ついにスピルバーグまで。中国のアリババがアンブリン・パートナーズの一部を買収

業務提携を発表したスピルバーグ(左)とアリババのジャック・マー(写真:ロイター/アフロ)

 現代に生きる最高のハリウッド監督も、中国の誘惑には勝てなかった。スティーブン・スピルバーグが、自らのプロダクションカンパニーであるアンブリン・パートナーズの一部を、中国のアリババに売却したのである。

 一部といってもどれくらいなのか、また買収金額はいくらなのかなどは、公表されていない。アンブリンとアリババは、これを「戦略上のパートナーシップ」と呼び、今後、二社は、共同で、中国と世界の観客のために映画を製作し、出資していくとコメントしている。アリババは、中国市場でのマーケティングや、映画の関連商品の販売なども請け負う。

 スピルバーグは、アンブリン・エンタテインメントの名前の元で、80年代から数多くの名作を送り出してきたが、アンブリン・パートナーズは、昨年12月、元eBayのプレジデントであるジェフ・スコールのパーティシパント・メディア、インドに親会社をもつリライアンス・メディア、カナダのエンタテインメント・ワンの共同出資で新しく生まれたものだ。配給契約は、ユニバーサルと結んでいる。この新しい合意のもとの第一号である「ガール・オン・ザ・トレイン」は、先週末、北米公開された。

 一方、ジャック・マーが創業した中国の超大手オンライン会社アリババは、近年、ハリウッド進出に大いなる興味を示してきている。最近、アリババは、パラマウント・ピクチャーズの「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」「ミュータント・ニンジャ・タートルズ:影<シャドウズ>」「スター・トレック BEYOND」などに投資した。パラマウントの親会社ヴァイアコムの当時のCEOフィリップ・ドーマンが、パラマウントの所有権の一部を売却する計画を立てた時、初期には、アリババが買い手の有力候補と報道されたりもしている。

 しかし、話がさらに展開していった時、パラマウントの49%を買おうとしたのは、別の中国企業である大連万達(ワンダ)グループだった。この売却話は、もともと、ヴァイアコムの創設者であるソムナー・レッドストーンが大反対で、醜いお家騒動の結果、ドーマンがヴァイアコムを追い出されることになり、たち消えている。だが、その争いの間にも、ワンダは別のスタジオのチャンスも狙っていたようで、先月末には、ワンダとソニー・ピクチャーズが業務提携で合意したことが発表された。金を出す代わりに口も出すこの合意のもと、ワンダは、「映画に中国の要素を強く出していくことを狙う」との声明を出している。

 ワンダは今年初め、レジェンダリー・ピクチャーズを買収している。レジェンダリーもユニバーサルと配給契約を結んでおり、結果的に、ユニバーサルは、中国が関わるふたつのプロダクション会社の作品を抱えることになった。今年、ユニバーサルの親会社コムキャストは、ジェフリー・カッツェンバーグのドリームワークス・アニメーションを買収しているが、ドリームワークス・アニメーションは、中国にオリエンタル・ドリームワークスを設立し、「カンフー・パンダ3」を共同製作にするなど、ここでも中国とのつながりが強い。

 ワンダの創業者である王健林は、ハリウッド進出への野望を聞かれて、「外人が作ったルールを自分たちが変える」と語ったとされる。ライバルのアリババがスピルバーグと大きなディールを結んだことで、今ごろ、さらに競争心に火がついているかもしれない。中国がハリウッドに進出することについては、すでに政治家の何人かが懸念を示しており、警告の手紙を政府の関係機関に送っている(http://bylines.news.yahoo.co.jp/saruwatariyuki/20160928-00062652/)。「Washington Post」紙も、かつて日本のソニーや松下がハリウッドのスタジオを買収したことを引き合いに出しつつ、「日本は民主主義でアメリカの仲間。表現の自由を重視する。だが中国は独裁主義者である習近平の思うままに仕切られている。彼は、センサーシップを行うことを公言してはばからず、『外国が中国に尽くすようになってこそ、中国の文化はさらに発展する』と堂々と語っているのだ」と書いた。

 ハリウッドでは、中国の進出に対する不安が明らかに高まっている。だが、その裏で、出遅れてはいけない、うちもやるべきではないかという焦りを感じているエクゼクティブも、少なくないはずだ。スピルバーグという超大物がそっちに傾いたことは、果たしてどんな影響を及ぼすのだろうか。状況は、刻一刻と変わっている。