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ジョニー・デップ映画にオスカーを!ファンがツイッターで呼びかけ

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
(写真:REX/アフロ)

 忠実なことで知られるジョニー・デップのファンが、またもや行動に出た。今年、アカデミーが新たな試みを始めたことを受け、デップの映画にオスカーを取らせようと、積極的にツイッターで呼びかけているのである。

 その試みとは、「#OscarsFanFavorite」。ファンの投票によって決まる、新しい賞だ。投票は、このハッシュタグをつけ、ツイッターに投稿する形で行う。大好きなスターに会えるかもしれないというおまけもある。投票者の中から抽選で選ばれた3人は、アカデミーの旅費負担で授賞式に招待され、受賞者と一緒に舞台に立つことができるというのだ。投票締め切りは3月3日。1日20回まで投票できる。

 今のところ一番健闘しているのは、Amazonプライム・ビデオで配信されたカミラ・カベロ主演の「シンデレラ」。ほかに、「ジャスティス・リーグ:ザック・スナイダーカット」、「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」、期待されていながら作品部門候補入りを逃した「tick, tick…BOOM!:チック、チック、ブーン!」も目につく。そして、デップ主演の「MINAMATA―ミナマター」だ。

「MINAMATA〜」は、デップという有名スターが主演するにもかかわらず、一時はアメリカで劇場公開が危ぶまれるなど、あまり良い扱いを受けてきていない。なんとか12月15日に公開されたものの、あまりにもひっそりしていて、アワード関係で名前が挙がることはなかった。

 そこにこんなチャンスが訪れたのだ。これは、映画を知ってもらう上でもすばらしい機会とあって、監督のアンドリュー・レヴィタスも、1日に何度も投票したり、ほかの人の投稿をリツイートしたりしている。レヴィタスが、デップだけでなく、それぞれの投票ごとに、真田広之、加瀬亮、國村隼など日本人出演者の名前をハッシュタグに入れているのも、心憎い。

 さらにアカデミーは、「#OscarsCheerMoment」というキャンペーンも同時にスタートした。2021年の映画で一番好きだったシーンをツイッターで投票するというもので、投票者の中から抽選で5人に、映画館の1年無料パス、アカデミー映画博物館の特別グッズなどがプレゼントされる。選ばれたシーンは、授賞式で上映されるとのことだ。

 オスカーに候補入りする、あるいは受賞する作品と、一般の映画ファンが好きな作品がかけ離れていることは、以前からよく言われてきた。そもそも、2009年、それまで5本しかなかった作品部門の枠を広げたのも、「ダークナイト」が入らなかったことで批判を受けたせいだと理解されている。本数を増やせば、そういった映画が入り込める余裕ができるだろうと、アカデミーは考えたのである。

 今年、これまでは年によって8本だったり9本だったりした作品部門の数を必ず10本にするとアカデミーが決めたのも、狙いは同じ。アカデミーとしては、その10本目に、パンデミック禍とは思えない大ヒットを達成した「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」が入ってくれればと密かに願っていた。しかし、思惑は大きくはずれ、「スパイダーマン〜」は視覚効果部門に入るにとどまってしまった。今回作品部門に入った10本のうち、ヒットの目安とされる北米興行収入1億ドルを達成したのは、「DUNE/デューン 砂の惑星」だけ。このままでは、昨年、史上最低を記録した授賞式番組の視聴率の回復は危うい。

 そこで考え出したのが、今年は授賞式にホストを復活させることと、これらのツイッターキャンペーンだったのである。とは言え、今回ホストに抜擢されたレジナ・ホール、エイミー・シューマー、ワンダ・スカイズに人々がどこまで魅力を感じるのかは不明。そもそも、ホストがいるかいないかが視聴率に関係するのかということすら、わからない。ツイッターキャンペーンも、多くは効果を疑問視している。若い人はもはや授賞式番組というものに興味をもっていないのに、そこに必死にアピールするのは見苦しいだけという声もある。

 しかし、もし「MINAMATA〜」が投票でトップを獲得し、デップが舞台に上がることになれば、世界中にいる彼のファンは確実に授賞式を見るだろう。そして、ツイッター上で大きく盛り上がるはずである。

 DV疑惑報道の裁判で敗訴しても、そのせいで「ファンタスティック・ビースト」シリーズを降板させられても、ファンはずっとデップの味方についてきた。イメージダウンを受けてもデップを解雇しないディオールを支持するべく、デップが宣伝する香水を買い占める様子もソーシャルメディアで報告されている。「#JusticeForJohnnyDepp」をうたってきたファンが願うのは、デップが再びきちんと評価されること。アカデミー賞授賞式という華やかな場で、もしかしてそれは実現するだろうか。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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