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タニア・ロバーツ:最後のチャーリーズ・エンジェル、コメディ番組のママ

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
「チャーリーズ・エンジェル」のタニア・ロバーツ(写真:REX/アフロ)

 チャーリーズ・エンジェルのひとりでボンドガールのタニア・ロバーツが亡くなった。65歳。尿路感染症が臓器や血液にも影響をきたし、C型肝炎を持っていたことでさらに病状が悪化したという。倒れたのは現地時間先月24日だったが、コロナのせいで、ロバーツの恋人ランス・オブライエンは病院に付き添うことがかなわず、1月3日になってようやく最後のさようならを言うことが許された。オブライエンも、ロバーツのパブリシストも、この時にロバーツが死んだものと思い込み、一部のニュースで報道され、ソーシャルメディアにはお悔やみのコメントが飛び交ったが、翌日になって誤報だったとわかる。しかし、結局、その同じ日のうちに、亡くなってしまった。

 ロバーツは1955年、ニューヨークのブロンクス生まれ。本名はヴィクトリア・リー・ブラム。ふたり姉妹の妹で、父は万年筆のセールスマンだった。両親の離婚後、母に着いてカナダのオンタリオ州に引っ越すも、15歳で高校を中退し、結婚。しかし、夫の母に反対され、結婚は取り消される。その後はニューヨークに戻り、ダンスのインストラクターをしながら、テレビコマーシャルやオフブロードウェイに出演をした。1974年、映画館で列に並んでいる時に出会った、当時学生だったバリー・ロバーツと結婚。プロポーズは彼女のほうからしている。

 映画デビューは、1976年の「The Last Victim」(日本未公開)。続いて「マッド・フィンガーズ」(1978)「デビルズ・ゾーン」(1979)「カリフォルニア・ドリーミング」(1979)などに出演し、1980年、2000人ほどの候補者を打ち負かして「地上最強の美女たち!/チャーリーズ・エンジェル」の新たなエンジェルに大抜擢される。ロバーツが登場したのは、第5シーズン。その頃までに視聴率は徐々に低下しており、シェリー・ハックに代わって新しく登場するロバーツには期待が寄せられていた。しかし、このシーズンを最後に番組は放映終了している。

 その後は、冒険アドベンチャー映画「The Beastmaster」(1982)に出演。トップレスになるシーンもあるこの映画の宣伝のため、公開前には「Playboy」誌にヌードで登場した。1984年には、冒険ファンタジー映画「シーナ」に主演する。コミックブックの映画化であるこの作品で、ロバーツは、肌を大きく露出し、女性版ターザンとも言えるキャラクターを演じた。翌1985年には、「007/美しき獲物たち」にボンドガール役で出演。この映画はロジャー・ムーアがボンドを演じた最後の作品で、デュランデュランが主題歌を担当している。

 そして90年代後半、ロバーツは、コメディ番組で新たな世代に名を知られることになる。アシュトン・カッチャー、ミラ・クニス、トファー・グレイスなどをブレイクさせた「That 70’s Show」(1998-2006)で、ローラ・プレポンの母親役を演じたのだ。ロバーツは第3シーズンまで出演したが、夫バリーが重い病気を患ったことから、看病に専念するため降板。夫は2000年に亡くなり、第6、第7シーズンには何度か登場した。グレイスは、「タニア・ロバーツが亡くなったと聞いて、本当に悲しいです。彼女はボンドガールで、チャーリーズ・エンジェルのひとりで、一緒にお仕事させていただくのがとても楽しい人でした。僕には演技の経験がなく、正直言って彼女に対して緊張していました。でも、彼女はすごく優しくしてくれたのです」とツイートしている。やはり「That 70’s Show」のレギュラーだったデブラ・ジョー・リップも、「タニアはとても元気に笑う人。直感が優れていて、美しい人でした」と、ツイートで追悼の意を送っている。

 子供はおらず、遺族は恋人オブライエンと姉バーバラ・ブラム・チェイス。生前、ロバーツは動物愛護活動に情熱を注いでいたことから、遺族は、彼女を惜しむ人たちに、アメリカ動物虐待防止協会(ASPCA)への寄付を呼びかけている。遺族はまた、オンラインでの追悼式を行う予定でいるという。

 ご冥福をお祈りします。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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