自分は悪くない。悪いのは自分を信じてくれないほかの人たち。嘘に嘘を重ねる中で証言にはあちこちに矛盾が出ても、他人に責任を押し付けるアンバー・ハードの態度だけは、一貫して変わらない。

 現地時間17日夜にNBCが放映した独占インタビューにも、それは明らかだった。自分が正しいと主張するがために、このインタビューの中で、ハードはあらゆる人々を侮辱している。

 まずは、ジョニー・デップの過去の恋人たち。ハードがデップにDVを受けていたと世間に告発すると、ウィノナ・ライダーとヴァネッサ・パラディは、デップに暴力をふるわれたことは一度もないと、公に向けて証言した。とてもプライベートな人として知られるケイト・モスも、裁判でそう証言するために、自らデップの弁護士に連絡を取っている。

 このことを知っているインタビュアーのサヴァンナ・ガスリー は、「彼が過去に付き合った女性に、彼から暴力を受けたと名乗り出た人はひとりもいません。そう言っているのはあなただけですね」と、ハードに指摘した。するとハードは「名乗り出た結果、私がどうなったか、見てみてくださいよ。あなただったら、同じことをしますか?」と言ったのである。つまりハードは、デップの過去の恋人たちは嘘をついているだけでなく、自分と違って勇気がないから黙っているのだと言っているのだ。なんという傲慢だろうか。

ジョニー・デップとヴァネッサ・パラディ。パラディはデップから暴力を受けたことは一度もないと語っている
ジョニー・デップとヴァネッサ・パラディ。パラディはデップから暴力を受けたことは一度もないと語っている写真: ロイター/アフロ

 次に、デップの支持者。ハードは、裁判所前に押し寄せた多数のファンが、ハードについて「テレビでは言えないような」ひどいことを書いたボードを掲げていたと漏らした。「私は毎日そんな中を6ブロックも通り過ぎなければなりませんでした」と言うハードは、身の危険も感じていたことも示唆している。

 だが、初日から最終日まで毎日裁判所に通ったイザベル・オーシニというデップ支持者は、異議を唱える。この裁判所があるヴァージニア州フェアファックスはワシントンDC郊外の街で、全体で6ブロックぐらいしかなく、デップがファンの前を通り過ぎたのはせいぜい2ブロックほどだったというのだ。また、デップの支持者はデップを少しでも見たいと必死だったが、ハードにはまるで関心がなく、ハードが出てきたのかどうかなど気づいてもいなかった。たまに気づくとブーイングも出たものの、ハードを攻撃しようとする人などいなかったという。掲げているボードも95%はデップへの愛とサポートを表明するものだった。

 それにハードは、裁判所の中にいる大勢の“ジャック・スパロウのファン”が声を出して自分の意見を言ったともいうが、それはありえない。裁判の間は静かにしていなければならず、やじを飛ばすことなど不可能だ。筆者も裁判の中継をずっと見ていたが、そんなことは一度も起こっていない。

ソーシャルメディアを使わない陪審員を「影響を受けた」と批判

 そして、陪審員たちだ。敗訴の後、彼女の弁護士イレーン・ブレデホフトがテレビのインタビューで陪審員たちを責めるようなことを言って批判されたのを受けてか、ハードはこのインタビューで陪審員を「責めません」と言った。しかし、その言葉とは裏腹に、陪審員たちはデップの支持者やソーシャルメディアに影響を受けてフェアな判断をしなかったと言っている。

「この裁判のほとんどは裁判所の外で行われたのです。陪審員もそれを見ていました。あれ(ソーシャルメディア)に気づかないなんて無理でしょう。最も誠意ある陪審員だって、避けるのは不可能だったはずです」と、ハード。しかし、ある陪審員は、今週、ライバルのテレビ局ABCの取材に応じ、7人の陪審員のうち、自分を含め最低3人は、ツイッターもフェイスブックもやっていないと明かしているのである。

「僕たちはソーシャルメディアから影響を受けていません。僕らが見たのは証拠だけです。この裁判で挙げられた事例はとても深刻なことばかりで、多額のお金もかかわることなので、僕らは自分たちの仕事を真剣に受け止めました」と、その匿名の陪審員は語った。彼はまた、「僕らは誰もデップのファンでも、ハードのファンでもありませんでした」とも述べている。そんなふうにまじめに挑んだ人たちのことを、ハードは、デップのスターパワーとソーシャルメディアの意見にまどわされていい加減に判決を出したと言っているのだ。

 裁判所に通ったあるツイッター利用者は、「陪審員を選ぶにあたっては、ソーシャルメディアを使わないことが重視されています。今回の陪審員はほとんどソーシャルメディアをやらず、アンバーが誰かも知らず、ジョニーのファンでもありません。公正という意味で、彼らはベストだったのです」と投稿している。陪審員の選定には双方の弁護士もかかわるのだから、それが事実であることは、ハードの弁護士も本当は知っているはず。ただ負けを認めたくなくて、あがいているのだ。名誉毀損裁判で負けたハードは、こうやってまた別の人たちの名誉を毀損しているのである。

 そしてこれはきっとまだ最後ではないのだろう。本を書くという話が本当であれば、その中でまたハードは自分を正当化するためにほかの人たちを悪者にするのだろうし、本が出版されれば宣伝活動もすることになるに違いない。彼女の語るパラレルワールドの話に、世間はいつまで耳を傾けてくれるだろうか。