Yahoo!ニュース

レネ・ゼルウェガー、整形疑惑に反撃

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

レネ・ゼルウェガーが、沈黙を破った。

2年前、見違える姿で久々に公の前に現れ、メディアを騒がせた彼女は、最近、最新作「ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期」の予告編が流れ始めたことで、再び意地悪なコメントに直面することになった。

Variety.comの映画批評家オーウェン・グリーバーマンは、「レネ・ゼルウェガー:彼女が彼女自身に見えなくなってしまったのは、別の女優になったということなのか」と題するコラムを執筆。記事の中で、グリーバーマンは、映画を見に行って、女優の鼻が前より少しほっそりしていたり、唇がふっくらしたりしていて、「手術したのかな」と思うことは、よくあることだとしながらも、「『ブリジット・ジョーンズ』の予告編のレネ・ゼルウェガーにはびっくりさせられた」と告白。整形疑惑が2014年からあったのは知っていたが、「彼女はブリジット・ジョーンズに見えないと思った」と述べ、最後は、美容整形が演技に与える悪影響で締めくくっている。

このコラムが出た直後、女優ローズ・マッゴーワンは、ライバルのHollywood Reporterに、グリーバーマンに対する強烈な批判記事を書き、これまたさまざまな論議を呼んだが、ゼルウェガー本人は何も発言しないできた。しかし、米西海岸時間5日(金)、突然にして、huffingtonpost.comに、「We Can Do Better(私たちは、状況をもっと良くすることができるはず)」と題するエッセイを発表したのだ。

エッセイは、「私はラッキーです。クリエイティブな人生を選び、満足のいく、時に意義深い仕事をする機会が得られてこられたんですから。それは恵まれたことで、公の目にさらされることに付随してくるものに耐える価値があるものです」という文章で始まっている。グリーバーマンを名指しはしないものの、彼の書いたような記事に象徴されるゆがんだ価値観を指摘し、それが若い人たちにどんな影響を与えるのかを警告もする。記事の全文はここ(http://www.huffingtonpost.com/renee-zellweger/we-can-do-better_b_11355000.html)で読めるが、以下に、抜粋を紹介する。

2014年10月、タブロイドは、私が目の整形手術をしたようだと報道しました。それはかまいません。挑発的な見出しで匿名のインターネットの説教者を煽ろうとする、タブロイドが毎日大量にやることのひとつにすぎないのですから。

(中略)

インターネットが下品なやり方で好奇心を煽ろうとし、「そうかもしれない」ことが一瞬たりとも事実になる時、残酷な作り話に対して発言するより、黙っているということで威厳を保とうとすると、からかわれるだけでなく、そのスキャンダルで儲ける人たちによって、人生をハイジャックされてしまいます。

今日、私がこれを書いているのは、公の場でいじめられたせいでも、16年前に演じたフィクションのキャラクターの理想的な外見に今の私が見合っていないと思う批評家が、私の仕事ぶりに疑問を投じたせいでもありません。(中略)自分の体については他人の意見を気にせずに、自分で決定を下すことができるべきだと思うから、これを書いているわけでもありません。

これを書いているのは、自分のことを正しく語りたいからです。自分の人生の真実を語らなければと思ったからです。タブロイドが言い出した疑惑が事実へと変化していく様子を見ることに、私は、大きな不安を感じたのです。私が目の整形をしたかどうかというニュース自体は、たいしたことではありません。でも、それに伴う、自己容認や、女性が年を取るにつれて受ける外見的な面で受けるプレッシャーについてのニュースに、私が使われることになってしまいました。タブロイドの疑惑が、主流なニュースが大事だと思う題材になってしまったということです。余計なお世話ではありますが、私は顔を変えようとも、目の手術をしようとも、決めていません。

(中略)

昔から女性が外見で価値を決められてきたことは、誰もが知るところです。女性は社会の成功に重要であり、影響をもつ地位に女性がいることは普通と認めるところまで社会は進化してきました。でも、裏に根強くある価値観が、ネガティブな会話を生み、まるで娯楽のように、日々、私たちの意識の中に入ってくるのです。

痩せすぎ。デブ。年を取ってきたね。黒髪のほうがよかったのに。腿にセルライトがあるよね。フェイスリフトしたのか。禿げてきたね。太ったのか、妊娠したのか。靴がダサい。足が醜い。笑顔がかわいくない。

(中略)それが若い人や、影響を受けやすい人に、どんなメッセージを送り、調和、偏見、平等、自己容認、いじめ、健康といったことに、どんな連鎖反応を与えていると思いますか。オンラインのニュースや、他人を侮辱する意地悪で嘘の記事は、無害なものではないのです。(以下略)

女優として、公の目に常にさらされ、外見についてコメントされることについては、先月、ジェニファー・アニストンも、本音を語るエッセイを、同じくhuffingtonpost.comに寄稿している(全文はここで:http://www.huffingtonpost.com/entry/for-the-record_us_57855586e4b03fc3ee4e626f?0830ynt7rezmpldi)。

ブラッド・ピットと結婚した時、アニストンは、テレビのコメディ番組「Friends」で、“Girl Next Door(隣にいそうな女の子)”“America’s Sweetheart(アメリカのアイドル)”の肩書きを得ていた存在で、ふたりの結婚は国民的イベントとなった。ピットは早くから子供がたくさん欲しいと言っており、アニストンも当時は「ふたりでいいわよ」などと語っていて、アメリカ国民は、この美しいふたりの子供を早く見たいとわくわくしていたが、アニストンは「Friends」が終了するまで妊娠はしないと決め、いざ終わってからも映画を立て続けに入れて、結局子供は生まないまま、離婚となっている。

ピットがアンジェリーナ・ジョリーと6人の子供を育てていることもあるのか、マスコミはその後も、アニストンが果たして子供をもつのかどうかについての好奇心を捨てていない。昨年、ジャスティン・セローと再婚した後も、もう47歳であるにも関わらず、腹部に焦点を当てた写真の横に「ついに妊娠か」という記事を、タブロイドは何度となく掲載してきている。

huffingtonpost.comでのエッセイで、アニストンは「いいえ、私は妊娠していません。でも、もううんざりです」と宣言。そのように、日々、外見チェックをされる女優の現状について、ゼルウェガーと共通する不満と警告を訴えた上で、「メディアはそう言いたいのかもしれないけれども、私は、子供がいないというせいで、自分が完全ではないとは感じていません。私の体が(年齢のせいで)変わってきたからといって、自分が前より劣っているとも思いません。ひどい角度からパパラッチに写真を撮られて、『妊娠している』のか『太った』のかと言われても。そのせいで、知り合いから『おめでとう』と言われるのがどんなに奇妙なことかは、言うまでもないでしょう」と書いている。

彼女らのコメントは、まったくもって本当で、同感できる。その一方、ハリウッドでは、そういったプレッシャーをあまり受けない、これまでの常識を破る女優たちが台頭してきているのも、少しうれしい事実だ。代表は、メリッサ・マッカーシーとレベル・ウィルソン。今月日本でも公開される「ゴーストバスターズ」に出演するマッカーシーは、45歳の、相当太めのコメディアンだが、今や確実に興行成績を稼げる主演女優で、「Time」の“最も影響力をもつ100人”にも選ばれている。ウィルソンは、マッカーシーと「ブライズメイズ/史上最悪のウェディングプラン」で共演したが、大ブレイクのきっかけを与えたのは「ピッチ・パーフェクト」。この映画で、脇役の“ファット・エイミー(おデブなエイミー)”を演じた彼女は、一番の笑いを集めることになり、続編では、ほっそりした主役のアナ・ケンドリックよりも見せ場をもらうことになった。あるインタビューで、ウィルソンは「もっと太ったらさらにキャリアがアップした」とも語っているほどだ。彼女主演でリメイクされる「プライベート・ベンジャミン」や「ペテン師とサギ師/だまされてリビエラ」のリメイク企画も進んでいる。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

猿渡由紀の最近の記事