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災害に苦しむ地元民を見捨ててカンクンに逃げた共和党議員をハリウッドが大批判

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
批判にさらされているテッド・クルーズ上院議員(写真:ロイター/アフロ)

 テッド・クルーズ共和党上院議員が、あらためてハリウッドから大バッシングされている。自分に票を入れてくれた地元テキサスの人々が、大寒波による停電、断水に苦しむ中、家族を連れてこっそりとメキシコのリゾート地カンクンに逃げ出したことが、一般人の目撃ツイートでバレてしまったのだ。

 以後、ソーシャルメディアには、「#FledCruz」「#FlynTed」「#CancunCruz」などのハッシュタグとともに、彼を批判するコメントが続々投稿された。それを受けてクルーズは、娘たちを送り届けただけで自分は1泊で帰るつもりだったと言い訳し、実際、翌日にはテキサスに戻る飛行機に乗っている。しかし、もともと予約していた帰国便は週末だったことが記録でわかっているし、「New York Times」は、クルーズの妻が近所の人に送ったテキストメッセージを入手したと報道した。そのテキストには、寒いからカンクンに行くこと、宿はリッツカールトンで宿泊料は1泊309ドルであること、また予約便の詳細などが書かれている。クルーズ一家が愛犬を寒い家に置き去りにしたこともわかると、非難はさらに強まった。

メキシコから戻ってくるクルーズを批判すべく空港で待ち受ける地元の人々
メキシコから戻ってくるクルーズを批判すべく空港で待ち受ける地元の人々写真:ロイター/アフロ

 本来、そこまで寒くなるはずのないテキサスを今回のような大寒波が襲ったのは、気候の変化が影響していると専門家は見ている。保守強硬派のクルーズは、気候の変化を信じない人。昨年夏、カリフォルニアで大停電が起きた時にも、「カリフォルニアは電力という最も基本的な文明の機能もこなせなくなっている。バイデン/ハリス/AOC(アレクサンドリア・オカシオ=コルテス)はカリフォルニアの失敗策を全国に広めようとしているのだ。冷房が嫌いな人なら良いだろうね」と、バカにするツイートをしていた。だが、まさにお膝元で大停電が起こり、数十人の死者が出ると、コロナで不必要な旅行は控えるよう言われているのも無視し、自分たちだけ暖かいところに逃げたというわけである。今週初めには、テキサス州民に「安全のため家にいてください。子供たちをハグしてあげてください」と呼びかけていたのに、とんでもない偽善だ。

 今もなお昨年の大統領選に不正があったと嘘をばらまき続けるクルーズを嫌っているハリウッドは、彼のこの大失態に喜んで飛びついた。ベット・ミドラーは、「テキサスから寒波が去ったら気候の変化を信じることにします」「偽善者特別号!家族により良い人生を与えたいと、テッドがメキシコとの国境を超えた」などという風刺画像をツイート。別のツイートでは「彼の議席は危ないわね。テキサスに住む善良な人たちが、彼が死ぬ日までこいつがふたつの顔をもつ偽善者だと忘れないことを願う」とも書いている。

 以前からクルーズとツイッター上で喧嘩をしてきたセス・ローゲンは、「テッド・クルーズは『死者を出した暴動を煽った悪者』から『自分がカンクンに行くために有権者を凍死するまで放っておいた悪者』にイメージチェンジしたいのかな。そのどっちもだと思うが。奴はとんでもない悪者だ」と強烈に批判。ジミー・キンメルは、クルーズの髪型もバカにしつつ、「この髪型は彼が今月下した中で3番目に間違った決断。どれだけ判断力が鈍いかわかるよね」と笑った。

 パットン・オズワルトは、「娘を送り届けるだけというわりにはスーツケースが大きくないか?」と指摘。パトリシア・アークエットも、「妻と娘が自分なしでカンクンにいるのは心配ないのに、そこに行くために彼女らが自分たちだけで飛行機に乗るのは不安だったというの?意味をなさない。バレたから帰ってくるだけでしょ」とツイートした。

 アリッサ・ミラノは、2018年の上院選挙で、クルーズにわずかな差で負けた民主党のベト・オルーク前下院議員を引き合いに出し、「テッド・クルーズがカンクンに飛んでいる間、ベト・オルークはテキサスで人々の安全を確認する電話をかけていた。私もZOOMに参加していたから知っているわ。私も電話をかけていて、彼が自分と同じテキサスに住む人々のために一生懸命仕事をしているのを見ていたのよ。愛をもって人を導くリーダーがもっと必要」と書いた。

 ジョシュ・ギャッドは、「みんなが一丸となってテッド・クルーズを嫌うことで、ようやくこの国がひとつになれるかもね」とコメント。だが、こんな中でもまだ必死にクルーズを弁護しようとする人もいるので、その期待はむなしく終わりそうだ。そのひとりにはドナルド・トランプ・Jr.もおり、ジョージ・タケイは「おいおい、ジュニア、やめておけよ」とツイートしている。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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