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トランプのコロナ感染は「茶番」なのか。彼の”宿敵”ハリウッドの反応は

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
マイケル・ムーアは、トランプの感染は「嘘かもしれない」と警告(写真:ロイター/アフロ)

 トランプ大統領がコロナに感染した。専門家の言うことも無視し、タフな男を演出するかの如くマスクもせずに集会を続けた彼が、よりにもよって選挙の1ヶ月前というタイミングで感染してしまったのだ。しかも、彼は、側近ホープ・ヒックスの感染が確認された後で、ニュージャージー州でのイベントに出席したというのである。その時点では、討論で顔を合わせたジョー・バイデンの陣営に、ヒックスの感染を報告することもしていない。

 アメリカは今、1日中このニュースで持ちきり。メディアには、これからどうなるのかを含め、あらゆる情報や憶測が飛び交っている。そんな中では、トランプの宿敵であるハリウッド関係者のコメントも、多数目に付く。「嬉しくて飛び上がってしまいましたよ」と言ったのは、ドミニク・ウエスト。リモート出演したイギリスのテレビで、彼は、「自分がしたことは自分に回って来るということですね。このことが、彼の落選の妨げにならないことを願っています」「おわかりのように、僕は彼のファンではないので。バイデンには健康なままで、早く大統領になってほしいです」と言っている。

 逆に、やはりトランプ嫌いであるアリッサ・ミラノは、自身がコロナ感染を経験していることもあり、「コロナを経験し、今も後遺症に苦しむ身としては、たとえ最悪の敵であっても、このウィルスにはかかってほしくないと思います」と、思いやりを感じさせるツイートした。それでも、最後に「マスクを着用しましょう」と付け加えることを忘れていない。

 マーク・ハミルは「ここから何か良いことが生まれるとしたら、彼の支持者が考え直してくれることではないか。もし、彼らが、ロックダウンを受け入れ、ソーシャルディスタンスを実践し、マスクを着用するようになれば、このウィルスを抑え込むことができるかもしれない。最初からそうするべきだったのだが」とツイートしている。ジャッド・アパトーは、レポーターに「マスクを外せ」とトランプが命令する1ヶ月前の動画とともに、「こいつは、こういう奴。忘れてはいけないよ」と、辛辣なツイートをした。

 コメディアンたちのコメントは、さすがにもっと明るい。パットン・オズワルトは「トランプがコロナにかかったと知って、ジュリアーニはパニックしているだろうな」、ウィットニー・カミングスは、「どうしてメラニアが感染したんだろう?彼女は結婚した時からトランプとソーシャルディスタンスをしてきたのにね」とツイートしている。

 一方で、これがトランプお得意の嘘、茶番ではないかと勘ぐる声もある。ベット・ミドラーは、「ホープ・ヒックスに陽性反応が出たそうだけど、興味深いタイミングよね。ということは、トランプは隔離されて、集会も討論もなくなるということね。都合がいいわね。悪いふうに考えるのはよくないけれども、4年間もずっと嘘をつかれてきたから、信頼できないのよ」「討論を避けて、コロナからミラクルのように回復して、これはたいした病気じゃないんだと言うために、嘘でやっているのかしら?真実はそのうちわかるでしょう。死体になったら話は別だけど」とツイートした。

 マイケル・ムーアも、Facebookに投稿した長いコメントの中で、トランプが嘘つきだと知っているにもかかわらず、どうして今回は即座に信じるのかと、メディアを批判している。トランプが過去に、自分や、政治上の敵の健康状態について嘘をついたことも挙げ、「僕たちは疑問をもたないといけない。トランプに関しては、僕らはいつも疑わないといけない。彼は本当にコロナにかかったのかもしれない。でも、嘘である可能性もある」「彼は次の選挙で負けそうだから、世の中の会話の方向性を変えたいのでは」とも警告。さらに、たとえ本当にコロナにかかったのだとしても、トランプがトランプであることに変わりはないのだと、彼に対する姿勢を変えないよう、人々に注意を喚起した。

 人の注目を集めるのが大好きなトランプは、任期の終わりが迫る中でも、世界中のニュースの主人公になってみせたわけである。それが意図的なのか、そうでないのかは、今は誰にもわからない。ハリウッド映画でも見ないようなこの出来事は、今後どのように展開していくのだろうか。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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