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“イギリスで最も孤独な犬”が「トランスフォーマー」に出演。里親も見つかる

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
マイケル・ベイは英の保護犬に「トランスフォーマー」新作の役をオファー(写真:REX FEATURES/アフロ)

映画の中でなんでもかんでもぶち壊してみせるマイケル・ベイが、一匹の保護犬の人生を変えた。

ラッキーなそのメス犬は、リバプール近郊のアニマルシェルターで人生のほとんどを過ごしてきたスタッフォード・ブルテリア。フレヤという名前で、現在6歳だ。生後6週間でこのシェルターに連れて来られ、飼い主を名乗る人は現れなかった。その後6年のうちに、1万8,000人がこのシェルターを訪れたが、誰も里親になってくれないまま。その間、50匹以上の犬が、ここから新しい家にもらわれていった。

フレヤはまた、最近になって、てんかん持ちであると診断されている。てんかん持ちの犬は、薬を飲んで、3ヶ月に一度の血液検査を受けなければならず、引き取ってもらえる可能性がさらに減るのではないかと、シェルターのスタッフは不安を感じていた。

この話を紹介したのは、「Daily Mail」。「イギリスで最も孤独な犬」と題されたその記事を読んで、多くの人が胸を痛めたが、マイケル・ベイもそのひとりだった。先月初め、ベイは、「先週、イギリスのこんなニュースを見た。この‘最も孤独な犬’に、『トランスフォーマー』の役をあげることにした。この子はてんかん持ちで、一生をシェルターで過ごしてきている。僕らはこの子を有名にするよ」とインスタグラムに書いた。ベイは、現在、シリーズ5作目にあたる「Transformers: The Last Knight」の撮影に入っており、8月にはロケ場所がイギリスに移る予定なのだ。ベイはまた「僕らはこの子に家を見つけてもあげたい。もし見つからなかったら、僕が引き取る。フレヤ、キャストにようこそ」とも書いている。

これを受けて、シェルターには問い合わせが殺到。シェルターの広報担当者は、「Daily Mirror」に対して、「イギリス内はもちろん、世界からもすばらしい反響が寄せられています。フレヤが映画に出られることになったこと、そして大物映画監督が支援してくださることを、とてもうれしく感じています。彼は熱心な動物愛護活動家でもあるのです」と語っている。ベイは、ボーンクラッシャーとグレイスという名の(名前の由来はそれぞれ『トランスフォーマー』と『アルマゲドン』)2匹の犬を飼っており、子供の頃からアニマルシェルターにお小遣いを寄付したりしてきているらしい。

その後まもなく、フレヤには理想的な家が見つかった。BBCニュースが報じるところによると、フレヤの新しいパパとママは、チードル・ハルムに住むレイ&ジャッキー・コリンズ夫妻。

credit: Freshfields Animal Rescue
credit: Freshfields Animal Rescue

この2週間、夫妻はシェルターと話し合いを続けてきており、今週にも書類に署名するらしい。コリンズ夫妻は、すでに2匹の保護犬を飼っており、フレヤには遊び相手もいる。シェルターのマネージャーは、BBCに対し、「レイとジャッキーがフレヤにとって特別な人たちであることは、会ってすぐにわかりました。フレヤはついに安定した家を見つけ、人生を満喫できるのです。そのことに大きな喜びを感じます」と語っている。

フレヤが素敵な家を見つけたことに、ベイは大喜びしているそうだ。しかし、映画に出すという約束は守るとも語っている。どれほどのシーンに登場するのかはわからないが、フレヤ見たさに、普段なら「トランスフォーマー」に興味がない人たちも映画館に足を運ぶかもしれない。

「Transformer: The Last Knight」には、4作目「トランスフォーマー/ロストエイジ」(2014) で初めてシリーズに参加したマーク・ウォルバーグが再び主演する。4作目には登場しなかったタイリース・ギブソンとジョシュ・デュアメルも戻ってくるようだが、ストーリーはいっさい明らかにされていない。北米公開は来年6月23日。

「トランスフォーマー」シリーズは、4作合わせて全世界で37億7,586万ドルを売り上げた。6作目、7作目の製作も決定しており、それぞれ2018年、2019年の6月に北米公開される。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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