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トランプが弾劾を免れたことにハリウッドが激怒

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
矛盾する発言で怒りを買ったミッチ・マコーネル(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 わかっていたとは言っても、あまりにも不条理。現地時間13日、米上院議員による評決で、共和党議員から十分な票を取ることができず、アメリカ史上初めて2度の弾劾にかけられたトランプ前大統領は、今度もまた免れることになったのだ。

 今回の容疑は、先月6日、トランプの扇動により、支持者が両議会に殴り込んで暴動を起こしたことについて。この事件では、当の議員たちが、身に迫る恐怖を感じている。弾劾管理人は、これまで非公開だった当日のセキュリティビデオなどを見せては、彼らがどんな状況にあったかを強調した。それらを見た議員らは、思っていたよりもずっと自分たちが危険に晒されていたことを知り、身を震わせたものの、トランプを有罪とした共和党議員は7人にとどまり、必要とされた3分の2には届いていない。

 さらに人々を怒らせたのは、共和党の上院少数派院内総務であるミッチ・マコーネル上院議員が、無罪投票をした直後に、トランプの行動を公に批判したことだ。マコーネルも、ほかの共和党議員も、本当は有罪だとわかっているのである。その矛盾は、政治の汚さをまさに象徴する。

 このなりゆきに、コメディアンで深夜トーク番組ホストのジミー・キンメルは、「自分はバカだったとまた感じている。もっと多くの人が正しいことをしてくれると期待していたのに」と、ツイートで無念さを告白した。ロブ・ライナーは、「(トランプを無罪とした共和党上院議員)43人によると、大統領による、この国で最悪の違憲行為は問題なかったそうだ」と皮肉なコメントをしている。ダン・レヴィは、ひとこと、「腐敗」とツイート。スティーブン・キングは、「予想はしていたが、やはり落胆した。無罪に投票した共和党の上院議員、お前らは最悪だよ」と批判している。

 ジョシュ・ギャッドは、「トランプは(ニューヨーク)5番街のど真ん中で誰かを射殺しても責められないんだろうね」とツイート。ロン・パールマンは、「おい、ドニー。免れることになりそうだが、アメリカ国民から(ホワイトハウスを)追い出されたように、お前はこれからもずっとただのシミなんだよ。永遠に。俺らはお前を知っているからね。ただのゴミだと」と、トランプに呼びかけている。ベット・ミドラーも、「はっきりさせておきましょう。この結果になっても、前大統領は無罪じゃないのよ。彼は完全に有罪。1月6日が来るたびに、このことを思い出しましょう」とツイートした。アリッサ・ミラノも、「今日はアメリカにとって悲しい日。共和党にはたった7人しか愛国心を持つ人がいなかった。上院がドナルド・トランプを有罪としないなら、普通の裁判でやるしかない」と、諦めない姿勢を示している。

 近年、政治風刺アーティストとしても活躍しているジム・キャリーは、「アメリカの美徳」という、新たな絵を描いてツイートした。もちろん、これは皮肉だ。これがアメリカであってはいけない。トランプがやった犯罪は、これからも追及されていくべき。実際、きっと、そうなるはずである。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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