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2019年、ハリウッドで大注目はこの人たち

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
「アリータ:バトル・エンジェル」の主演女優に抜擢されたローサ・サラザール(写真:Shutterstock/アフロ)

 どこからともなくニューフェイスが現れたり、長い下積みのあげくにようやくチャンスを得たり。経歴はどうあれ、毎年、新しい誰かが注目を浴びるのが、ハリウッド。2019年も、大きなキャリアの転換期を迎えるスターが何人か出てくることは、間違いない。

 低予算のインディーズ映画やケーブルチャンネルの新作ドラマにも、その予備軍はたくさんいると思われるが、現段階で「今年の顔」になるかもと予想されるひとりは、「アリータ:バトル・エンジェル」に主演するローサ・サラザールだ。

 ギレルモ・デル・トロに勧められて日本の漫画「銃夢」を読み、映画化権を買ったのは、ジェームズ・キャメロン。しかし、「アバター」の続編を4本も作ることになったことから、キャメロンはプロデューサーにとどまり、監督はロバート・ロドリゲスに任せることにした。それでも彼が長年情熱を注ぎ続けてきた特別な作品であることに変わりはなく、オーディションには、人種も知名度もさまざまな女優たちが多数駆けつけている。そんな中で、見事、このヒロインの座を勝ち取ってみせたのが彼女なのだ。

 現在33歳の彼女は、ここまでにもキャリアを積んできているが、日本で劇場公開された出演作は「メイズ・ランナー/砂漠の迷宮」「メイズ・ランナー/最期の迷宮」くらい。だが、先月Netflixでストリームが始まった「バード・ボックス」は、同社の発表によると最初の1週間で4,500万人が見るというヒットになった。その熱が冷めないうちに、「アリータ〜」が2月に公開されるのである。パフォーマンスキャプチャーで顔が全然わからなかったのに、ゾーイ・サルダナは「アバター」で一気に大スターの仲間入りをすることになったし(もちろん、同年には『スター・トレック』もあったのだが)、CG処理が施された役ではあっても、これが彼女にとって運命の役となることは、確実だろう。

 そして5月には、タロン・エガートンがメディアを賑わせそうだ。「キングスマン」シリーズに出ているエガートンは、すでに結構知られているし、昨年末には超大作「Robin Hood」に主演もしている。しかし、残念ながら、この映画は興行成績、批評ともふるわず、彼を大スターに導くには至らなかった。それをやってくれそうなのが、次の主演作でエルトン・ジョンの伝記映画の「Rocketman」だ。

「ボヘミアン・ラプソディ」「アリー/スター誕生」と、音楽系映画が大成功した直後に公開される今作で、エガートンは、アニメ「SING/シング」でも少し披露した歌唱力を発揮するチャンスをたっぷり与えられる。プロデューサーにはジョン本人も名を連ねる上、監督は、ブライアン・シンガーがクビになった後、「ボヘミアン・ラプソディ」を仕上げてみせたデクスター・フレッチャーだ。どこから見ても、今年、最も気になる映画のひとつである。

 さらに、その後には、ナオミ・スコットがいる。2017年の「パワーレンジャー」は彼女の最初のハリウッド超大作だったが、同作品は狙い通りの数字が稼げず、続編の動きはないまま。そんな中で、彼女は5月末アメリカ公開のディズニーの実写版「アラジン」と、11月アメリカ公開の「チャーリーズ・エンジェル」のリブートで、重要な役をしっかりつかんでみせたのだ。

「チャーリーズ〜」で演じるのは、3人のエンジェルのひとりだが、今作では、別のエンジェルであるエラ・バリンスカも、ブレイクが予測される。22歳のバリンスカは、業界でもほぼ無名のニューフェイスで、まさに大抜擢だ。突然にして脚光をあびるのは、嬉しい出来事であると同時に、悪い影響を及ぼすことにもなりかねないが、そこは3人目のエンジェルを演じるクリステン・スチュワートがやさしく指導してくれるのではないかと思われる。スチュワートは、2008年の「トワイライト〜初恋〜」で、たちまちトップスターとして祭り上げられるという経験をした。それに惑わされることなく、彼女は、その後の11年に、幅広いタイプの作品に出ては、役者としてしっかりと成長を続けてきたのである。

「時の人」になるのは、はじめの一歩。そこからはまた別の話だし、むしろ、そこからが長い。それでも、そのはじめの一歩を踏み出せる機会をもらえたのは、何事にも代えがたく、キャリアにおける貴重な瞬間である。今年、この人たちの一歩が成功するよう、応援したい。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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