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今年後半が「スター・ウォーズ」づくしになる実情

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
セレブレーションでの「エピソード9」パネル(Getty Images)

 2019年は、これまでにない「スター・ウォーズ」イヤーになる。現地時間11日からシカゴで開催された「スター・ウォーズ・セレブレーション」は、これから年末にかけて予定されているいくつかの話題で、ファンを興奮させた。

 最大の注目はもちろん、「エピソード9」。新三部作の完結編となるこの映画のパネルは今回の目玉で、会場はJ・J・エイブラムス監督や主要キャストをこの目で見たいと世界中から集まってきたファンで埋め尽くされた。中でも最も大きな拍手を受けたのは、36年ぶりにランド役でシリーズに復帰するビリー・ディー・ウィリアムズ。ナオミ・アッキーが演じる新しいキャラクターはランドの娘なのかという質問は、答をはぐらかされたものの、どうやらその筋は正しいようである。このパネルの最後には予告編が初公開され、それに伴い「ザ・ライズ・オブ・スカイウォーカー(原題)」というタイトルが発表になった。今作は12月20日、日米同時公開となる。

「ザ・ライズ・オブ・スカイウォーカー(原題)」の1シーン。パネルで、デイジー・リドリーは、「ルークからもらったライトセーバーは今作でも生き続ける」と語った(2019  Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.)
「ザ・ライズ・オブ・スカイウォーカー(原題)」の1シーン。パネルで、デイジー・リドリーは、「ルークからもらったライトセーバーは今作でも生き続ける」と語った(2019 Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.)

 その1ヶ月前にデビューするのが、「マンダロリアン」だ。ディズニーが立ち上げるストリーミングサービス「Disney + 」のオリジナルコンテンツで、スモールスクリーンでは初の「スター・ウォーズ」ライブアクションシリーズとなる。エグゼクティブ・プロデューサーのジョン・ファヴローとデイブ・フィローニ、ペドロ・パスカルをはじめとするキャストが登壇するパネルでは特別フッテージが上映されたが、劇場用映画でないのがもったいないほどのクオリティで、ルーカスフィルムとディズニーのプライドと気合いがたっぷり感じられた。物語の時代は「ジェダイの復讐」の後で、パスカル演じる主人公は、追われている人物を捕まえて賞金を稼ぐバウンティハンター。彼が監督した「アイアンマン」がマーベルに馴染みのない人にも入りやすかったように、新しいキャラクターの物語である今作は、「スター・ウォーズ」をあまり見てこなかった人にも無理がないと、ファヴローは言う。

「マンダロリアン」の構想を思いついたのは、長年の「スター・ウォーズ」ファンであるジョン・ファヴロー(左)。彼はエグゼクティブ・プロデューサーと脚本家を兼任する(Getty Images)
「マンダロリアン」の構想を思いついたのは、長年の「スター・ウォーズ」ファンであるジョン・ファヴロー(左)。彼はエグゼクティブ・プロデューサーと脚本家を兼任する(Getty Images)

 さらに、テーマパークがある。アナハイムのディズニーランドの「ギャラクシーズ・エッジ」は、当初の予定より早い5月31日にデビュー。ここでは、ビジターがただミレニアム・ファルコンに乗れるだけでなく、危険のふりかかる中を自分で操縦できたり、オーガのカンティーナでブルーのドリンクを飲めたりなど、実際に「スター・ウォーズ」の世界を体感できる。このパネルが行われた日にリリースされた専用アプリをダウンロードすれば、場内にある“スター・ウォーズ語”を翻訳できたり、ドロイドにもっと会えたりなど、より深い体験ができるそうだ。8月29日には、フロリダのディズニー・ワールドにもオープン。さらに今年後半には、アナハイムに「ライズ・オブ・ザ・レジスタンス」と呼ばれるエリアがデビューする。ウォルト・ディズニー・イマジニアリングのスコット・トローブリッジがパネルで語ったところによると、これは最高に複雑で凝ったアトラクションになるとのこと。村の外に隠れている反乱軍の仲間を探すビジターは、途中、数々の思わぬことに出くわしたり、おなじみのキャラクターに直面したりする。ストーリーを外から見つめるのでなく、自分がストーリーに参加できるのが、これらのアトラクションの魅力だ。

「マンダロリアン」の1シーン。スモールスクリーン用に「スター・ウォーズ」のライブアクションシリーズが製作されるのは初めて(2019  Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.)
「マンダロリアン」の1シーン。スモールスクリーン用に「スター・ウォーズ」のライブアクションシリーズが製作されるのは初めて(2019 Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.)

 ジョージ・ルーカスが、今では「新たなる希望」と呼ばれる最初の「スター・ウォーズ」を公開してから、42年。以後、彼が生み出した世界は、昔からの世代をつなぎとめつつ、新しい世代も呼び込んで、ファン層を拡大し続けていった。ルーカスはすでに一線を離れているが、その後は「スター・ウォーズ」に魅了されてフィルムメーカーになった人たちが引き継ぎ、次のストーリーを作ったり、ストーリーの合間を埋めたりして、伝説を語り続けている。セレブレーションイベントの熱気を見るかぎり、そうやって「スター・ウォーズ」が生き続けることを、ファンも願ってやまないようだ。そんな人たちにとって、これからの数ヶ月は、楽しみでいっぱいだろう。作り手も、その勢いは保ち続けたいに違いない。今年が終わっても、きっとまた新しい「スター・ウォーズ」のニュースが世間を沸かせるはずだ。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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