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ハリソン・フォードも、シュワルツェネッガーも。コロナワクチンを受けたハリウッドスターたち

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 アメリカでコロナのワクチン接種がスタートして、1ヶ月半。現在までに、全米で2,000万人以上が少なくとも1回目の接種を受けた。そんな中では、「副反応が怖いから受けたくない」という声よりも、「なんとかして自分も早く受けたい」という声のほうが、断然強くなってきた感じだ。

 L.A.で現在ワクチンの予約をできるのは、医療関係者、消防士などフロントラインワーカー、高齢者施設の住人とスタッフ、65歳以上の人にかぎられているが、まだ対象外の人が、その日の終わりに余ったワクチンを求めて早朝から列に並ぶ姿がテレビで報道されたりしている。一度封を開けてしまったら、その日のうちに使い切らないと無駄になることを知っての行動だ。その数は相当で、彼らには“ワクチンチェイサーズ”というニックネームまで付けられている。また、教師にまで対象を広げているニューヨークでは、フィットネススタジオ、ソウルサイクルのインストラクターが“教育者”を名乗って接種を受け、ソーシャルメディアで誇らしげにそれを報告したことから大きな批判を受け、謝罪することになった。

 それでもまだ、ワクチンに不安を覚える人は、少数派ながら、いる。そんな人たちに正しい知識を与える目的か、すでにワクチンを受けたハリウッドセレブたちは、ソーシャルメディアで積極的にポジティブな経験を報告している。

 一番に名乗り出たのは、アメリカより先に接種が始まったイギリスで受けたイアン・マッケレン。81歳の彼は、「ワクチンを受けられた自分はとてもラッキー。何の躊躇もなく、みなさんにもお勧めします」とツイートしている。年が明けて1月になると、アメリカでも、スティーブ・マーティン(75)、アーノルド・シュワルツェネッガー(73)、モーガン・フリーマン(72)、ビリー・クリスタル(72)、パトリック・スチュワート(80)などが続々と接種現場から報告した。マーティンは「良いお知らせと、悪いお知らせ。良いお知らせは、今、ワクチンを受けたこと。悪いお知らせは、75歳だから受けられたこと」とツイート。ニューヨークでの接種はとてもスムーズに行われ、「今のところ副反応は何もない」とも述べた。

 シュワルツェネッガーは、L.A.で最大のドライブスルー接種会場となっているドジャースタジアムで接種を受けている。「こんなに幸せな気分で列に並んだことはない。すでに対象になっている人は、私のように接種を受けてください」というメッセージの後に、「ターミネーター」のセリフ「Come join me if you want to live」を付け足したのは、いかにも彼らしい。クリスタルもドジャースタジアムで接種、「野球ファンとしては完璧」とツイートした。

 接種は完全予約制なのだが、スチュワートは4時間も待たされたそうだ。それでも不満はなく、「自分たちを犠牲にして働いてくれている医療関係者と科学者に感謝を示すには?一刻も早くワクチンを受けて彼らの仕事量を減らしてあげること、マスクの着用を続けてほかの人たちを守ることだ」とツイートしている。

 今月に入ってからは、アラン・アルダ(85)とジェーン・フォンダ(83)が接種を報告。アルダは、「ひりひりするかなと思っていたが、今のところ何もない。すごく良い感じだ」とツイート。フォンダはインスタグラムで「今日ワクチンを受けました。イェイ!痛くなかったですよ」と報告した。

 ハリソン・フォード(78)も、L.A.郊外のエル・カミノ・カレッジで接種を受けたようだ。公に対しては報告していないが、現場の医療関係者とボランティアに感謝の言葉を送ったと報道されている。フォードも、2時間半も待たされたようである。

 65歳より若いにもかかわらず、すでに接種を受けた人もいる。ショーン・ペン(60)は、そのひとり。ペンは、彼が設立した非営利団体COREを通じ、コロナ対策のために大活躍をしてきた。最初のロックダウン中、L.A.ですばやく無料のPCR検査が拡充したのも彼のおかげだし、現在はワクチン接種にも尽力している。彼もまたフロントラインワーカーのひとりということで対象になったようだ。一方で、ランダル・パーク(46)は、ワクチン承認前の治験に参加したという。治験について教えてくれたのは、アジア系コメディアン仲間で、元医師のケン・チョン。アジア系の参加者を求めていると言われ、「自分の体を科学のために提供しよう」と思って参加したところ、今になって、自分が受けたのは本物のワクチンで、偽薬のほうではなかったと知らされたとのことだ。

 やや変わっているのは、オリバー・ストーン(74)。まだアメリカでコロナワクチンが承認される前、地球温暖化についてのドキュメンタリーの撮影でロシアにいたストーンは、現地でロシアのワクチンを受けているのである。アソシエイテッド・プレスのインタビュアーに対し、ストーンは、「2日ほど前に受けたばかりだから、効いているのかどうか、まだわからない。でもロシアのワクチンについては良い話を聞いていたよ。45日後に2回目を受けないと。そのために(ロシアに)戻ってこないといけない。でも希望を感じている」と語った。同じインタビューで「アメリカはなぜか中国とロシアを敵として見る。私はそう見ない」「ロシアは最も進んだ国のひとつだ」と述べているストーンは、それを証明するためにも、あえてロシアのワクチンを受けたのだろうか。その結果は、さてどうなるか。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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