サンデー」と「ANNIE/アニー」で共演したジェイミー・フォックスが、「楽しいことやろうよ」と、ディアスに出演を持ちかけたおかげで実現したもの。アクションコメディ映画ということで、久々にコミカルな彼女が見られそうである。50歳という節目の年はまた、8年ぶりにカメラの前に立つ、特別な年にもなりそうだ。

感謝の心を忘れない

 筆者は現時点で最後の映画「ANNIE/アニー」まで何度もディアスを取材してきたが、いつも映画のイメージのままの、いや、むしろもっと思慮深くて良い人だという印象を受けてきた。インタビューが終わった後、「今日は私のために時間を使ってくれてありがとう」と言われてびっくりしたことは忘れられない。映画スターにそんなことを言ってもらえたのは、後にも先にも初めてだ。

 もうひとつ強く記憶に残るのは、「ベガスの恋に勝つルール」の公開時の出来事。大好きだったお父様がお亡くなりになって、彼女は急遽、予定されていた取材をキャンセルしたのだが、取材する予定だった記者たちに、そのことを謝り、自分の心境を説明する丁寧な手紙を書いてくれたのだ。悲しみに暮れている時でも、できるはずの取材ができなくなった記者のことも考えてくれる彼女に、とても胸を打たれた。

 インタビューの中で、彼女はよく「grateful(感謝する)」という言葉を使う。競争の厳しいハリウッドでトップに君臨してきたことについて聞いた時も、そうだった。

「私は感謝の気持ちを忘れない。こんなことはまったく期待していなかった。自分がもっと良いレベルの仕事をこなしていけるようになれるなんて、思っていなかったの。でも、それが起きた時は、いつも感謝してきた。そして、それが続くよう努力してきた。今もそう。この先どうなるかわからないし、将来に期待はない。この年齢までにこれをやる、というような計画もない。幸せに感じることをやりたい。映画を作ることは、幸せに感じさせてくれる。素敵な人たちと一緒に冒険できる。そうでなければできない経験をさせてくれる。そのことに感謝をしている」と、彼女は語っている。

日本の人に親切にしてもらった思い出

 日本についての思い出を語ってくれる上でも、ディアスは感謝の言葉を口にした。カリフォルニア州ロングビーチの高校に通っていた16歳の時にモデルとしてデビューしたディアスは、仕事のために3ヶ月間、東京に住んだことがある。本人いわく、売れないモデルで、仕事はあまり入らず、歩き回る時間はたくさんあった。

「今と違って英語の表記が全然なかったの。何が書かれているのか想像もつかない。なんとなく分かったのは薬局のマークだけ。コミュニケーションは人々の親切と身振り手振りに頼る以外なかった。マップを見せたら、知らない人が私の行こうとしているところまで連れて行ってくれたこともあったわ。みなさん、本当に優しかった」。

 昔のこともそんな視点から振り返るディアスは、その姿勢こそが幸せの秘訣だと信じる。

「自分が持っているものに感謝をしていたら、ほかに何かが必要だとは思わなくなる。『私はどうしてあれを追っかけているのかしら。私の目の前にはこんな素敵なものがあるのに、どうして自分が持たないものを持ちたいと思うのかしら』と思うようになる。何かをやりながら、『あっちにはもっと良いものがあったのかも』と思ったりもしなくなるわ」。

 そんな彼女は、これからの人生も、前向きに、幸せに生きていくのだろう。お誕生日おめでとうございます!

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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