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ジョニー・デップが勝訴。アンバー・ハードに1,500万ドルの支払命令

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
デップは今日の判決言い渡しには出席しなかった(写真:ロイター/アフロ)

 アンバー・ハードがジョニー・デップにDVを受けたとメディアに語って、6年。それから続いてきたデップの辛い日々が、ついに終わった。ヴァージニア州の陪審員たちは、カップルでいる間、デップからずっと暴力を受け続けたとするアンバー・ハードの主張を否定したのだ。

 陪審員は、損害賠償として1,000万ドル、懲罰的損害賠償として500万ドルをデップに支払うことをハードに要求している。ただし、懲罰的損害賠償は、判事の指摘でヴァージニア州の上限である35万ドルに引き下げられた。

 6週間かけた裁判の終わりは、あっさりだった。あるエキスパートは、長い裁判の中で多数の証拠が出てきただけに、陪審員の審議にも同じくらいの時間がかかるのではないかと予測していたが、実際には13時間。陪審員の意見が全員一致でないといけないというのもハードルになるかと思われたが、陪審員は全員、デップの言っていることが正しいと信じた。

 この裁判は、2018年にハードが「Washington Post」に寄稿した意見記事をめぐってデップが起こしたもの。陪審員たちは、その記事の中のいくつかの具体的な記述に対し、「名誉毀損に当たるか」「虚偽か」「悪意があるか」を審議した。それらへの答えとして次々に「イエス」が読み上げられていくうちに、法廷にいたハードの顔はどんどん曇っていった。

敗訴の後、暗い表情で法廷を出るアンバー・ハード
敗訴の後、暗い表情で法廷を出るアンバー・ハード写真:ロイター/アフロ

 ハードは、デップの友人で弁護士のアダム・ウォルドマンが、ハードはDV被害を自作自演したなどのコメントを何度かしたことについて、デップを逆訴訟している。この件に関し、陪審員は、あるひとつのコメントに悪意があったと見て、損害賠償として200万ドルをハードに支払うよう、デップに命じた。つまりデップも多少ハードの名誉を毀損したとされたわけだが、それでもデップの圧倒的な勝利である。すべてが終わった後、デップの弁護士は、笑顔でお互いをハグしあっては祝福していた。

 唯一残念だったのは、ここにデップ本人がいなかったことだ。先週金曜日の最終弁論の後、デップはジェフ・ベックのライブに出演するべくイギリスに飛んでいる。これは前から決まっていたことだそうで、判決言い渡しの時にもアメリカには帰って来ないことはわかっていた。海の向こうからライブ中継で見ていた彼は、判決を受けて、インスタグラムに「陪審員が僕の人生を取り戻してくれました。そのことに心から感謝します」と喜びのメッセージを投稿している。

 一方で、ハードは「今日、私がどれほどがっかりしたかを言葉で表すことはできません」「ジョニーの弁護士は、陪審員たちに言論の自由の問題を見過ごさせることに成功しました」「この判決はほかの女性たちにとっても悪いことを意味します」と、まだ自分が正しいと主張するメッセージをツイッターとインスタグラムに投稿した。西海岸時間午後1時20分の段階で、デップの投稿には380万以上、ハードの投稿には6万3,000の「いいね」がついている。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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